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琥珀色の心 Ⅱ  作者: 柴垣菫草
第2章 磯女
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磯女<10>

「おいおい、琥珀、天空(てんくう)剣で開けたあんな小さな穴に、俺達が入るのか?」

「入れない?」


「相手は岩石だぞ。土の中ならともかく、岩が割れて海の藻屑(もくず)となってしまう。止めよう、止めよう」

「異界の手掛かりなんだよ!いやならいいよ、天空」


そう言って、琥珀は海に突き出た大岩に飛んだ。

穴の中を(のぞ)き込んだ。

何も見えない。中は真っ黒だ。


しかし、異界に導けるのは天空剣の魔力だけだ。

琥珀にはどうしようもない。


その琥珀の姿を見ていた天空が言った。

「もぉうぅ…、しょうが無いなぁ」


天空は、仕方なく琥珀の後を追って、大岩に飛んだ。天后(てんこう)大裳(たいも)も後に続いた。

いかに大岩とはいえ、その天辺(てっぺん)に四人が立ったのだから狭い。

身体を寄せ合わないと海に落ちる。


「おい、天后、押すなよ。もっとそちに行けるだろう。琥珀、穴の中は見えたか?」

「中は分からない」


「それは、そうでしょう。異界ですから、こちらから見えません」

大裳が、見えなくて当然ですという顔で(つぶや)いた。


「そんなこと、分かってるよ、大裳。聞いてみただけだ」


琥珀が、天空を促した。

「中へ入ろう、天空」


「おいおい、やはり本気か?」

「異界を調べないと、晴茂様を助けられない」


天空も、晴茂を助けると言われれば、返す言葉がないのだ。

「よしっ!中へ入るか。みんな(つな)がっていてくれよ」


琥珀、天后、大裳の三人は、天空の身体に両手で繋がった。


天空は、天空剣を大岩の穴にあてがった。

「伸びろっ、天空剣!」


天空の声とともに、天空剣が大岩にズブズブと入って行く。


どこからともなく、ごぉぉぉと鈍い音が聞こえ、天空剣諸共(もろとも)四人の姿が岩に吸い込まれた。


 四人が転がり落ちたのは、…、地面が波打つ薄暗い空間だ。

琥珀は立ち上がろうとしたが、上手く立てない。()(かく)、足元が柔らかいのだ。


仕方なく琥珀は呪文を唱え、宙に浮くことにした。他の三人も同様だ。


「ここって、…洞窟(どうくつ)?」

天后の問いに、琥珀が答える。

「いいや、洞窟ではないわ」


四人は、きょろきょろと周りを探るのだが、上と左右には何もない。

下には例のふわふわと柔らかい地面がある。


「兎に角、妖気や霊気、邪悪な気はないわね」

天后が言った。


「これは、広い空間ですねぇ。少し進んでみますか?」

大裳の提案に、天空が言った。

「しかし、見渡す限り目印が何もないぜ。どっちに行けばいいのか?

それに、今俺達がいる場所を覚えておかないと、あの大岩に戻れなくなる」


天空は地面に降り、(かが)んで何かをしている。

この場所の目印でもつけているのだろうか。


(しばら)くして、首を(かし)げながら、天空が再び宙に浮かんで来た。


「変だぜ、ここは」

「何?何が変?」


琥珀の問いに答えて、天空が言った。

「この空間に、…、土を感じない」


「…?」

「俺は土神だ。土のことは(まか)せろ…なんだが、この空間には土がない。

大裳も土神だろ、どうだい、土を感じるか?」


そう言われて、大裳は目を閉じた。気を集中しているようだ。


「天空の言う通りです。ここには、土や砂、石、岩、…、要するに大地がありません」


「ええっ、…どういうこと?」

琥珀と天后は驚いた。


大地がないとは、どんな所なのか。


天空が下を指差(ゆびさ)しながら、天后に向かって言った。

「大地のあるべき所に、俺は水を感じた。天后は水神だ。調べてくれ」

「分かった」

天后が頷き、下へ降りて行った。


天后は、揺れる地面に手を触れた。なんと、天后が触れた地面は、天空が言う様に水ではないか。

しかも、どこまで行っても、水しかない。


天后が驚き、状況を把握(はあく)している間に、琥珀、天空、大裳も降りて来た。


「天后、何か分かった?」


琥珀の問いに、天后は驚くべき回答をした。

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