あおじ<13>
「来たっ!」
天空は空高く飛び、叫んだ。
「伸びろ、天空剣!!」
大蝦蟇の虹光線は、天空のいた場所目掛けて放たれた。その上空に飛んだ天空は、虹光線を垂直に切る絶好の位置を占めたのだ。
天空の計画は見事に成功した。琥珀と天后も、心の中で『やった!』と叫んだ。
天空は、伸びる天空剣を、上段から袈裟懸けに振り下ろした。虹色の光線を、真横から天空剣が切り裂いた。
否、切り裂いたように見えた。
琥珀も天后も、虹色の光線を避けながら、確かに天空剣が光線を切ったのを目撃したのだ。
しかし、ぐゎああん、と音を発した天空剣は、光線を切り裂いてはいなかった。
天空剣は、虹色光線の途中で動きを止められたのだ。
天空剣の剣身が虹色に変わる。そして、それを握る天空も虹色に染まった。
天空は翻筋斗打って背中から地に落ちた。
起き上がろうとする天空…、しかし、身体が痺れて動けない。
「わっははは…」
大蝦蟇が勝ち誇った声を上げながら現れた。
「この光線を切るとは、愚かなことよ」
琥珀と天后は、大蝦蟇と倒れた天空の間に飛び出して構えた。
「虹光線が切れると思ったのか?うわっははは…。
この光線は、俺の舌が作る波動だ。切れぬわいっ!」
天后が、攻撃の姿勢をとった。
「止めろ、止めろ!無駄だ!おまえ達に、俺は倒せぬ」
大蝦蟇の濁った眼が、ぎょろっと天后を睨む。その迫力に天后は怯んだ。
「ううっ…」
あの天空剣でも大蝦蟇の虹光線は切れない。琥珀は焦った。どうすれば大蝦蟇を倒せるのか。
大蝦蟇は、少しずつ間合いを詰めながら言った。
「俺は、人間を喰うのはあまり好まないが、久し振りのこの世だ、三人まとめて喰らってやろう」
琥珀と天后は、大蝦蟇に押されるようにじりじりと後ろに退る。既に、痺れて身動きがとれない天空の所まで下がってしまった。
ここで再び虹色の光線を発せられたら、二人とも天空を守りながら逃げる術はない。
大蝦蟇は、醜い黒いイボを誇るかのように三人の前に立ちはだかった。
「うむむむ…」
琥珀と天后は、唸るしかない。
その時、二人の耳に太陰の声が聞こえた。
『天后、ほら、天后…、大蝦蟇とて所詮蛙ですわよ。冬になると体温を調整できない蛙は、冬眠するしかないですわ。
そう、大蝦蟇は寒さに弱いはず。水神で冬を司る天后!あなたの出番でございますわよ…』
琥珀と天后は顔を見合わせた。そうかっ、その手があったか。
天后は、琥珀に頷くと、低く呪文を唱え始めた。そして、右手を天に差し出した。
「冬よ…来いっ!」




