噺したがりの少女H
原稿用紙に居たキャラを使ってみました。
イラストは自作でみてみんに上げているものです。
口は災いの元とは良く言う。かくいうワタシも口のせいで色々とやらかしてたりする。
さて、ここで少しワタシのハナシをしようか。
何、ちょっとした昔噺さ。
少女が居たんだ。何処にでも要るような、ちょっと口喧しい女の子。
そいつはちょっと口が悪かったんだよね。口調とかじゃないよ。
そうだな、口癖が悪かったとでも言おうか。
多少のおふざけなら笑って許してくれる人間を何度も怒らせた。柔和とか温厚とかいう人間もね。
「お前は人を馬鹿にしてるのか!」
っていわれて
「気づいてくれて良かった」
って返すもんだから余計怒られたよ。
だけどそれしか特技がないから、家先に布を敷いてその上で噺をする仕事をしてた。収入はそこそこだけど意外と人気だった。
でも、そんな日はすぐに終わりを迎えた。
ある日、縁談を持ちかけられたんだよ。なんかよくわかんない金持ちから。村に援助をするから僕のものになってくれって言われてさ。
本当にこういうんだから驚いちゃった。
で、村のためなら、ということでそいつと結婚したんだ。面白そうだったしね。
そしたら突然世界が変わったんだよ。今までこの口だけで稼いでたのに、毎日お金使い放題の生活出来るようになっちゃった。
そしたらもうやることがない。働く必要もなくなったし、旦那様と仲良くいちゃこらしてたらそれで良いんだから。
だから、また噺を始めたんだ。今度は趣味で。お金を稼ぐ必要はないし、それ以外にやりたいこともなかったから。
旦那様のご友人や、他の有名な金持ち達にいろんなことを噺した。お噺だから多少の嘘も吐いたよ。でも、嘘と言ってもフィクション、創作噺さ。
「これは嘘か本当かわからない、本当かもしれないお噺です」
って言って始めるんだ。これで大概の人は嘘だってわかる。
だけど、わからない人も居たみたい。
いきなりやって来た一人のお金持ちさんがさ、言ったんだよ。
「お前のした噺を人にした。するとどうだ、嘘だと言ってからかわれた。ワタシは大衆の面前で恥をかいたんだ」
って。
ぽかんとしたね。開いた口が塞がらないとはこのことだよ。
「それはすいません。でも、ワタシもまさか本気にする方が居るとは思わなくて」
としか言いようがなかった。
「うるさい! お前も私を馬鹿にするのか!? 私の面目丸潰れだ! お前のせいで!!」
それでも男は止まらなかった。挙げ句に激昂していきなり掴みかかってきた。
凄い力で逃げられなかったよ。なすすべなく、首を締められて死んだ。
男は屋敷を焼いて旦那ごと遺体を処分したらしい。
そして後に捕まった男はこう言ったそうだ。
「なんでも軽々しく口にするから、呼ばなくていいものも呼ぶのか、と」
私の口が災いを呼んだのか、男の呼んだ災いがワタシに来たのか、それはワタシの知ったことじゃない。
けど、良い勉強になる体験だったよ。
……さて、なにか言いたそうだね?
まあ、大体わかるけど。
そうだな。答えになるかはわからない、けど敢えて言わせてもらうと、ワタシはワタシでワタシなんだってこと。
今日はこれめでたしめでたし。
では、またどこかで。
閲覧、ありがとうございました!m(__)m
もしかしたら続くかもしれないので、もし続いたらそちらもよろしくお願いします!