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魔王様は強くてニューゲームを選択しました  作者: くにすらのに
魔界で強くてニューゲーム
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第31話 魔界のお姫様?

 鳥や犬になるのはファンタジー感があったけど、男の娘(おとこのこ)化は意外な展開過ぎて受け入れるのに時間が掛かってしまった。


「ナルはナルだよ。うん。パッと見は今までと変わらないし」

「そうだよ。私も言われるまで全然気が付かなかった」

「つもり、ボクは元から男子みたいな体型だったってことだろ?」

「そんなことない! だって……」


 言いかけて僕は冷静になった。着やせするナルの胸が実は結構大きいことを僕が知っているのはおかしい。カタワに追及されるところだった。


「だって。なんだい?」


 口元をニヤリとさせて言葉の続きを(うなが)す。少しだけいつもの調子が戻ってきたみたいだ。


「いや、ほら、そう! 髪とか綺麗だし、女の子っぽいなーって」

「ふふ。ありがとう」


 口から出まかせという訳ではなく、ナルの髪は僕と全然違う。すごくサラサラでつやつやしてて、甘い香りが漂ってくる。肌だって白くて綺麗だし、同じ人間でも男と女でこんなに違うものかと驚いたのを覚えている。


「ナルって女だと思うと男っぽく見えるけど、男だと思うと女っぽく見えるから不思議だよな」


 シュウが突然こんなことを言い出した。


「女子にしては少年のようだし、男子にしては可愛い。そんなところかな? ボクに恋しても今は同姓だよ?」

「バ、バカ野郎! 友達に恋なんてするわけねーだろ。それに俺は犬になってくれる子がいいの。お前みたいな強いやつはタイプじゃねえ」

男の娘(おとこのこ)になってフラれるとは思っていなかったよ。貴重な経験ができた。ありがとう」

「あはは。すっかり男の娘が板に付いてきたね」

「……内心では辛いんだ。早く元に戻りたい。股間が気になる」


 僕は生まれてからずっと一緒に過ごしているけど、ナルにとっては突然現れた存在。違和感が半端ないんだろうな。


「そういえばナルの匂いを追ってる時に変な反応をしてたのってもしかして」

「……うーん。たぶんナルちゃんの」


 カタワはじっとナルの股間を見つめる。


「何もしてないぞ! いくら誰も見てないからと言ってこんな屋外で」

「大丈夫。謎が解けたし無事にナルと合流できたから問題ないよ」

「その気遣いが逆に辛い」


***


 ここは大魔王に支配されている魔界だ。そんな魔界で命が無事で強くてニューゲームを始められているだけでも運がいいと思う。そう切り替えて僕らは気合を入れ直した。


「次はチヨを探そう。五人揃って大魔王を倒さないと意味がない気がする」

「そうだね。だけどごめん。全然匂いがしないの」

「きっとまだ離れてるんだよ。まあチヨなら魔物でもオスなら魅了できそうだし大丈夫な気がする」


 彼女から溢れるエロさは男子中学生どころか魔物すら魅了した。それは一度目の魔王人生でわかっている。反対にメスの魔物からは反感を買っていたけど、その問題も解決された。もしかしたら五人の中で一番魔界での生活に向いているのかもしれない。


「くんくん。あれ? なんか獣っぽい臭いがたくさん。本当に数がわからない。いろんな臭いの混ざった集団がこっちに向かってくる!」

「まさか魔物!?」

「武器はない……が、身体能力は勇者のそれだよ。魔法だって」


 ナルの全身に(いかづち)が走る。もはや体全体が武器と言ってもいい。きっとこの電流のおかげで素早く動けるんだ。


「俺だって負けねー。力を出そうと思えばいくらでも湧いてきそうだ」


 負けじとシュウも筋肉に意識を集中させる。ただ体に力を込めただけにも関わらず空気が振動し、地面に亀裂が走る。


「はは。やっぱり二人ともすごいや」


 僕も魔王の力を持っているけど、それと同じ、あるいは相反する力を持つ友達は非常に心強い。不意に襲撃をくらったら全滅していたかもしれないけど、カタワがいち早く察知してくれたおかげで返り討ちにする準備を整えられた。


「カタワありがとう。おかげで敵の襲撃に備えられたよ」

「えへへ。やっぱり犬って必要でしょ? これを機にぜひご主人様に」

「さあ、みんな。気を引き締めていくよ」


 今は犬がどうとかの話をしてる場合じゃない。ここで倒されることがエンディングに設定されてないのなら敗北は死ということになる。絶対に負けられない。


「うわっ! すごい数」


 距離はまだ数キロ離れているけど目を凝らせばその姿を捉えることができた。

大きな体にイノシシの顔、膨らんだ胸はどこで手に入れたのか布で支えてある。きっとメスの魔物なのだろう。同じような顔をしているが一体ずつ微妙に個性がある。

巨大なこん棒を持つ者もいれば、他のモンスターの首を持つ者もいる。どうやら戦いのあとのようだ。


「なあ、あの神輿みたいなやつに乗ってるのって」


 僕と同じく魔王の視力を持つシュウが何かに気が付いた。大群の奥をよーく見るとそこには


「チヨ!?」


 豪華なイスに座り、それを神輿(みこし)のように担がれている。まるでこの軍団のボスだ。登場する順番が変わったことが影響しているのか、はたまたその逆か、チヨは魔界で思いも寄らぬ強くてニューゲームを開始しているようだ。


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