ある冒険者の一日
俺はB級冒険者のアレス、冒険者歴3年の20歳、同世代のルーキーと比べると相当な出世頭だ。
自慢では無いが3年でBランクになるという事は滅多に無い、俺の場合はその時組んでいたパーティーでオーガを倒した事が大きいだろう、まぁその時仲間の半分を失ってしまったが…。
そんな事もあり、俺はとにかく依頼を受けたり、過酷な鍛錬をしたりして自分の腕や技術を磨き、帝国騎士流の免許皆伝にもなり、さらなる高み…ギルド序列の上位に入る為、ギルド貢献度を上げる為に3ヶ月前に超ハイリスク超ハイリターンの前線都市にやって来た。
そして現在、俺は序列の200位にまで上り詰めた、数字だけ聞くと大した事無いように聞こえるが、何万人もいる冒険者の中の200位だ、このままいけばAランクも近いだろうな。
ちなみにランクの人数は序列によって決められている、1位から5位までがSランクと言われる、所謂生きる伝説、6位から50位までがAランク、このランクになれば二つ名が付き、ギルド最高審議会の議員として登録される冒険者が誰でも一度は憧れるランクだ。
そして51位から2000位までがBランク、所謂一流冒険者と呼ばれ、Bランク上位なら望めばギルドマスターにもなれるランクだ。
そしてBランクより下は実力等に左右され、一般冒険者と呼ばれている。
そして最近、俺をイライラさせている存在がいる。
そいつはギルド入会から1週間足らずでAランク、しかも序列7位になりやがった。
なんでもオーガとホブゴブリンの群れの単独討伐、ケルベロスの単独討伐、敗戦国条例違反を起こしたグレル王国の第一王子と禁軍150人を1人で殲滅したとかで、俺が死ぬ思いで登っている序列という崖を、まるで階段を上るように上がっていきやがった。
ふざけてやがる、しかも何が子猫だよ、やってる事は化け猫じゃねぇか!
そんな事もあり、俺は今少し無理をして北東の森、通称死の森で魔物狩りをしている、入り口程度にいるホブゴブリン位なら何とかなるからだ。
それにしてもこの森は凄い緊迫感だ、物音一つが死に繋がる事が嫌って程わかる。
俺も茂みに隠れ、気配を殺して極力音を立てないように移動している。
「あーるーこーあーるーこー!」
はぁ!? この森で歌を歌うだと!? どこの馬鹿だ! ふざけるな! 俺までバレたらどうする気だ!
俺は周りを見渡すと、背中にハルバードを背負った金髪のガキと、赤い髪で露出の多い格好をした美人な堂々と歩いていた。
「わたしはげんきー!」
そりゃそんな馬鹿みたいにでかい声で歌えんなら元気だろうよ! てかうるせーんだよ!
「あるくのだいすきー! どんどんいーこーうー!」
そんなに大好きならさっさと行けよ! そして死ね! 俺に迷惑かけんじゃねぇよ!
「あー今日はいい天気だねー気分も清々しいよ」
あのガキ馬鹿か? ここを何処だと思ってんだよ、死の森だぞ? そんな場所に居て気分が清々しい? 頭おかしいんじゃねーの?
「そうだな、こんな事だったらフィリアとカンナも連れて散歩するのも良かったかもな」
「そうだねぇ、残念だなぁ」
いや、ここ観光地じゃねーから! 帝国屈指の危険地帯だからな! マジふざけんなよ、頼むからさっさとどっか行ってくれよ!
と思ってたらあいつらの前にキマイラが出てきた、マジかよ…危険度A上位の化物じゃねぇか、死んだなあいつら。
と思ったら死んだのはキマイラだった。
正に瞬殺だった、あのガキが獅子の頭を切り落とし、羊の頭をねじ切り、蛇の頭を引きちぎったのだ、それも尋常じゃないスピードで。
ありゃ人間じゃねぇよと膝が震えた自分を見て、俺の冒険者としてのプライドはズタズタだった。
神とは不平等だ、街に戻った俺はギルドの酒場で酒を飲みながらそう思った。
俺の祝福は、剣聖の手と破壊の手という攻撃に特化したもので、冒険者としては喉から手が出るほどの物であると自覚している。
剣聖の手には剣術の習得、成長に補正がかかり、破壊の手には攻撃力を上げる効果がある、まぁこれより上位の祝福もあるそうだがな。
それでもその辺の冒険者の数倍以上の適性があり、いずれは誰もが名前を知る存在になれる神に選ばれた者だと思っていた。
だがそれは違った、神に選ばれた者とは森に居た奴…Aランク冒険者のミナのような存在をいうのだろう、あいつには勝てない、何をしても勝てない、あいつがどんなに調子が悪く、俺が絶好調でも勝てないだろう。
そして俺は前線都市を離れる事に決めた。
ここに居ると劣等感で自信が無くなる、だから自分相応な地元に戻ると、受付のメリルさんに言うと、苦笑しながら、1週間前くらいからそういう人が増えていると聞いた。
まぁそうだろうと思う、あの戦いを見てここにいようと思えるのは、奴に手が届くような才能の持ち主か、プライドも無く何もわかって居ないボンクラかのどちらかだろうから。
そう考えながら、旅支度をする為に宿屋に戻った。




