仮想ゲーム世界でログアウト不能 ~ある採掘士の平凡な一日~
某アニメを見て書きたくなったので書いてみました。
俺はゆらゆらと揺れる水面に浮かぶ浮きをぼんやりと眺めていた。
場所は始まりの街『アークガルド』からほど近い小川だ。
ここらへんにはアクティブモンスターもいないからいきなり襲われる心配もない。
ちなみに俺のスペックはこんなかんじだ。
名前 石金拓也
職業 剣士 LV1
主なスキル
採掘 29
伐採 16
採取 8
釣り 5
ちゃぽっ
浮きが沈み手にした釣竿に僅かな引っ掛かりが伝わる。
水面にはヒットを示す半透明の表示が現れ、円形の照準ウィンドウとその中を激しく動く光点。
光点が照準の中心に来た瞬間に合わせて釣竿を引き上げる。
小さな水音と共に光り輝く黄金魚の姿が現れる。
「よっしゃぁあああっ、プチレアゲットだぜ」
しかし、一瞬後にその黄金魚の姿は掻き消え水面にはMISSの表示がでかでかと出現する。
みると、照準ウィンドウの光点は中心からかなり離れた位置で停止していた。
「まじかよ・・・、ディレイペナルティキツすぎだろ」
俺はサークルメニューを呼び出し、たった今更新されたであろう釣魚大辞典を呼び出す。
「えーと、黄金魚、黄金魚・・・・と、げげっ、推奨スキルLV30だとぉっ、こんなの無理ゲーじゃん」
「はぁ、餌も尽きたし一度街に帰って荷物整理するかな。高級ピッケル分ぐらいは稼いだだろうし・・・」
俺はインベントリに表示された多種多様な魚を眺めながら街に向かって歩き出す。
おれがこの仮想MMO世界に閉じ込められてから2ヶ月程経過した。
ログイン直後になんかよくわからん奴がよくわからん説明をしていたが結局よくわからんかった。
はっきりしていることはこのゲームをクリアすれば俺たち、プレイヤーは元の世界に戻れるということ。
そして、この世界で死ぬと元の世界の身体も死んでしまういわゆるデスゲームって事らしい。
最初こそ張り切ってこのゲームをクリアしてやるぜって固く決意していたんだが・・・・無理だった。
だって、レベルを上げるためにはモンスターを倒さなきゃならないんだけど街の周りのモンスターってかわいい動物さんなんだぜ?
かわいいうさぎさんとかかわいいたぬきさんとかかわいい鹿さんとか・・・むりむりむり、俺にはそんなひどい事はできない。
このゲームは全年齢に向けて作られていたらしく死の表現はかなりマイルドだ。
動物を倒すと光の粒子がふわぁーと広がって消滅するだけだ。
その光景は他のプレイヤーが狩りをしていた時に幾度と無く見かけたが表現がいくらマイルドでもかわいそうなものはかわいそうだ。
じゃあ、ってことで可愛くないモンスターを倒そうって決意してちょっと遠くまで足を伸ばしてみたんだが・・・・
むりむりむり・・・・小邪鬼とか不浄犬とかこちらを見かけた瞬間に大きな牙を剥きだしながら奇声を上げながら突進してくるんだぜ?
一目散に逃げたね、俺は。
てなわけで俺はいままで冒険らしい冒険をしないでのんびり過ごしてきた。
ま、いいじゃないか、命がかかっているんだし無理に危険なことをする必要はないだろ。
安全な場所でのんびりしていれば攻略組がこのゲームをクリアしてくれるさ。
そんな他人任せで大丈夫か?
結論から言うとぜんぜん大丈夫じゃなかった。
攻略組は第1階層の城でボス部屋にさえ到達できずに全滅したらしい。
そして第2第3の攻略組が生まれそして消えていった。
今ではこのあたりでレベル上げをしているプレイヤーもめっきり減って静かなもんだ。
残っているのは俺みたいなのんびり組みと安全な街の中で暮らしている者ぐらいだ。
「おー、拓ぼうじゃねーか、いつもすまねーな」
「言い値でいいよ、適当に釣ってきたからさ」
馴染みの魚屋に行くとその店の主が満面の笑みで迎えてくれた。
年の頃は20代前半、がっちりとした体格にねじり鉢巻がよく似合う偉丈夫だ。
彼も最初は攻略組にいたようだが断念してそれまでに稼いだお金でこのお店を出したらしい。
現実世界でも実家が魚屋みたいで魚の目利きに関してはシビアだが非常に信頼出来る。
「あらー、拓ちゃんじゃない。おひさー」
後ろから不意に抱きつかれた。
ついでほっぺたに柔らかい感触が押し付けられた。
やばい。
途端に魚屋の主人、酒居一平の額に極太の青筋が出現する。
俺に後ろから抱きついているのは酒井雫、一平さんのゲーム内の嫁だ。
この魚屋 『アークガルド魚勝店』の隣にある魚料理専門店『雫』の女将でもある。
「い、いや、昨日も会いましたよね?雫さん」
「やだやだぁー、拓ちゃんとずっといっしょにいたいもん」
そういって可愛く頬をふくらませながら俺の右手を両手で抱えながら上下にすりすりしてくる。
豊かな双丘の合間に俺の右手はすっぽりと埋もれてしまう。
うわ、雫さんその動きはヤバイです。
「お、お、お、おめぇ・・・・人の嫁にナニさせてんだあ、あ、あ、あ」
怒りのあまりカタコトになった一平、その手にはいつの間にか出刃包丁が!?
「あ、あの一平さん、雫さん、自分はこれでっ、失礼しますっ」
あわてて雫さんの両胸から右手を引き抜き一目散に逃げだす。
ある程度距離をとった後で後ろを振り返ると、雫さんに抱きつかれながら一平がだらしなくにやけていた。
また、やられた・・・・、これが雫さんの無敵スキル『秘技おっぱいで魚料金踏み倒し』だ。
あーあ、ほら雫さんがこっちをみて軽くウィンクしながら舌をぺろっと出してるよ・・・
あのおっぱいの感触で高級ピッケル数本分か・・・・これは高いのか安いのか。
・・・今日も高級ピッケルが買えなかった。
明日こそはゲットしてあのにっくき鉱床にぶちかましたいものだ。
よしっ、帰って寝るか。
こんな感じで石金拓也の平凡な一日は終わった。
生まれて初めて書きました。
そして思いました。
小説家ってすごいんだなって。
このサイトでもいろいろな方が小説を書いていらしてます。
尊敬します。