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第1話7日間の命

 自分の命がたった一週間と言われたら……あなたはどうしますか?

 一年でも、一ヶ月でもない、たった一週間だったら……

 あなたは、その一週間をどう生きますか?




 9月18日


 信じられなかった、ただ学校で倒れただけだったのに、ただの貧血だと思っていたのに、先生に病院に連れていかれて、俺は、思いもしない事を聞かされた。

 すい臓ガンだった……

「よくもここまでほったらかしにしたもんだ、いくら自覚症状がほとんど無いからといっても、ひどい腰痛やらなにやらあっただろうに」

 確かにあった、貧血も今回だけじゃない、背中やみぞおちが痛み、眠れない日もあった、意味もなく下痢をしたり、ダイエットをしている訳もなく、体重が減った。

 規則正しい生活をしていた訳じゃない、自分の体調が悪いのは生活の乱れと勝手に解釈していた、俺は、自分の今までの生き方を呪った。

「家族への連絡は私がしておこう、いいね?」

 大学病院の先生が何か言っている、だがそんな話を聞いているほど俺は冷静じゃなかった。

「神童 祐君? 聞いているのかね?」

「……なんですか? 先生?」

「だから、家族への連絡は――」

「家族には……黙っててもらえますか? 心配かけたくないんですよ」

「そうか、でも必ず自分から言うんだぞ」

 ウソだった……心配かけたくない、こんな理由じゃない、ただ認めたくない、それだけだった。 

「ひとつ聞いていいですか? 俺の寿命ってどのくらいなんですか?」

「はっきり言おう、長くても一週間だ、短くて――」

 ショックだった、医師の話だと一週間は理想であり、実際は一週間もない、短くて三日、早すぎよ。


 


 9月19日


 朝だ、いつもと変わらない朝、今日も学校に行かなくちゃならない。

「祐、朝ごはんよ、早く食べなさい」

 母さんも知らない、俺の病気の事を。

「なにボ〜っとしてるのよ、早く食べないと遅刻するよ」

「ごちそうさま、俺もう行くよ」

「ちょっとしか食べてないじゃない、具合悪いの?」

「べつにそんなんじゃないさ、早く行かないと遅刻するだろう?」

 そして俺はお気に入りのスニーカーを履いて家を出た。

 

「……実感ないな、病気なんて」

 学校に向かって歩きながら色々な事を考えた。

 俺はまだ十五歳だ、やり残した事なんて山ほどあるはずだ、でも今はやりたいことなんて何もない、それが何よりも虚しい、そして哀しい。

「ゆ〜うくん、おはよう」

 後ろから思いっきり誰かに押された、不意の事に驚いてしまい、かなり情けない感じだった。

「うわっ! 葵か、おどかすなよ」

 隣に住んでいる、東条 葵、俺と同い年で小さい頃からいつも一緒に遊んでいた、つまり幼なじみという事だ。

「どしたの? 祐君? なんだかボ〜っとしてるよ」

「別に何でもないよ、急げよ、早くしないと遅刻だぞ」

「自分が一番ゆっくりじゃない! 急げはこっちのセリフだよ」

「うっさいよ、俺はいいんだよ、ほら葵、早く行けよ」

「んじゃ学校でね! バイバイ」

「おう……」

 葵、俺が死んだら悲しんでくれるだろうか? ……やめよう、考えても悲しくなるだけだ。

 学校、俺は学校行く意味あるのか? でも、サボってもする事がない。あと二日で俺は死ぬかもしれないでも何をする気にもならない。

 いつの間にか、教室に着いていた。やる事がないから窓際の一番後ろの自分の席に座る。

「どうした、貧血ボーイ、今日も朝から具合悪いのか?」

 前の席に座っている高木が一人でハイテンションに騒いでいる。

「うるせ〜よ高木、親友の体調が悪いってのに、一人騒いでんじゃね〜よ」

 高木 宗一、中学からの付き合いで世界一のダチだ。

「そういやお前さ、学園祭なにやるんだ?」

「いきなりなんだよ、学園祭? なにもしねえよ」

「やっぱりそうか、なにもしないつもりだったか。なら丁度いい、お前さ演劇やれよ」

 何を言ってるの? って感じだった。演劇? 冗談じゃない、学園祭は今日から一週間後、その時には俺は居ないだろう。それに一週間でセリフや動きを覚えられるか? 否、無理だろう。

