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#2 子の心、親知らんぷり

前話にて、ジークの指輪の名前を間違えてました。すいません。

正しくはアインです。





――ゴルド帝国・帝都バーシル




「…来たか、勇者」


「!! では、あれが再び…!」


「あぁ、聖剣が現れた」


「おお…!ついに、遂にあの恩知らずな貴族どもの鼻をあかし、再び我らの栄光を取り戻す時がやって来たのですね!」


「あぁ…その為には先ず、奴の聖剣を手に入れねば話にならん。何としても勇者を探し出すのだ!」


「「「はっ!!」」」





「…待っていろ、新たなる勇者よ。貴様が英雄の時代はこれまでだ!」










――ゴルド帝国西・ルーブ地方




「…来た」


「漸くですか。十四年…随分と待たされましたね」


「…まだ、不完全」


「判っていますよ、焦りは禁物です。ですが、接触自体は早くても良いかもしれませんよ? 仲良くなるに越したことは無いんですから」


「…期待、しない方がいい」


「彼以外、誰に期待しろというんです? ンフフッ、これからどれほど成長してくれるのか、楽しみですねぇ」


「…笑い方、気持ち悪い」


「ガーン!? ひ、酷い!この完璧パーフェクト紳士に向かって気持ち悪いだなんて、あんまりです!」


「…鬱陶しい」









―魔界・ローグ魔国




「…!? この波動…まさか、イース様の…!」


「如何なされました、閣下」


「あ、いや、何でもない。ミーティングを続けてくれ」


「はっ」


「(ついにこの時が来たか…。…拙い!今奴らに御子息の存在を勘付かれでもしたら、この国は再び…!こうしちゃ居れん!!)諸君、すまない。急用を思い出した。エニル補佐、あとは頼む」


「え!?ちょっ、将軍閣下!?」







――大陸東・光の高地/白竜の里




「白竜王様! 白竜王様!!」


「何じゃハーヴェス、朝っぱらから騒々しい。お前の甲高い声で一度呼べば太陽にも聞こえるわい」


「暢気なことを言ってる場合では御座いません!こ、これをご覧ください!」


「何じゃ電報か?…ふむ、火竜王殿からか。…………な、何じゃと!!?これは真か!」


「はい、既に紅魔王殿にも確認済みです」


「…ええい!あの小娘は一体何を考えておる!争乱の種を自ら野に放つなど、あ奴は世界をひっくり返す気か!……あぁ目眩が」


「白竜王様…」


「はぁ…ワシ一人で憂いておる場合ではないな。カクシン!」


「はっ」


「サスケ!」


「はっ」


「全竜王に通達、緊急竜王会議を行う!!」


「「ははっ!!」」










――???




