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第九話


発売日当日。

その日は朝から多くの人がこの街に来ていた。今も増え続けるいっぽうである。

そして私は、戦闘系以外では初めての依頼を受けていた。


冒険者達(リア以外NPC)が総出でかかっている緊急クエスト【案内代理人】。


突然押し寄せてきた金の卵(プレイヤー)たち__期待の新人だからそういう呼び方なのかな__をルーラ一人で回しきれないからという事で依頼されたものだった。

冒険者の適性試験については、ギルド職員一人に対し大勢を見ることで回しているらしい。

運営の準備が不完全なようにも思えるけど、これはこれで楽しいよね。アリだと思います。


「ようこそ。始まりの町へ。私は案内代理人のリア、わからわからないことがあったら私達に話しかけてね。

初めての人のためのチュートリアルを受けたいなら、自分のなりたい職業ギルドの受付まで行けばギルド登録をして、チュートリアルを申し込めるよ。どこに行きたい?」


既に何人か送っているから慣れたものである。

一人案内するごとにBPが1ポイント。スライムを倒したポイントと同じで、ポイント稼ぎとしては効率は悪いけど、依頼達成後に信頼度として500ポイント、報酬で20,000M入るらしいからおいしい話だ。やったね!


ちなみに現在の私の格好は、全体的に黒の浴衣ドレスでえりは鮮やかな紫色、帯の代わりにうっすらとしたピンク色の羽衣を二周巻いて後ろでクロスさせ肩にかけて一度前へ持ってきてそれを腕の下から後ろに流している。

これは私が特注で作ってもらったものやクエストで手に入れた物で、[毒の無効][風属性の加護][魔力効率化][飛翔]などの効果が付与されている。ステータス補正は魔力が1.5倍、力が1.05倍とかなりいいけど、その代わり耐久は0.5倍。元々耐久が低いから私にとってはかなり痛手だけど、それ以上に受ける恩恵は大きいからね。装備するしかないよね。


リアが話しかけたヒューマンの三人組の内二人はきょろきょろしていて、残りの一人が答える。


「冒険者登録をしたいのでそこのギルドまでお願いします。」

「はい。ご案内しますね。」


そう言って三人の前を先行する。私的になかなか様になってると思う。

受け答えをした一人は慣れているのかな、興奮する二人を落ち着かせながら私に話しかけてきた。


「案内代理人とおっしゃっていましたが、普段は違うんですか?」


ただ無言というのも退屈だし、マニュアル通りではあるけどしっかりと受け答えする。

ルールだからね。別にNPC以外と会話したいとか思ってないんだから!


「今日は来訪者が多いから、緊急クエストを受けたの。普段はちゃんと冒険者をしているよ。冒険者はモンスターの盗伐だけじゃなくて、護衛や雑用をやったりもするの。」


営業スマイルも忘れない。


「そうなんですね。じゃあリアさんはどれくらいお強いのですか?そりゃあ、僕たちより強いのは分かるんですが…」


うーん、どうだろう。

今まで自分以外のプレイヤーの戦いを見ていないから、正直強さの基準がわからないんだよね。

ガルスさん以外のNPCは生活費を稼ぐだけで終わりだから、向上心もないしね。

仕方ない。当たり障りのない言い方で答えればいいかな。


「普通くらいだとは思うけど、一応このギルドで今はトップだよ。」

「今は、というと?」

「それはそうだよ。これからの事なんて全く分からないからね。」

「そうですね。追い越せるように頑張ります。」


「はい。」と返事をしたとき、丁度冒険者ギルドに到着した。


「こちらが冒険者ギルドになります。入ってすぐに受付があるからそこで登録してね。今すっごい混んでるからわかりやすいと思うよ。」


そう言ってそのグループと別れ、来た道を戻ろうとしたのだけど、その時、


「リアさ~ん。」


と、ミラさんが泣きそうになりながら駆け寄ってきた。

どうしたんだろうね。要件を尋ねるか。


「実はチュートリアルの指導をする人が足りなくて、事情を説明したら何名か辞退してくださったんですがそれでも足りなくて…」


ミラさんは言い方に困ったように無言になり眉を下げる。

なるほどね。お手伝いで入ってほしいのかもしれない。


「わかりました。私にできることであればなんでもしますよ。」


私が承諾すると、途端にぱぁあっと笑顔になる。可愛いね。


「ありがとうございます。こちらに、チュートリアルを受けたいという二名をお連れしたすので少々お待ちください。」


そう言って上機嫌で戻っていったミラさんは、少ししてから二人を連れて戻ってきた。

後ろにいるのは竜人族とエルフ。前を歩くミラさんは少々ビビっているみたい。

亜人は元々のステータスがヒューマンより高いし、怖いんだろうね。


「こちらの二人です。それでは、あとはお願いします!」


帰り際に、「私はまだ忙しいのでぇぇ」と叫びながら、ミラさんはギルドの中へと入っていった。


読んでくださりありがとうございます。

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