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#3 出る杭は打たれる前に引っ込める

話が進まぬ…

「…やっと着いた…」


『お疲れさまっす、レンちゃん』


「だらしないぞ~、カレン」


『いや、この距離を全力疾走して息一つ乱してない三代目がタフなんだって』


やっと跳ね橋の前辺りまで来た。

丘の上から見た時は近く見えたのに、いざ向かってみると二時間も歩き通しだった。

帝都が巨大すぎて錯覚していたようだ…


「つーか、女の子に荷物持たせて先に行くんじゃないわよ!」


製薬道具なんかは壊れやすく高価なものばかりなので走って運ぶような荒い扱いはご法度なのだ。

なのにこいつときたら…!


「うひゃ~、でっけえ門だな~!」


『まるで聞いちゃいないっすね…』


「はぁ…もう慣れたわ」


『プッ、ククッ…苦労してんなぁ、お嬢』


何笑ってんだ装飾品、溶 か す ぞ?


『すいませんでしたぁ!!!』


『…アー君、離れてても念話できるようになったっすね…』


止めなかったあんたも同罪だっつの…

…?

あれ、何か違和感が。


「そーいや、何で橋に誰も居ねぇんだ?」


そうだ、人影が無いんだ。

丘の上から見た時は門から大勢の人が出入りしていた。

まだお昼前だというのに、どういうことだろう。


『あ、兵隊さんが門を通せんぼしちゃってるっす』


本当だ。

鎧を身に纏った兵士達が横一列になって門の入り口を塞いでいる。


『敵意、とまでは言わねぇが、強く警戒してやがるな。一応用心した方がいいだろうぜ』


「ふーむ、何かあったのかな」


少し装いが違うことから恐らく部隊長か何かだろう人が、兵士達に何やら指示を出している。

やはり、何か物騒な事があったようだ。


あたし達が橋の向こうからその様子を窺っていると、部隊長(仮)が此方に気付き、声をかけて来た。


「おーい!そこの君達ー!街に入るなら早く来なさーい!」


大きく手を振ってこっちに来るよう手招きしている。


「よく分かんないけど、指示に従った方がよさそうね」


あたし達は荷物を抱え、急いで橋を渡った。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 





「急かして済まない。君達の他には誰も居ないかい?」


「はい、あたし達だけです」


声をかけて来た部隊長(仮)は意外にも若い青年だった。

しかしキレのある動きは中々に練磨されていて、いかにも仕事ができる人って風貌だった。


「もしかして君たちは南から来たのかな?」


「はい、ウォッカ村という所です」


「ウォッカ村…聞いた事無いなぁ。…おっと、すまない。実は、君達に聞きたい事があるんだ」


優しい印象の部隊長(仮)は一転して真剣な表情で尋ねてきた。


「…はい?なんでしょうか」


「解る範囲で良いんだけど、ここへ来る途中何か騒ぎがあったり、強い魔獣が出たりっていうことは無かったかい?」


途中と言われても、あたし達は師匠の転移で此処まですっ飛ばされてきてるのでさっぱり分からない。


「すいません、ちょっと心当たりがないです」


「俺も」


「そうかい、いや、無いなら良いんだ。気にしないで」


気にしないでと言われても、気になるもんは気になる。


「あの、何かあったんですか?」


「う~ん、あったというか、あるかもしれないってとこだね」


「「?」」


「実は先程、南の方角から此方に向かう強い魔力が観測されたそうなんだ。それで今、情報収集も兼ねて南門の警備を強化しているんだ。万が一の事も考えて入都審査は中で行っているよ」


成程、それで橋には誰も居なかったのか…


『(レンちゃん、レンちゃん)』


突然リリーが念話で話しかけてきた。


「(何?どうかしたの?)」


『(もしかしてその魔力って、ジーくんの事じゃないっすか?走っていく時ちょっと魔力解放してたっす)』



………。



「ちょっと失礼」


あたしは部隊長(仮)に断りを入れ、メダカを捕えるヤゴの如き速さでジークの襟首をひっ掴んで少し離れた所でヒソヒソと耳打ちをした。


「ジーク、あんた暫く魔法禁止。いいわね」


「は?何でだよ」


「いいから言う通りにしなさい!あと街中で目立つようなマネはすんじゃないわよ!やったらご飯抜き!」


「?? だからなんで」


「返事!!」


「…わかった、ぜんしょする」


どうやら帝都ではこいつの魔力は危険視されるに十分なようだ。

厄介なことに巻き込まれる前に気配を抑えとかなきゃ。


「…どうかしたのかい?」


「! い、いいえ何も!オホホホ…」


『…お嬢、女々しい笑い方似合わねぇな…(ぼそっ)』


どーいう意味だコラ。


「そう…あれ、君は獣人族なのかい?珍しいね」


「え?はい、ハーフですけど…何で判ったんですか?」


耳も尻尾も出してないはずだけど。


「へ?何でって…その瞳の色を見れば誰だって判るよ」


「瞳の色?」


「…本当に知らないのかい?獣人族は皆、琥珀色の眼をしているんだよ」


へぇ、知らなかった…

村で獣人はパパ一人だったから、単なる遺伝かと思ってたよ。


「…その様子じゃ、この国での獣人族の立場も知らなさそうだから、注意しておくよ。一般の人は獣人に対して然程差別意識は持っていないんだけど、一部の貴族は蛮族扱いして蔑んだりしている。余計なトラブルを避ける為にも高貴な界隈へはあまり近付かない事をお勧めするよ」


なんと!人種差別ときたか!

まさかあたし自身がトラブルの種と為りかねないとは露ほども思ってなかった。


「それと、表通りから離れた人目の少ない路地も危険だ。俺達が厳しく検査していても奴隷目的で人を拐う輩が後を断たないんだ。特に獣人の女の子は高値で取引されていて狙われやすいから常に警戒は怠らないように。勿論、奴隷の売買は重罪だし、年々取り締まりは強化されているけどね」


う~む、来て早々都会の暗い部分を垣間見てしまったな…

幸先悪ぅ…


「あ、ああ!気を悪くさせちゃったかな!?ごめんよ!それ以外は活気のある良い街だから!」


少し気落ちしたあたしの様子に部隊長(仮)は慌ててフォローをする。


「いえ、ご忠告感謝します。何分都会は初めてなもので、そうして教えて下さると助かります」


「そう言ってもらえると此方としても助かるよ。あ、そうだ。お詫びと言っちゃなんだけど、この街の地図をあげよう。初めての人はよく迷子になるからね」


部隊長(仮)から貰った地図は、どこに何の店があるかが事細かに描かれた手書きのガイドマップだった。

イラスト付きでおススメの店なんかも紹介されている。

ラッキー!良い物もらっちゃった!


「ありがとうございます!」


「趣味で作ってるものなんだけど、お役に立てれば嬉しいよ」


うわ~、この人、めっちゃいい人だ…



「アルフレッド隊長~!ナンパしてる暇あったら、入都審査手伝って下さいよ~!」


「!!? な…!バカ!職務中だぞ!幾ら好みのどストライクだからって俺がそんなことする訳無いだろう!!」


「隊長、自滅してます」


「相変らず隊長は初心だね~」


「~!! いいからお前ら、持ち場に戻れ!!」


「「「了~解」」」



ゆるいなぁ…

こんなんで大丈夫なのか、帝都。




次回やっと帝都入りです。

このペースだとどんだけ長くなるんだコレ…

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