プロローグ
その館は、薔薇館と呼ばれていた。
母も祖母も館に咲き誇る薔薇をとても愛していた。
ずっとずっと遠い所に居てもその薔薇と館に住む人達を愛していた。
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リーンゴンリーンゴン
とベルが鳴る。
薔薇館を一人の女性が訪れた。
長いプラチナブロンドが風に揺れる。
ガチャリとドアが開き、若いメイドがドアを開けた。
「こんにちは。ご主人はご在宅かしら?」
メイドは、彼女の顔を見るなりギヨッとした。
「お客様か?」
執事が奥のドアから出てくるなり、彼もまた彼女の顔を見るなりギヨッとする。
失礼なメイドと執事だな~
と思いつつ彼女は、勝手に玄関ホールに進んだ。
そして階段の上に飾られていた肖像画を見て、彼女もメイドや執事と同じくギヨッとする。
大きな油絵の肖像画は一人の女性が描かれていた。
プラチナブロンドの長い髪紫の瞳、白いドレスを纏った彼女は若く女神の様に美しい。
オマケに品が、あった。
ああなるほどメイドと執事がギヨッとするはずだ。
私達は、生き写し或いは、本人と言って良いほどそっくりだ。
よく見るとあちらこちら大小様々な肖像画が、飾られている。
全て同じ女性だ。
「ママが言っていたけれど……本当に似ているのね」
彼女は、肩をすくめた。
「所でお祖父様は、いらっしゃらないの?」
「旦那様は仕事でお出掛けになられております」
まだ固まっているメイドより先に執事が答える。
「そう……いらっしゃらないのね。いいわ。また来るわ。それまでにママがお祖父様に送った写真を返して欲しいのよ。引っ越しした時にアルバムが入ってた段ボールの箱が無くなってしまって困っているの。私暫くは、フランに仕事で居るからお願いするわ」
彼女はそう言ってクルリと踵を返して、ドアの所に向かった。
「待ってくれ‼」
何時の間にか2階の手摺に若い男性が、立っていた。大きな窓から差し込む光のせいで男は、黒い影の様に見えた。
「君は、誰だ?」
「私? 私は、シェリー」
彼女はそう言うと、ドアから優雅に出ていった。
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2018/2/23 『小説家になろう』 どんC
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