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#1 サラブレッド、野に放たれる

ほぼプロローグな第一話です。

7/22 誤字修正  カイン→アイン










「えーと、つまりどういうことだってばよ?」


いかんいかん、寝不足で幻聴が聞こえる。


「じゃから言うとろうが。儂が魔王で、アレクが勇者じゃと」




ふむふむ、師匠が魔王で、旦那のアレクさんが勇者で、ジークはその子どもと。




・・・・・・・・・・





「んなんじゃそりゃあぁーーーーーーーーーーー!!!!!」




□ □ □ □ □ □ 






― 時は少し遡る。





「カレンちゃん、さっきイースさんが家に来るように言ってたわよ?」


「…師匠が?」


寝不足気味に朝食を摂っていると、ママが師匠からの伝言を伝えてきた。


「カレンちゃん達、今月誕生日でしょう?何かプレゼントがあるそうよ」


あたしとジークは誕生日が近いことで、一緒にお祝いされることが多い。

にしたって、こんな朝っぱらからプレゼントってなんだろう。


朝食を手早く片付け、お隣のジークの家に向かった。





「行ってきまーす!」


「「いってらっしゃい」」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 




「…もう、そんな時期なのだな」


「大丈夫よ、あの子なら。きっと何があっても乗り越えていくわ。私とあなたの子だもの」


「そう、だな。…あの子がいないと、この家も寂しくなるな」


「…ええ、そうね」


「…母さん、牛乳おかわり」


「はい、あなた」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 






「おはよーございまーす!」


「お早う、カレンちゃん。…昨日ちゃんと寝たかい?」


「あれ?アレクさん!何時こっちに帰って来たんですか?」


アレクさんは師匠の旦那さん。ジークのお父さんだ。

普段は村の外でよく分からない謎の仕事をしている。


「今朝方の夜明け前だよ。久しぶりだね。しばらく見ないうちにまた綺麗になったね」


「もう、アレクさん。お世辞はよしてくださいよう」


アレクさんみたいな超絶イケメンに、白い歯を光らせながら褒められるとさすがに照れてしまう。

ジークとは見た目瓜二つなのに何だろうこの差は。


「あははは、カレンちゃんは自分にもう少し自信を持ちなよ。あ、そうそう。イースー、カレンちゃんがきたよー」


アレクさんは二階に居るであろう師匠に声をかける。

しかし聞こえるのは返事ではなく喧騒だった。



『いい加減に起きんかジーク!』


『まだ眠ぃよ~…』


『今日は大事な話があると言うとろうが!』


『別に大事じゃない。俺が決めた』


『勝手に決めるな!いいから起きんかーい!!!』



ズガァーーーーン!!




…二階からジークが床を突き破って落ちてきた。




「いててて… あれ、父ちゃん帰ってたのか。おかえり」


「ただいま。相変らずだね、我が家は」


「何で嬉しそうなんですか…」


「あ、カレンおはよう」


「はい、おはよう。あんたもいい加減懲りなさいよ。その内家が無くなるわよ?」


「全くじゃ」


階段から師匠が降りてきた。


「いや、壊した本人が言いますか」


「細かいことは気にするな。それより、主らに大事な話があるのじゃ」


まぁ座れ、と促され居間の椅子に座った。





「実はの、儂は魔王なんじゃ」



・・・・はい?


「んで、旦那のアレクは勇者じゃ」


「あはは、実はそうなんだ」



・・・・・・・・・・・はい???





冒頭に戻る。





□ □ □ □ □ □ 



「落ち付いたか?」


「え、えぇ。まぁ」


んなこと聞かされて落ちつけるかぁ!

まてまて、現代の魔王と勇者は15年前に戦争で死んだはず!

でもそれが生きていて、子どもをこさえて今はあたしの師匠と。

なるほどそうゆうことか……て受け入れられるかァ!!

人魔戦争は二人が相打ちで死んだってことでやっとこさ終戦したのよ!?

こんなの世間にばれたらどうなるk・・・・!?

そんな大事なことをあたしに打ち明けたということは…


「なんかヤバいことに巻き込まれたァァァァァァァァァ!!!!(ガタッ)」

 

