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魔王様は強くてニューゲームを選択しました  作者: くにすらのに
二回目の中学生
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第8話 魔王様は学校一の美少女にも動じません

「おはよう。さ、学校行こう」

 

木下(きのした)の家に行った翌日、まるで幼馴染か彼女のように菱代(ひしよ)さんが自宅まで迎えにきてくれた。手に首輪とリードを持っていなければ最高のシチュエーションだ。


「おはよう。もしかして登校中も見張るの?」


 学校内での監視は言い付けられているけど、それ以外の時間に関しては完全に菱代さんの趣味だ。そういう意味では僕の抑止力になってるのかもしれないけど、別に非行に走ったり世界制服したりする気はないから無意味な監視だと思う。


「ふふふ。下校と違って登校はみんな同じ時間だから、誰にも気付かれずに空中散歩はできないしょ? 隣で並んで歩いてみたいなって思ったの」

「わかったから、まずはその首輪とリードをしまお? 生徒はともかく、近隣の方々に見られるのはマズいよ」

「そう? 今まで私を優等生と思っていた大人達がドン引きする顔がたまらないのに……じゅるり」


 うーん。性癖がどんどんエスカレートしてる。なんかこう、うまいさじ加減で菱代さんの欲求を発散できるといいんだけど。

 どんなにすごい力や知識を持っていても、友達が変態犬(へんたいけん)になっていくのを止めることはできない。中学生って思っている以上に無力な存在なんだな。


「仕方ない。残念だけど普通に登校する」

「僕は菱代さんが思い直してくれてすごく嬉しいよ」


 他愛のない会話をしながら女の子と登校するのはなんだかこそばゆいけど、強くてニューゲームを始められて良かったと思えた。


***


「ねえねえ、(かたわ)ちゃんと(おう)くんって付き合ってるの?」

 

 朝のホームルームと一時限目の間に話し掛けてきたのは田口(たぐち) 千夜(ちよ)さん。

 祖父がイギリス人、祖母がアメリカ人だかで、中学二年生とは思えないスラッと伸びた長身に、美しく伸びる金髪が特徴的だ。そして何より、おっぱいが大きい。

 下世話(げせわ)だけど、その、田口さんを想像して(いた)したこともある。たぶん男子がみんな通る道だと思うし、こればっかりはルート変更できないかもしれない。


「いやいや! 付き合ってないから! なんかよくわからないけど、学校から菱代さんに僕を監視するように言われたんだって」

「ふーん。監視って言うわりには仲良さそうに歩いてなかった?」


 制服のボタンを開けた状態で僕の顔を覗き込まれると、その大きな膨らみは自然と重力の影響を受ける。ほとんどの男子はこのおっぱいに心を奪われ、思考が停止して洗いざらい全てを話してしまうだろう。

 だが、一度魔王を経験した僕は違う!


「田口さん、いくら暑いからってそんなにボタンを開けるのは校則違反だと思うよ?」

「教室を壊した桜くんには言われたくないなー」


 僕の反撃にも動じず淡々と会話を続けてくる田口さん。さすが、男子に対しては無敵の強さを誇る。


「なんかさー。桜くんって雰囲気変わったよね。前はもっとオドオドしてたっていうか」

「そうかな? 別に変らないと思うけど」


 いや、実は変わってると思う。だって、魔王になった僕は田口さんを催眠魔法で操ってあんな事やこんな事をしたんだもの。おっぱいの柔らかさ、アソコの暖かさ、女体の神秘を余すところなく堪能した。

 だから今更、谷間を強調されたくらいで動じ……はしてるんだけど、前に比べて気持ちに余裕を持って話ができる。


「ふーん。でも、わたしには分かっちゃうんだなー」


 ニヤニヤと笑みを浮かべながら顔をさらに近付ける。なんの花か区別できないけど、普段の生活で馴染みのない良い香りがフワッと漂ったかと思うと、田口さんはそっと耳打ちした。


「桜くん、童貞卒業したでしょ?」

「ん゛な゛っ!? ああああああ!!!」


 自分でも出したことのないような声を上げたと同時に仰け反ると、イスごと体が後ろに倒れてしまった。


「あれ? そんなに動揺するってことはホントに? うふふふ」

「いや、そういうことじゃなくて、ビックリしただけで」

「ふふん♪ 今度詳しく話を聞かせてね」


 田口さんは上機嫌で自分の席へと戻っていった。だって、その童貞を卒業させてもらった相手にあんなことを言われたらドキッと……あれ?

 魔王の体で経験はしたけど、この中学生の体では未体験だ。僕は非童貞なのか、中学生らしく童貞のままなのか、一体どっちなんだ!?

 結局、二度目の人生でも田口さんに心をかき乱されることになりそうだ。


「ねえ、烏丸(からすま)くん。田口さんと何をお話ししてたの?」

 

僕のトイレは監視するくせに、自分のトイレは一人で行く菱代さんが戻ってきた。


「たいしたことは話してないよ」

「ふーん? 田口さんと密着して興奮してたんじゃないの?」

「ちょっと距離は近かったけど別に密着は……」

「結局男子はああいう子が好きなんでしょ?」


 それは否定できない。木下みたいなやつもいるけど、実際田口さんに言い寄られたら趣味が変わるかもしれない。


「田口さん、どんな男子にもああやって体を見せるから烏丸くんも気を付けた方がいいよ」

「……うん。ありがと」


 男子からは人気があるけど女子からは嫌われる。田口さんはそんなタイプだ。

 でも、そうなってしまった原因を僕は知っている。それは僕自身も無関係とは言えない話だ。

 本当の田口さんを知ってもらえたら、女子とも仲良くなれると思うんだけど……。

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