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薔薇館で捕まえて  作者: どんC
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魔女と忘れ去られた薔薇

 テレビの画面の中、タマネギ頭の司会者がげばげばしいドレスで今日のゲストを呼ぶ。

 るるる~るる~♪ 音楽が流れる。

 毎週俳優や監督や歌手や作家を呼ぶトークショーだ。

 フラス国では人気が高く。高視聴率をたたき出している。


「皆さんこんにちはー。ルノワールの部屋です。今日のお客様は作家のロザリー・ボーン女史です」


 黒いワンピースを着た美女が入ってくる。

 そのしぐさにはどことなく品があり。まるで女王の様に堂々とした登場だ。


「皆さんこんにちはー。ロザリー・ボーンです」


 妖艶にほほ笑む。

 知らない者が見たら女優だと思うだろう。


「早速ですが、ロザリーさんはアリカ国の作家さんですね」


「はい。今はニューヨー都市シティーに住んでいます。フラス国に来たのは私が書いた小説が映画化しまして。今古城で撮影しています」


「小説のタイトルは【小さな魔女と忘れ去られた薔薇】ですね。小説が大ヒットして映画化ですね」


「本当に読者のお陰です。幸運な小説です」


「古城の撮影はほとんど取り終えているんですよね。監督や役者を激励する為に来られたんですか?」


「はいそれと母の祖国ですから、一度来てみたかったんです。このワンピースも母が誕生日のプレゼントで縫ってくれたんです」


「素敵なワンピースですね。小説のイメージにピッタリですね。お母様の生まれ故郷何ですか?」


「はい。母は先月癌で亡くなりましたが、母の生家に遺髪を埋める為でもあります」


「それは……お悔やみ申し上げます」


「ありがとうございます。母も私の作品が映画になるのをとても楽しみにしていました」


「ワンピースを縫ってくれたり。いいお母さんだったんですね」


「はい。私が子供の時父が事故で亡くなり。父を愛していた母は再婚もせず、女手一つで私を育ててくれました」


 ロザリーは少し俯き。


「癌にならなければ母と二人で世界一週の船旅に出かけるつもりでした。孝行をしたい時には親はなしって言いますけど本当にその通りでした」


「【小さな魔女と忘れ去られた薔薇】のあとがきに母に捧げるとありましたね」


「はい。あの作品は子供の頃母から聞いた母の実家をモデルにしたんです。子供の頃寝る前に母からよくブルゴーニ地方のおとぎ話を聞かされました」


「ロザリーさんの小説の原点はブルゴーニなんですね」


 ロザリーは頷き。


「子供心に何時かブルゴーニに行きたいと思っていました」


「夢がかないましたね」


「ええ。でもできれば母に故郷を見せたかったです」


「この後のご予定は?」


「撮影現場に挨拶したら休暇を取るつもりです」


 それからしばらく話して撮影の収録が終わった。


「お疲れ様で~す」


「ご苦労様で~す」


 スタッフに声をかけられてロザリーは笑顔を向ける。


「お疲れ様です」


「おつかれ~」


 マネージャーのナミがロザリーの所にやって来る。

 ナミは赤毛で波打つ髪を後ろでポニーテールにしている。

 スーツを着ていかにもやり手なキャリアウーマンと言う風情だ。


「どうだった? 私チャンと話せてた?」


「もうバッチリよ。これでまた10万部売れるわ」


「もうナミは大げさなんだから」


 二人はテレビ局の前に居るタクシーに乗るとホテルの名を告げた。


「カメリアホテルに行って」


 ナミはそう言うと手帳を取り出しスケジュールを確認する。


「今日はこれで御終い。明日は撮影現場の古城に向かうわ。どうする? お酒でも飲みに行く?」


「そうね~。なんか疲れたからこのままホテルで休むわ。明日は撮影現場に行って映画のインタビューを受けるし。ナミはどうするの?」


「素敵なアバンチュールといくわ」


 ナミは携帯を振って待ち受け画面のイケメンを見せる。

 待ち受けには旦那様と1歳になる息子が写っている。

 セントパークの公園で取ったものだ。

 時差でニューヨー都市シティーは夜で息子は寝ているが、旦那は起きている。

 ナミはロザリーのマネージャーだ。

 旦那は新聞記者で彼の母親が息子の面倒を見ていてくれる。


「旦那と息子ビリーとお義母さんのお土産買ったの?」


「ロザリーがお爺さんの家に寄っている時に買ったわ。ありがとうお土産を買う時間をくれて。でもよかったの? 一緒に着いて行かなくて?」


「パリリによる前にあそこに寄ったけど、執事とメイドと後は良く分からない男がいるだけだったわ。多分使用人ね。お爺様は居なかった。お母さんが送った写真も取り返せなかったわ」


「災難ね。アルバムが無くなるなんて」


「そうなのよ。お母さんが療養していたホスピタルの傍にアパートを借りていたけれど。亡くなったから拠点をニューヨー都市シティーに移したときにアルバムが入った段ボールが何処かに行ってしまって昔の写真が無くなってしまったの」


「私んに2人で写ってる写真をコピーできるけど小母さまの写真はあんまりないのよね~」


 ナミの家はロザリーが住むアパートの近所だった。

 二人は幼馴染で良くナミの叔父さんに遊んでもらった。


「良くナミのお兄さんと私とナミでルーパート叔父さんに遊んでもらったわね」


「あれ……遊んでもらったって言うの? 軍事訓練じゃないの?」


「あら? サバイバルゲームじゃなかった? キャンプにも連れてってもらったし」


「本当叔父さん何考えてたんだろう。お陰でライフルは撃てるわ。動物の解体はできるわ。マネージャー首になったら軍か警察に入隊できそう」


「ルパート叔父さんには感謝しているのよ。痴漢を叩き潰したし。作家の才能が無ければフラス国の外人部隊に入ってお母さんの入院費用を作っていた」


「ロザリーは作家が一番向いているのよ」


 ナミは笑いロザリーの手を取った。


「貴女の手は皆を幸せにする手なのよ。皆に夢や希望を与える手なのよ。決して誰かを不幸にする手ではないわ」


「ありがとう。ナミは私の親友だわ」


「ふふ……ロザリーは私達の家族よ」


 本当にナミの家族には感謝してもし足りない。

 ナミの兄が出版社に就職してそれが縁で【魔女と忘れ去られた薔薇】を出版することが出来た。

 かなり売れてお母さんに楽をしてもらおうとした矢先。

 お母さんが癌で倒れた。

 無理をして働いていたからその時にはもう手遅れで。

 湖の近くのホスピタルに入り。治療というよりは痛みを止める為だけだった。

 母は笑って亡くなった。


「本当に私の家族はナミ達だわ」


二人は抱き合った。


「じゃ、隣の部屋に居るから何かあったら呼んでね」


隣のホテルの部屋に入っていった。


ロザリーは波に手を振り自分の部屋に入る。


「だから……お爺様何て要らない。お母さんを見捨てた男なんていらない」


そう呟いたのを聞く者は居なかった。




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 2019/8/4 『小説家になろう』 どんC

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すっかり忘れていました(笑)

最後までお読みいただきありがとうございます。

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