表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
琥珀色の心 Ⅱ  作者: 柴垣菫草
第1章 あおじ
14/53

あおじ<14>

ごぉぉぉと地鳴りがする。ビシビシと空気が凍る。

天后(てんこう)の右手から冷気が渦を巻いて吹き出した。


辺りは一面、凍り付く。木々は葉を落とし、草花は枯れ、吐く息が凍る。

一瞬にして極寒の世界が訪れた。


逃げようとする大蝦蟇(おおがま)だが、既に身体は寒さに(さら)されて動きが鈍い。

次第に身体から氷柱(つらら)が垂れ、全身が凍り付く寸前だ。


「ううう…、動けない…」

ついに大蝦蟇は全く身動きが取れなくなった。


「周防の大蝦蟇、おまえは周防の国の蝦蟇だろう。何故、この大江山に現れた」

琥珀が聞いた。


「ううう…、大江山?ここは大江山か…」

「そうだ。酒呑童子(しゅてんどうじ)を首領とする鬼の山だ」


「うう…、俺は永らく異界に封じられていた。最近になって封印が解けたので異界から出てきただけじゃ。

うう…、出てきた先が大江山かどこか分かろうはずがない…」


「異界に封じられていた?誰が封じたのだ?」

「ううう、…毒蜘蛛、うう…」


「毒蜘蛛?」

「ううっ…、そうだ」


天后が琥珀を促した。天后の術とて、極限の寒さはそう長続きできない。

「琥珀、五芒星(ごぼうせい)を!」


琥珀は頷いた。大蝦蟇の周りを、五行相生(ごぎょうそうせい)の順で巡る。自然界の全ての力を結集することによる強固な結界を張るのだ。

頂点「木」、左回りに「火」、「土」、「金」、「水」、そして再び「木」に戻り印を切る。


青白く光る五芒星の結界が張られ、妖怪、周防の大蝦蟇の姿は見えなくなった。

安倍陰陽師に伝わる奥義のひとつ、五芒星の結界に大蝦蟇を封じた。


琥珀が天后に目で合図した。天后は呪文を唱え、季節を元に戻した。


「ひぃえー、寒かったぞぉ」

大蝦蟇の虹色光線で全身麻痺していた天空(てんくう)が、琥珀と天后の後ろでよろよろと立ち上がった。


「天空、大丈夫?」

振り向いて声をかける天后に、天空が剣を杖代わりにしてようやく立って怒鳴った。


「天后っ!大蝦蟇が寒さに弱いのなら、もっと早く術をかけろっ!ひどい目に合ったぜ、まったく…」

「なに言ってるの。虹色光線をぶった切るなんて、大口をたたいたくせに、逆にやられるなんて…」

天空が苦手な天后は、琥珀の後ろに隠れながら言い返した。


「何だとっ!」

よろよろと、それでも声だけは威勢のいい天空が、天后に向かって一歩前に踏み出した。


「天空、およしなさいな…。でも、大蝦蟇は意外に手強かったですわ。あれでは、勾陳(こうちん)が逃げ出すのも分かりますわねぇ」

天空を(さえぎ)るように太陰(たいおん)が姿を現した。


「うん、確かに強い妖怪だ」

天空が頷いた。


勾陳が土の中から頭を持ち上げ、きょろきょろと辺りを見渡しながら現れた。

「琥珀、大蝦蟇は五芒星の結界に封じてくれましたか。助かりました」


「おお、勾陳。やつとは以前会ったことがあるのか?」

天空が聞いた。


「はい、大昔ですが…わたしは、もう少しで大蝦蟇に喰われるところでした。

その時は、晴明様が追っ払ってくれました。晴明様もあの虹色の光線には手古摺(てこず)っていました。吹雪で光線を凍らせて、退治したのです」


「なんだ勾陳、大蝦蟇が寒さに弱いって知ってたんじゃないか。早く教えてくれよな、隠れてないで…」

「いえいえ、わたしはあの大蝦蟇の姿を見たり、匂いを嗅いだりすると、もうそれだけで気分が悪くなるので…、申し訳ない」


勾陳は本当に大蝦蟇には弱いようだ。台地を揺るがし、山を造り、口から金色の妖気を吐いて土に変えることのできる勾陳なのだが、誰にも弱点はあるもんだ。


そんな勾陳を笑顔で見て、酒徳利を傾けながら太陰が言った。

「それより、大蝦蟇が最後に言った『毒蜘蛛に長年異界へ封じられていた』とは、どういうことでしょうかねぇ?」


「そう言ってたわね。毒蜘蛛って?」

天后が首を傾げながらみんなを見渡した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