初めての必殺技
遺跡の調査が終わり、たくさんお金を貰った私は家に引きこもってだらけていた。
私は誰もが見惚れる超絶美人のフィリアの膝の上で昼寝三昧だというのに世間の皆は汗水流しながら働いてると思うと、物凄い優越感を感じる。
昼寝最高。
「ミナ様、あまり寝過ぎると夜に眠れなくなりますよ?」
「大丈夫、私眠くなりやすい体質だから、夜ご飯食べれば眠くなるよ」
「出た、ミナちゃんの赤ちゃん体質、昔からそうだよねぇ」
「赤ちゃん呼ばわりはやめて、私はちゃんと働いて稼いでるからもう大人だし」
「ふーん、月収いくら?」
「まだ1ヶ月経ってないからわかんないけど、今大体金貨200枚くらい」
「なにそれ…超セレブじゃん、騎士団のエリートより稼いでるんじゃない?」
「間違い無いな、まぁ…この街だからっていうのもあるんだろうけどな」
なんだそりゃ、この街だから稼げるとかあるの?
それよりフレア姉は帰ってきたと思ったら何を持ってるの?
長い棒の先に斧みたいな刃と明らかに突き刺す用の刃ってことは…槍? あれ槍だよね?
「フレア姉なんで槍なんか持ってんの?」
「これは槍じゃなくてハルバードっていう槍と斧がくっ付いた武器だ、ミナの武器が壊れたから代わりに買ってきた」
「ふーんありがと、じゃあちょっと外出て振ってくるね」
私はそう言ってハルバードを持って外に出て、武器を適当にびゅんびゅん振り回した後、前に向かって風車のように高速回転させた。
超楽しい。
この風をおこしてる感じがたまらない。
そうだ! この技をミナトルネードと名付けよう。
私の初必殺技だ。
「おわっ! 凄え風圧だな! これ巻き込まれたらミンチになるぞ!」
「ス、スカートが…」
「フレアさん丸見え…って私もか…」
私のミナトルネードによって3人のスカートが捲れあがっている、ちなみに手で押さえてもガード不能のようだ。
「ふはははは! どうだ私のミナトルネードは! まさに人工の台風のようだ!」
ふう…疲れた。
てか冷静に考えるとなんでこんな事やってるんだろ私。
よく考えると女性のスカートを捲りあげてるだけの変態技じゃんか。
「やめた…何かごめんねスカートめくりして」
「私は気にしてないが」
「わたくしも、見られても問題ありませんし」
「私も気にしてないよ」
よかったぁ、怒られたらどうしようかと思ったよ。
「あ、そうだフィリアに聞こうと思ってたんだが、お前の兄が軍隊引き連れてこの街にいたぞ?」
「はぁ?」
「いや、はぁ? じゃなくてな、フィリアを迎えに来たんじゃないか? よかったじゃないか、やはり奴隷より家族と共に居た方が良いだろう?」
「フレア、あなた口先では立派な事を言いつつわたくしを追い出そうとしてますね? その手には乗りませんよ、わたくしは誰が何と言おうとミナ様から離れません、それが例え肉親であってもです」
いや重いよ、想いが重過ぎる。
普通に迎えに来たなら帰って良いんだけど。
せっかく仲良くなったのに寂しいけどね…うぅ寂しい…。
「あ! ミナちゃんの目がうるうるしてる!」
「ミナ様! そんなにわたくしと離れたくないのですね! 大丈夫です! わたくしはずっと一緒に居ますからね!」
「うん、どっか行っちゃダメだからね」
やっぱり無理でした。
フィリアが居ない生活とかあり得ないし、この街に来てからまだ日は浅いけど、もう家族みたいなものだもん、離れるとか無理。
「もしお兄様の目的がわたくしなら諦めてもらいましょうか、正直…一緒にいてもつまらない人ですしね」
「フィリアのお兄さんは王子なのにつまらないの? もしかして堅苦しい人なのかな?」
「そうではなく…人間的につまらないのです、話す事と言えば過去の自慢や、自分が如何に特別な人間かなのですよ、悪影響しか無いので、ミナ様には絶対会って欲しくないですね」
自慢かぁ…うちの村にもいたなぁ、村長の息子のウォルターとかは酷かった、いっつもまぐれで狩った鹿の話しかしなかったし。
「ミナちゃんウォルターの事思い出してるでしょ、あいつは凄かったよねぇ、鹿の話しかしないもの」
「鹿?」
「昔まぐれで狩った鹿の話ばっかりするの、私200回は聞いたと思う」
皆は私の苦々しい顔を見て察したのか、酷いやつだったんだなとか言って何故か慰めて来た。
「それより、兄がこの街に来ているのですね?」
「ん? あぁぞろぞろと来てたな、あれは自分達が敗戦国の人間だって分かってない感じだったな、無駄に偉そうに歩いてたし」
「はぁ…本当に愚かな人です、自分がいつ殺されてもおかしくないという事が分かっていない、フレア、もしあの人が条例に抵触したら遠慮なく無礼討ちにして下さい」
「了解だ、任せておけ」
フィリアが呆れたように物騒な事を頼むと、フレア姉はニヤッと獰猛な笑いを浮かべて頷いた。
そして私は頼まれない、フィリアの主人は私なんだけどなぁ。
「フィリア、私には頼まないの?」
「ミナ様だと周りにも被害が出てしまいそうなので」
「そうねぇ、ミナちゃん昔村がオークに襲われた時に泣きながら引っこ抜いた木を振り回して暴れて、家4軒壊したものねぇ」
「やめて、私の黒歴史を思い出させないで」
「破壊神ミナとか言われてたわよね」
「やめてよー!」
私はそのまま地面で丸くなって耳を塞ぎ、カンナの昔話が終わるのを待った。