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閑話 シルヴィの思い(ヒロイン視点)

注意:この閑話はヒロインであるシルヴィ視点です。


 そのことを留意の上、先に進んでください。


 ネタバレを含まないように試行錯誤していると、普段の話よりも短くなってしまいました。


 閑話でありますので、飛ばして読んでいただいても大丈夫です。






「あー、もう! なんで、私、あんなことを……!」


 草木も眠る丑三つ時――かどうかは分かりませんが、月すら見えない夜の闇の中で。

 私、シルヴィはベッドの中で一人、盛大に悶えていたのでした。


 思い返すのは先ほどの出来事。


 『だったら、一緒に入りましょう』


 思い出すだけで自身の正気を疑ってしまうような言葉を、あろうことは私は、ルネスさんと手を繋いで帰ったという状況に浮かれて、いっそのこと清々しいほど堂々と言い放ったのでした。


――そう、私は浮かれていたんです。

 

 命を救っておいて、それがなんてことでもないかのように、見返りすら要求しなかったルネスさんが、私の手を取ったんですから。

 その時の喜びと言えば、思い出すだけで顔がにやけてしまうほどのものでした。


 髪の色を隠すためにフードをかぶっていたつもりでしたが、表情を隠すことにも一役買ってくれたようです。


 ただ、その後がいけませんでした。

 

 少しでもルネスさんが私を頼ってくれた。

 その事実だけで満足しておけば良かったのに、あろうことか私は、『身体が冷えているから先にお風呂に入りなさい』といってくださったルネスさんに対して、〝今日はそういう扱いをしないで欲しい〟と思ってしまったのです。


 確かに、まだ私とルネスさんは出会って数日程度の間柄です。

 しかし私の命は、間違いなく彼によって助けられました。

 本来ならばこちらが自分の持てる最大限を使って恩を返さなくてはならないはずです。

 

 それだというのに、ルネスさんは一番最初から『気にしなくて良い』の一点張りでした。

 

 だからこそ、頼ってくれたその日だけでも、私を助け、そして感謝されていることを知って欲しいと思ったのです。


 思って、思って、考えすぎて。


 頭がパンクしそうになりながら放った言葉が、『例のあれ』なのでした。



   ◇◆◇


「うぅぅ…… もしかして、変態だと思われたんじゃ……?」


 頭から布団をかぶってみても、ぐちゃぐちゃの頭では到底、寝付くことはできそうにありませんでした。


 それどころか、思考はどんどんと危険な方向へと駆けだしていってしまいました。


 自分の行動を客観的に分析する。

 それは冷静になるためにおいて、一つの重要な行動です。


 第三者の視点になって、夕方の私の行動を解析すると……


 1,傘を届けに行く

 2,手を繋いで帰る(注:恋人同士ではない)

 3,『一緒にお風呂に入ろう』と言う(注:恋人同士ではない)


――完全にアウトです。

 2はまだ許されるかもしれませんが、特に3なんて、もはや痴女じゃないですか。

 

 明日から、どんな顔してルネスさんと接したら良いんでしょう……?


 まぁ、ただ唯一幸いだったことと言えば……


「ルネスさんが冷静でいてくれて助かりました」


 どの口がそれを言うんだ、と言われてしまいそうですが、正直なところ、これが私の本心でした。

 あそこでもし、なあなあのまま二人一緒に入っていたら、私は今日一日どころか、この先一週間は不眠症に陥ってしまうでしょう。

 お風呂に水着というセンスはどうかとも思いますが、しかし、冷静になってみるとあの場で最善の策だったようにも思います。


「とはいえ全く反応してないのは…… って、何を言ってるんですか!?」


 駄目です、寝不足で頭がだんだんと不味い方向へと転がり込んでいるようでした。


「よし寝ます! 今すぐ寝ます! ほら寝ます!」


 三回ほど小さく叫んで、布団の中に顔を埋め、瞳を閉じました。


 頭の中に浮かんでは消えるあの台詞と、ルネスさんの顔を極力無視していると……


  ◇◆◇


「――眩しい…… え?」


 ひらひらと瞼の上をちらつく光に薄目を開けると、そこには青空の中、優雅に靡く白いカーテンがありました。


 いつの間にか、朝になっていたようです。

私は寝不足になると、思考が彼方へ吹っ飛んでいきます。


会話すると結構面白いらしいですが、残念ながら本人は全く覚えがありません。

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