モフモフの道は程遠い
前回のあらすじ
土でできた狼に出会う。
シオン「手からなんか出たァァァ…ペロ…美味しくないぃぃぃ」
はっじまっるよー!
スヤスヤ
はっ!私いつの間に寝てしまってた!?
げっもう夕方じゃん!帰らなきゃ怒られる!
ガウ
「乗せてくれるの!?」
そう言うと狼は頷いた。
やった!動物に乗れるんだ!めっちゃ嬉しい!!へっへっへっ。いいだろう(ドヤ
よいしょっと!乗ったよ!
ダッダッダッ
乗った瞬間、突然走り出す土狼くん
てか速すぎる!落とされそう!土狼ってこんなに早いのか!坂を自転車で駆け下りてる感じ!まぁ私の場合自転車じゃなくて、車椅子なんだけどね!あの時は本当に怖かったわ~って思い出に浸ってる場合じゃ…
「ぐへっ!」
はい。振り落とされました。顔面ぶつけました。いてて…
ん?てかもう森の外だ!おぉあそこにはマイホームが!
あれ?土狼が出でこない…ほれほれ怖くなんかないぞ?んー?
出てこない…いや…出てこれないの方が正しいかな?
えぇー!ここでお別れですか…!?どうしよう寂しい…はっ!そうだ!
この緑の玉を葉っぱで包んで蔦で巻くと…じゃんじゃじゃーん!簡易ネックレス!
これを土狼に目印としてつけておきます。
「ばいばい!土狼くん!」
土狼は寂しそうな顔をしながら、見送ってくれた。
いや、本当に寂しいのは私なのかもしれない…といってもきっとまた明日会えるだろうけどね!!!たぶん!!
ガチャ
「ただいまー!」
「シオン!!」
えっ?なになに?何事?
怖いんだけど…森に行ったのバレた?やばい?
「シオン…落ち着いて聞いて。」
いやいや、落ち着いてないのは母さんの方でしょ?
何事?いやめっちゃドキドキするんだけど?
「シオン、お父さんが国を守っている仕事についてるのは知ってるわよね?」
「うん!父さんは凄い人だって聞いてるよ!」
事実、父さんは騎士ではないが兵士であり隊長をやっている。
騎士と兵士は、兵士の方が身分が低く主に戦争に駆り出されている。
それでいて騎士は国の貴族を護る役割だ。つまり、騎士は戦いの経験のない城の中でゆったりと遊び暮らしているクソである。
私は父さんの事を誇りに思っている。家族を守るために国を守るという嘘で戦争に行かされている父さんを。
「父さんがね…戦争で…死んじゃったの」
「えっ?」
突如、突きつけられる事実。なんで?なぜ父さんが死んだの?
我々は城下町ではなく、そこから離れた村に暮らしている。貧困だが、それなりに良い暮らしをしている。その生活の中で父さんは村の支えだった
「いい?今からねサノスメリア国の兵士達がこの村にやってくるの」
サノスメリア国。私がいるのはアーステロ国でサノスメリアは隣の国だ。
数十年、隣同士で戦争を続けてきた。くだらない…
「貴方は逃げなさい。私は皆のリーダーとして皆を導く仕事があるのいいね?」
「嫌だよ!母さんから離れなくない!それにどこに逃げればいいの!?」
「っ!来て!」
母さんは私の手を取ると、地下の食料庫に閉じ込めた。
「いい?音がしなくなったらここから出てきなさい。分かった?」
「いやだよ!!…行かないで!!」
「愛してる」
ガチャ
タッタッタッ
食料庫の入口から離れる足音。扉が開かない。きっと母さんが鍵を閉めたんだろう。正直怖い。いろんな意味でとっても怖い
両親を失う怖さ、敵がこっちに来て追い詰められる怖さ、また1人になる怖さ
でも、私はこの食料庫で1人ガタガタ震えることしかできなかった。
「きゃー!!」「助けてくれ!!」
そんな悲鳴が聞こえる。嫌だ怖い怖い怖い。そして銃の音それに続く爆発音。
食料庫が揺れる、助けなきゃ!扉をこじ開けようとするが…開かない。
そして再び起こる爆発音。扉が壊された。声が聞こえる。
「隊長ー!こんな所に隠し扉がー!」
怖い。私は急いで部屋の隅に固まる。コツコツ降りてくる音震えが止まらなかった。突如大声が…
「隊長!!こんな所に生き残りの娘が!」
見つかった。見上げると薄汚い鎧を着た兵士がいた。
怖い怖い怖い。私は必死に「来ないで!」と泣き叫んだ。だがそんな言葉が届くはずもなく私は首根っこを掴まれた。
「隊長…こいつ黒髪でっせ?さっさと殺しておいた方が良いのでは?」
「あぁ…そうだな。でもどうせ殺すのなら母親の前の方のがいいだろ?」
え?母さんが生きてるの!?
まわりを見渡すと崩壊した家。真っ赤に染った地面。捕えられた女性達。
女性達の中を見ると母さんがいた、目を涙で溢れさせながら「返して!!」と言う声が聞こえる。
嫌だ
死にたくない。
ゆっくりと兵士が私の首に剣をかける。
せっかく転生したのに…何も出来ないなんて…
嫌だ!