始まりの寂しさ
始まりはきっと寂しさだった。
あるいは、果てのない空間にただ唯一の存在であり続けることの恐怖だったのかもしれない。
誰か、何か、一つでも己の存在を認め支えてくれるならばと願ったのかもしれない。
<全てのものに対を与えよう>
欠けることなくお互いに引き合う存在は、この空虚な寂しさも満たすだろう。
始まりはそんな寂しさだった。
世界を対に迎えて、一つの歴史が動き始めた。
紡ぐ歴史の舞台はディルバ島。
世界の中心にして、魔力の中心。二つの国が存在する、ある意味完璧な対の島。
太陽の神を冠するブライトレット王国。
月の女神を冠するリヴァー神竜国。
神の在った時代を終えてなお、その世界は神の存在を知っている。
人の身には二つの流れが存在した。赤の流れ、すなわち血流。黒の流れ、すなわち魔力。
神との契約を糧に魔力を行使する人々が居た。
人並みならぬ魔力を宿した身体、強靱な精神を有すれば神との契約も可能になるのだ。
そうした者達を人は魔術師と呼ぶ。
そして紡がれる歴史は、神が去り魔術士の生きる時代。
後に、「竜の眠る島」と謳われることになるディルバ島の大きな転機であった。