あおじ<6>
十二天将を前に、琥珀が力強く話した。
「晴茂様は、死んでいません。きっと、どこかで生きています。
わたし達式神は力を結集して晴茂様を探さねばなりません。
妖狐九尾も、手の者を総動員して晴茂様を探してくれます。みなさん、よろしくお願いします」
琥珀は、十二天将に深々と頭を下げ頼んだ。そして、太陰が、これまでの話を要領良く説明した。
いつもの酔っぱらいの太陰ではない。理路整然と晴茂が生きていることを説明した。
その太陰の姿を見て、天空はくすくすと笑った。どうにも真面目な太陰は、太陰らしくないのだ。
「成る程、今回は、太陰も九尾のキツネの知恵に敵わなかったのですな。
わたし達全員が、晴茂様は亡くなられたと思っていましたからねえ」
大裳が何度も頷きながら呟いた。
「しかし、…、どこに?」
六合が思案顔で呟く。
そして全員が、「晴茂様はどこだろう?」と首を傾げた。
みんな各々の意見を出したが、これと言って有力なものはなかった。
しかし、全員の顔はこれまでと違い、晴茂が生きていると知り、活きいきとしたものだった。
「兎に角、琥珀の心が晴茂様を感じないというのは、どのように理解すればいいのやら…。
あの方の呪力なら、例えこの世の果てまで離れていようと、琥珀には届くはずでしょう」
大裳の呟きに、天后が答える。
「九尾のキツネは、晴茂様がそれほどまでに危険な状態かと、言ったよ。
早く見つけなければ、本当に大変なことになる」
「ううぅん、…、しかし、探すといっても、雲をつかむような…」
六合は、腕組みをして唸るばかりだ。
太陰の知恵も、大裳の知識も、これといった答えを導けずに時が過ぎた。
最後に琥珀が、みんなに言った。
「兎に角、手分けして探すしかない!
玄武、朱雀、青龍、白虎は、各々受け持ちの方角をくまなく探してみて。
残りは、二手に分かれて、最後に晴茂様のいた榛名山周辺、
それに、手掛かりと言えば、酒呑童子の本拠地のあった大江山。だから、この二か所を探しましょう」
方角を司る四獣神、玄武、朱雀、青龍、白虎は、『よし、分かった』と、各々の方角に向けて消えた。
「おいおい、琥珀。おれが一番気にしているのは、京の土蜘蛛の巣だ。
おまえが囚われの身になって閉じ込められた地下洞窟だ。
晴茂様が喰われたのは土蜘蛛だし、あの洞窟は確かに土蜘蛛の巣だ。調べてみる必要があるぞ」
天空が強く主張した。
「そうさなあ、土蜘蛛の巣は、怪しいかもしれん」
六合が同調した。
「分かった。じゃあ、三手に分かれて探しましょう」
六合が、大裳、騰蛇を率いて、榛名山へ。
天后が、勾陳を率いて大江山へ。
そして、天空と琥珀そして太陰が土蜘蛛の巣を調べることとした。