「ええい、喧しい。とにかく座れ。本題はこれからじゃ」


「まおーとゆうしゃって、昔話のあれか?」


「僕は二代目勇者で、イースはお話の魔王の末裔だけどね」


ジークはふ~ん、とまるで気にした様子がない。

そして未だテンパってるあたしを無視して師匠は話を続けた。


「んでじゃ。大体察しはつくであろうが、妾とアレクより、ジークの存在はこの世にとって非常に危険なものじゃ」


はっ、と気付いた。

魔王と勇者は世界に二つ限りの〝特異点〟だ。

その間に生まれたジークの力は、将来確実に世界を動かすものになる。

この力を利用しようとする輩は必ず出てくるだろう。


「幾らこの村が田舎で、儂が認識阻害の結界を張っているとはいえ、強大すぎる力はいずれ世にばれる。ならば、ここに永く留まるのは好ましくない」


…確かに。

あたしはこの静かな村が大好きだし、ママとパパを争いに巻き込むのは嫌だ。

でも、それだと・・・


「ジークを、村から追い出すんですか?」


それはあんまりだと思う。

しかし師匠はニヤリと笑い、首を横に振る。


「追い出すのではない。解き放つのじゃ」


「?」


「言うたじゃろう、いずればれると。村に居ようが、外に居ようがそれは変わらん。じゃったら、此方から堂々と世間に登場させてみようと思ったのじゃ」


横のアレクはやれやれと言った顔をしている。


「どういうことです?」


あたしが問うと、師匠はカッと目を見開き、言い放った。



「ジーク!カレン! お前達はこれから冒険者となり、世界を思う存分掻き回して来るのだ!!」






…は、


「はああああああああああ!!!?」 

「うおおおおおおおおお!!やったー!!!」


「何もこっちが掻き回さなくてもいいと思うんだけど…」


「胸糞悪い奴らに振り回されるより、儂らがそ奴らを振り回してやる方が爽快じゃろう?くっくっく!」


え、そんな理由!?

いやそれより!


「ちょ、ちょっと待って下さい!何であたしも!!?」


「お主、どうせジーク一人を外に出すのが嫌で付いてくるじゃろう? この世話好きめが」


「うっ… た、確かにコイツが世間で何をやらかすか考えただけで気が気でないですが…」


「じゃからフォロー役として行って来い。ジョン達には既に了承を得ておる」


! そっか、それでパパ達どこか寂しそうだったんだ…

っていやいや!普通本人の意見を先に聞くもんでしょう!?


「母ちゃん!オレ、ホントに冒険者になっていいのか!?」


「おう、良いとも。存分に暴れてこい」


「そういえばジークは冒険者に憧れてたね。頑張っておいで」


「応!」


ジークはやる気満々に応える。

あああ、なんでこんなことに…

あたしは平凡に、平穏に生きたいのに…


「まぁそれはさておき、お主らにプレゼントじゃ。受け取れ」


さておけねェよ。

…あぁそういえば、そんな用件だった。忘れてた。


師匠からくすんだ藍色の小さな箱を受け取ると、中にはピンクパール色のシンプルな指輪が入っていた。

ジークも同様の、白金の指輪だった。


「? 師匠、これは?」


「いいから、着けてみい」


言われるまま、あたし達は右手の中指に指輪をはめた。


「「!」」


すると指輪が淡く光りだし、二人を包み込むと、暖かい光が体に染み込むように消えていった。







『っかぁ~~~~~~!! やっと出られたぜぇ!!』


『待ちくたびれたっす~~~♪』


「「!?」」


突然、指輪から異様にテンションの高い男と女の声が聞こえた。


「師匠、何なんですかこの指輪!?まさか精霊憑き!?」


「うお~!なんだこれ、おもしれ~!!」


『おうおうてめぇら、初対面の相手に挨拶も無しとは、どういう教育受けてんだ?』


『アー君、指輪がいきなり喋ったら普通ビックリしちゃうっすよ?』


『あー、そりゃそうか。んじゃ気を取り直して。俺の名前はアイン。ヨロシクな、三代目!』


『アマリリスっす! リリーって呼んで下さいっす♪』


ジークの指輪はアイン、あたしのはアマリリスというそうだ。

あたし達は簡単に自己紹介を済ませて師匠に事情を聴いた。


「そ奴らは意志ある武器、魔道具じゃ。詳しい事は本人達に聞け。知識も豊富じゃし、困ったことがあれば相談すると良い。伊達に千年生きておらんからの」


千年!?

こりゃまたエライ骨董品だなぁ。


『レンちゃん、骨董品は酷いっす~』


「へ?もしかしてあんた、あたしが考えてる事、分かるの?」


『あんたじゃなくてリリーっす! 表面的な思考なら分かるっす!頭の中で念じてくれれば言葉にしなくても意思疎通も出来るっすよ!』


リリーは可愛らしい声で元気に答える。


ふーむ、それは便利だ。

指輪に話しかける姿なんて、明らかに不審者だし。


「では、そろそろ出発といくかの」


唐突に、師匠は床に〝転移門ゲート〟を開けた。


「え!?ちょ、そんないきなり…」


「うっしゃ、何時でも良いぞ!」


「必要な荷物は向こうに置いてある。少額ながら路銀もある。当面はそれで何とかせい」


「イヤなんとかって、とりあえず心の準備を…」


「カレン!先行ってるぜ~!」


『あっはっはっは!三代目は行動力がハンパねぇな!こりゃ楽しくなりそうだ!』


おろおろするあたしを尻目に、ジークはとっとと転移門の中へ飛び込んでいった。


「ああそうじゃ、ほれ」


師匠にメモをちぎったような小さな紙切れを渡された。

それには小さく、『免許皆伝 カレン=ハート』と書いてあった。


「ちょ、こんな大事なもん、もうちょっと格式ばって渡してくれません!?」


「別にいいじゃろ、飽くまで仮の免許皆伝じゃし。いいからとっとと…行って来い!」


「ちょ、うわ、押さなああああああああああ・・・・・」


『行ってくるっす~♪』







こうして、あたし達の旅は始まった。






会話率高いなぁ…

もう少しバランス取れるようにしたいです。

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