「一つだけ言っとくぞ、一週間でなにをしろってんだ? セリフ覚えられるか?」

「そこは大丈夫だ、お前にセリフはない!」

「……は?」

「お前は居るだけでいいキャラを演じるのだ〜」

「帰れアホ、俺じゃなくてもいいじゃねえか」

「お前しかいないんだよ、ヒマなヤツはよ、みんな今年、はりきっちゃってさ、ヒマなヤツいねえんだよ」

 だからって、なぜ俺なんだ? いっそ病気のことを話して全ての面倒ごとを捨てたくなってくる。

「放課後すぐに体育館な! よろしく〜」

 ……ミスター無責任。それが中学の時の高木のあだ名だった。

 


 授業も一通り終わっていつもだったらすぐ帰るんだけど……一様、体育館にむかった。

 気が乗らない、やる気がでない、というよりセリフが無いキャラって要らないだろう。

 そんなくだらない事を考えてるうちに体育館の前まで来てしまった。この一線を越えたらもう後にはひけないだろう。さあ、どうするか……

「なにしてるの? 祐君?」

 背後からの朝に聞いたのと同じ声……葵だな。

「どうしたんだ? 葵こそこんなところでさ」

「演劇の練習だよ、あ! もしかして祐君、役者やってくれるの? そうだよね、ありがと〜、さあさあ中に入って入って」

 葵に強引に連れられて体育館の中に入ってしまった。セリフなしのキャラをやらされるのか……

「祐君さ、一つしか役空いてないけどいい? 恋人のキスを見ている通りすがりの歩行者のひとりなんだけどさ」

 なんだそれ、必要なのか? メチャクチャな人物だな、想像してたよりひどい。

「必要なのか? その役? いらねえだろう」

「必要……って言うより、誰かがケガとかした時の代役みたいなさ」

「……わかったよ、ただの代役なんだな? んじゃ、出番こねえな」

「やってくれるの?」

「いいよ、別にさ、誰もケガなんかしねえだろう」

「出番こないとは限らないんだからね! 練習にはきてよね!」

「わかったよ」

 葵との話が終わった後すぐに練習が始まった。さっき台本見て知ったが学生の恋人同士が結ばれるって話らしい。やる事がないから俺はただ劇を見ているだけだったが、俺は初めて葵が恋人役だということに気付いた。 

「この劇の最後ってさ、キスシーンで終わるんだったっけ?」

 今日、キスシーンもやるのだろうか? 何故かそんな事を俺は考えた。

「なに考えてんだろ俺……バカみてぇ、相手役誰だろ?」

 気になった、まだ相手役は練習に来ていないみたいだ。劇が半分ほどストーリーをとうして練習が休憩になった、葵に聞いてみるか。

「祐君どうしたの? 恐い顔して」

「葵? 丁度よかった! お前の相手役誰なんだ?」

「相手役? もしかしてキスのこと?」

 そう言われた途端に、なぜか恥ずかしくなった。

「高木君だよ、聞いてない? 私が高木君に祐君誘ってって頼んだんだよ?」

「そうなんだ……聞いてなかったよ」

 ショックだった、高木が葵とキスをする……なんか腹がたってきた。

 俺は葵が好きなのか? わからない、自分の事なのに。でも、葵が高木とキスをする事に妬いているのだけは自分でもわかった。

 少し風にあたろうと、ドアに手を掛けようとした時、丁度ドアが開いて人が入ってきた。

 高木だった。

「よう! 祐、やっぱ来てくれたか、ありがとよ。葵ちゃんから役聞いたか? セリフはないって言ったけどよ、結局は補欠で何かあったら祐がやる事になるんだわ、ごめんな」

「聞いた、お前、役得だな、葵とキスするんだろ?」

「あっ! それも聞いちまったのか? ごめんな、隠すつもりじゃなかったんだ」

「謝るなよ、なんか……いや、何でもねぇ」

 謝られた瞬間に、殴りたくなった。手に力が入ったが、殴るまではいかなかった。

「どうした? おい祐? 怒ってるのか?」

「なんでもない、俺ちょっと用事あるから、練習ぬけるよ? どうせ補欠だろ?」

「おい、祐!」




 俺、何してんだろ? バカみたいだ、高木に妬いて勝手に飛び出して……ガキみてぇ。

 今日はもう寝よう、体もだるくなってきた。

 一瞬でも長く生きたい、体に無理はさせられない。

 明日、高木にどんな顔して会えばいいんだろ? 意識が落ちる前にそんな事を考えた。

はじめまして、聖司です。

ここに投稿する初めての小説になりますね。

感想、アドバイスなど、あったら読者のみなさんどんどん送ってください。

よろしくお願いします。

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