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琥珀色の心 Ⅱ  作者: 柴垣菫草
第2章 磯女
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磯女<8>

 琥珀、天空(てんくう)大裳(たいも)、そして天后(てんこう)は、七里御浜(しちりみはま)北端の鬼ケ城へ向かった。

朱雀(すざく)は、上空を警戒しながら四人の後を飛んだ。

長く続く七里御浜を南から縦断した。白い石と砂の美しい浜だ。


そして、七里御浜の北端に立った天空は、天空剣を空に向かって突き上げた。

目を閉じ、天空剣に意識を集中する。


琥珀が天空を見詰める。天空にもあの異常な気配は作用するのだろうか。

天后も何か異常な気配を探ろうと鬼ケ城の小山を(にら)む。


辺りは穏やかだ。異変が起こりそうな雰囲気ではない。


やおら、天空が目を開け言った。

「琥珀、天空剣に何かが引っ掛かる」


天空は、剣を鬼ケ城の小山に向けた。


「やはり…、何かあるのか?あそこに…?」

琥珀に代わって大裳が聞いた。


「わたしは、何も感じないよ」

天后が天空に言う。


「これは…、天空剣の魔力、そして琥珀の杖の呪力が感じる異常な気配だろう。

天后や大裳は感じないのだから…」


天空は、腕を組み考え込んだが、分からない。


「大裳、そんな気配とは、何だ?分かるか?」


天空に問われて大裳が(おもむろ)に答えた。

「考えられることは…、ひとつだけです。仏の剣である天空剣、

そして晴茂様が呪力を駆使して造り上げた琥珀の杖、

どちらも自然の摂理から力を得た魔力が働いています。


両方の魔力が感じるのは…、仏法の波動でございましょうか」


「ぶっ…、仏法の波動?なんだ、それは?」


難しい言葉が大裳から出た。天空は、ますます混乱した。


「仏から何らかの働きかけがある時、自然に出る気配でございます。

普通は、徳を積まれた高貴な僧しか感じない気配ですが、天空は剣で、琥珀は杖でそれを感じているのでございましょう」


「…??」


天空は、大裳の説明を聞いても全く理解できない。

仏様からの働きかけ?それは、何?


天空の混乱した頭を、天后が簡単に解決してくれた。

「ふうぅん、それって仏様が何か言いたいことがあるっていうのね?」


天后の問いに大裳が答える。

「言いたいことかどうか分かりませんが、まぁ…、そのようなことです」


「仏様が俺に言いたいことがあるってかぁ?いや、まあ、そりゃあ分からんでもないが、…」

「天空にじゃなくって、きっと仏法剣である天空剣に言いたいことがあるんだよ」


天空は素直に納得したのか、天后の言葉に(うなづ)きながら言う。

「何だかよく分からん話だが、まあいいや、あの小山に行ってみようぜ」


天空は鬼ケ城に向かって進んだ。琥珀も後を追う。

天后と大裳は、二人の行く方向について行くしかない。


 太平洋に飛び出した岩山の鬼ケ城は、巨岩、奇岩が連なる景勝地だ。

その昔、多我丸(たがまる)という鬼の海賊が()みつき、辺りの住民を苦しめた。それを坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)が征伐したと伝説にある。

太平洋の荒波に打たれる奇岩を眺めていると、いかにも鬼の棲家らしい場所だ。


足を止めた天空が剣を前方に突き出した。

ぶぅぅんと天空剣が鳴った。どうやら天空剣が振動しているようだ。


「琥珀、あそこ…」


天空剣が指し示している方向を、天空はじっと見据えている。

琥珀の持つ杖が、ぴくぴくと動いた。何かに反応している。


天后と大裳も、天空剣の示す方向を見た。岩山の(ふち)から太平洋を見る。

荒波が押し寄せる数十メートル先に、大きな岩が海から突き出している。


天空剣は、その大岩を指し示していた。


「あの海から出ている岩?」


その岩を指差して、天后が天空に聞いたのと同時だった。

それまで片手で天空剣を持っていた天空が、(あわ)てて両手で剣を持った。

いや、持つというより剣の振動を押さえようとしている。天空の顔色が変わった。


「なっ…何だ、これはっ!天后、手を貸してくれぇ!」

天空は、必死で天空剣を押さえ付けようとしている。


振動しているだけではない。

天空剣が暴れ出したのだ。


剣が勝手に動く。

「うわっ!」


こんな事態は天空にとって初めてのことだ。


天空の意に逆らって、勝手に天空剣が動く。

天空剣を離しては、天空の魔力は消える。

天空が必死に天空剣を押さえ付けようとするのも当然だ。


天后が、天空の手の上から両手で剣の柄を持った。

剣を押さえ付けようとしたのだ。


しかし、剣の柄に触れた途端、バチッと火花が飛び、天后は弾き飛ばされた。

「痛いっ!何よ、この剣!静電気でも帯びてるの?」

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