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琥珀色の心 Ⅱ  作者: 柴垣菫草
第2章 磯女
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磯女<11>

「わたし達は、水に囲まれている。周りは全て水だわ」

「ええっ!水の中にいる?」


「そう、言ってみれば、水中の(あぶく)の中だわ。大きな泡の中、…」


「おいおい、この異界は水中の泡だというのかぁ」

天空(てんくう)天后(てんこう)にそう言って、後ろにいる大裳(たいも)の方へ振り向いた。


天后、琥珀も大裳を見た。大裳に何らかの説明を聞きたいのだ。


「ああぁぁ…、急にこちらを向かれても、…。(あぶく)ですか…」

大裳は困った顔で腕組みをしてしまった。


(しばら)くして、大裳が言う。

「先程の千手観音の使いと関連させるならば、観音様は水の化身(けしん)だ、と言うことぐらいでしょうか。

うぅぅん、あまり関係ないかもしれません」

成る程、説明したことにはかわりはないが、大裳自身が言うように、三人が聞きたい内容ではない。


「それよりも、…」

大裳が続けて発言した内容の方がはるかに重大だった。


「我々が水中の(あぶく)の中にいるのであれば、泡が破れれば助からないかもしれません。

ここは異界ですから、異界の水中に投げ出される訳です。

水の中では、どこに異界の出口があるのか…、特定できないでしょう。

早くこの異界から脱出した方が良いかと…」


「うわっ!それは、いかんぜ。早くここから出よう」

天空は、(あわ)てて天空剣を握り直した。


「ちょっと待って!新しく発見した異界なんだよ。晴茂様を救出する何か手掛かりを探さなくっちゃ」

琥珀の意見に、天空は反論する。


「そりゃあ、分かるけどさぁ、琥珀。俺達がここで消滅してしまったら、晴茂様を助けようにも助けられないぜ。

まずは、こんな危険な異界から出ようよ」


「いいよ、天空。あなた達は戻って!わたしが残って調べる」

琥珀はこの異界に残ると言った。その目は真剣だ。


「しかし…、この異界から出るには、天空剣が必要なんだぜ。

琥珀が残ったら、天空剣を持たないおまえは、ここから出られない」


「さっき千手観音の使いを異界から出したように、向こうから天空剣を使ってよ」


「いやぁ、それは危険だぜ、琥珀。あの千手観音の使いは、自分で天空剣を引き寄せる力があった。

けど、おまえにはそんな力はない。俺が向こうから、どこを狙って天空剣を使うっていうんだ。そうだろぉ、大裳」


「はい、とても危険です。()に角、みんなで戻りましょう」

大裳も琥珀に戻るように言った。しかし、琥珀は首を振る。


(しば)し、言葉が途切れた。

「あ~あ、しょうがないなあ。分かったわ、私が残って、この異界を調べてみる」

そう言ったのは天后だ。


「天后っ!駄目だ。危険だ」

「でも、琥珀が残るより危険が少ないわ。だって、私、水神だよ。例え異界だとしても、水を制してみせるわ。

その代り、天空、私の合図を見つけたら、間違わずに天空剣を使ってね」


琥珀は、戸惑(とまど)った。自分が無理なことを言ったがために、天后に危険な決断を()いてしまった。

これは止めさせねばならない。


「天后を危険な目にあわせられない。やはり、わたしが…」

琥珀の言葉を手で(さえぎ)った天后が言う。


「琥珀、私も同じ晴茂様の式神だよ。晴茂様を助けるために、式神として行動するだけだわ。

それに、さっきも言ったけど、この水中の異界は私にしか制御できない。心配しなくていいよ」


天后の目は真剣だった。

そんな天后の強い気迫を感じた天空が琥珀に向かって言った。

「ふぅう、琥珀、こう見えても天后は案外頑固(がんこ)だ。ここまで言うと、もう決心は変わらない。そうだな、天后」


「そうだよ、天空。さあ、みんな早く戻って」

いつもはあれ程いがみ合っている天空と天后だが、お互いを信じ合っているんだと琥珀は改めて知らされた。


天后は、ぶつぶつと呪文を唱えると宙に浮かび、そのまま遠くへ飛んで見えなくなった。


「じゃあ戻るぞ、琥珀、大裳、俺に(つか)まってくれ!早く戻らないと、天后の合図を見逃すかもしれない」

琥珀と大裳は、天空の腕を握った。もう一方の腕で、天空は剣を持ち方向を定めた。


「伸びろ、天空剣!」

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