すごくトイレに行きたかった話
ある時、私はとても尿意を催していた。
急いでトイレに向かう。
個室のドアを閉めて便座に腰を下ろすと、間に合ったことにホッと一安心した。
用を足し、身支度を整えトイレの水を流し、手を洗って友人たちの所に戻る。
それから私は友人たちと談笑していたのだが、程無くまたトイレに行きたくなってきた。
仕方なく友人たちとの会話を中断し、もう一度トイレに立った。
なんだかトイレの近い日だな。
そう考えながら、数分前と同じようにトイレの個室の便座に腰を下ろす。
しかしすぐに、何かおかしいことに気がついた。
さっきも今も、確かに用を足したはずなのに、まだ尿意が消えないのだ。
残尿感がある、と言うのだろうか。目的は果たしたのに全くすっきりとした感じがしない。
もしかしたら膀胱かどこかが悪いのかもしれない。それ用の薬のCMを見たことがあるが、自分には関係ないと思っていたのに。いやいや、若くはないかもしれないが、そこまで年は取っていない。しかしこのままにしておくのも不安だし、やはり病院に行くべきか……。
◇
目が覚めた時、私はとても尿意を催していた。
ベッドから起き上がり、トイレに向かう。
用を足しながら、ああそれであんな夢を見たのかと納得した。
夢とは違い、今度はすっきりした気持ちでトイレを出る。
窓を開けると、爽やかな朝の空気が部屋に入ってきた。
少しも汚れていないベッドを見て、自分も大人なんだなと、しみじみと感慨にふけったのだった。