「ふーん、自分から出てきちゃったんだ。てっきり一生引きこもってるのかと思ってたよ」


「はい。ですが、まだ完全に特異点としての力に目覚めたわけではないようです」


「いや、それは時間の問題だよ。〝彼ら〟が居るなら特に、ね」


「では、我々はどの様に」


「んー、暫くは待機しといて。彼にはまだ〝試練〟は早そうだ」


「御意」






「ふふふ、今度はきっと、今まで以上の素晴らしい花を咲かせるに違いない。あぁ待ち遠しいなぁ」










◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 






「…−−−ぁぁぁぁあああああ痛ぁ!!」


『とーちゃくっす♪』


ゲートに放り込まれたままの恰好で落ちたあたしは、埃まみれの床に思い切りお尻をぶつけてしまった。


「ゲホッゲホッ! く~っ、いててて…」


『大丈夫っすか、レンちゃん?』


「う、うん。ありがとうリリー。にしても何ここ?凄い埃…へくしょん!」


暗くてよく見えないが、どうやらどこかの古小屋の中に出たようだ。


「う~…、あれ、ジークは?」


小屋の中には居ないようだ。


『この外に居るようっすよ?右の壁に扉があるっす』


確かに右方に扉の隙間らしき光が見える。手探りで足元に注意しながら壁を伝っていくと、取っ手に手が掛かった。

幸い鍵は掛かっておらず、すんなり外へ出ることができた。


「っ、 ………!」


急に明るいところへ出た所為で目が眩むが、徐々に見えてきた景色に思わず息をのんだ。


「・・・綺麗…」


そこは、遠く果てまで広がる緑の丘の上だった。

せまい故郷から殆ど出た事の無かったカレンにとって、その雄大な景色は一生忘れられそうにない、感動的で、美しい光景であった。


「おい、カレン!見ろよあれ!」


茫然としているあたしの左方から鞄を背負ったジークが何か指をさして叫んでいる。


「……! すごい…!」


そこにあったのは、とてつもなく大きな街だった。

周囲を高い壁と堀で円く囲まれていて、中の色鮮やかな街並の中央には城のような大きな建物が見える。

此処からは全体像は見えないが、均等な感覚で跳ね橋と門が見受けられることから察するに、東西南北とその間に各々、計八つの入り口あるようだ。

そこからは、故郷では見たことのない数の人間と荷馬車が絶え間無く行き来していた。


「大きな街ね…」


『つーか、帝都だなありゃ』


帝都!?

あれが、帝都バーシル…!

通りででかい訳だ。


「カレン!早く行ってみようぜ!」


たしたし、と足踏みして急かすジーク。

見たことの無い巨大な街にワクワクを隠せないようだ。

実はあたしも内心、初めての都会に興味津々だ。

はやる気持ちも分かるが、その前に。


「ちょっと待って。先に荷物の確認をしましょう。所持金も分からずに動けないわ」


ジークから大きな鞄を受け取り、中身を開けた。


中には衣類と少量の携帯食、ナイフなどのサバイバルキット一式、医療道具や製薬道具、お金、そして一通の手紙が入っていた。


それには達筆な字で〝カレンへ〟と書いてあった。


「……パパとママからだ…」


きれいに折り畳まれた書面を拡げると、仄かに薬草の香りがした。




『カレンへ。

この手紙を読んでいるということは、もう帝都にいるのでしょうね。

急な話に驚いているでしょう、黙っていて御免なさい。幼い頃から、治癒魔法や製薬技術を貴女に学ばせたのは、この日が来たときの為です。私の跡を継いで薬剤師になると言ってくれた貴女の気持ちを裏切ることになってしまい、申し訳なく思っています。

ですが母と父は、貴女に広い世界を知ってほしいのです。色んな所へ行き、色んな人に出会って、貴女の歩むべき道を自らの手で探し出して思うまま、自由に生きて貰いたい。それが私達の願いです。

道中、苦しい時も辛い事もあるでしょう。逃げ出したくなる事もあるでしょう。

それでも負けないで下さい。貴女は、私達の誇りなのだから。』

   愛しい娘へ  ~ レイン=ハート ジョン=ハート ~



「………」


パパ…ママ…


はぁ…誇り、ですか。

まったく、ズルいなぁ。

こんなの読まされたら、腹括るしかないじゃない。









『追伸 ちょっと二人で温泉旅行に行ってきます(はぁと)』



「…本命はこっちかよ……orz」


『仲がよろしくて羨ましいっす~♪』


この緩んだ涙腺どうしてくれんだ…

はぁ…何にせよこうなった以上、こいつが面倒を起こして目立つような事態をどれだけ回避することが出来るかがあたしの生命線だ。

ぃよし!なんとしても生き延びてあたしの夢、平穏無事な生活を手に入れるぞ!


『えらく夢のない夢っすねぇ…』


あたしにとっちゃ遠い夢なのさ…(ほろり)


『…苦労してるんすねぇ…』




「なんだ、武器とか入ってねぇのか?(ガサゴソ)」


いつの間にやらジークが携帯食を齧りながら鞄を漁っていた。

どうでもいいが、非常食って何で買ってすぐに食べたくなるんだろう。


「うん、そうみたいね。思ったよりお金が多いし…、これで買え、ってことかしら」


半分を宿代として、諸々の出費を考えると買えるのは精々中古の安物だろう。


『武器なら俺達がいるぜ?なぁ?』


『ハイっす!結構すごいんすよ!?』


「そういや、母ちゃんが〝意志ある武器〟とか言ってたな。どういう事なんだ?」


『ああ、それはだな…』


うーん、話が長くなりそうだ…

現状を考えると、そういう話は後回しにした方がよさそうだな。


「はいちょっと待った。とりあえず今は帝都に行って、拠点となる宿を確保しましょう。お互いの事を話し合うのはそれからでも遅くは無いでしょう?」


これからどうするか、何をするか、どう生活していくか。他にも話す事は山積みだ。


「それもそうだな! んじゃ、帝都に向かってしゅっぱーつ!」


『『オー!!』』


「だぁ~もー! 一人で勝手に行くな~!」






ちょっと短いですがキリが良いのでこの辺で。

書きたい話がたくさんあるので早く話を進めたいです。

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