毎日もらえる“ログインボーナス”。 それが現実世界で発生したら——? 外れ扱いの能力を持った高校生が、ゆるく世界を救っていく…?!
ある日突然、現実に現れた“ログインボーナス”。
しかも手に入ったのは——石ころ。
……なのに、世界はそれで壊れ始めた。
短編なのでサクッと読めます。ぜひ最後までどうぞ。
第一話
朝起きたら、視界の端に見慣れないウィンドウが浮かんでいた。
『ログインボーナスを受け取りますか?』
「……は?」
寝ぼけてるのかと思って、頬をつねる。普通に痛い。
ウィンドウは消えない。むしろ、ちょっとキラキラして腹が立つ。
とりあえずタップする仕草をすると、ウィンドウが弾けた。
『本日のログインボーナス:石ころ ×1』
「いらなすぎるだろ!」
思わず声が出た。同時に、手のひらに“コツン”と軽い感触。
本当に石ころが現れた。
「……マジかよ」
これが夢じゃないなら、やばい。
いや、やばいけど——しょぼい。
その日、学校に行っても頭の中はそれでいっぱいだった。
もしこれが毎日続くなら? 石ころじゃなくて、もっとすごいものが出たら?
帰り道。空が妙に赤かった。
嫌な予感って、だいたい当たる。
駅前のスクランブル交差点で、人がざわついていた。
見上げると、空に“裂け目”みたいなものがある。
「なんだよ、あれ……」
次の瞬間、そこから“何か”が落ちてきた。
黒い影。四足。やけにでかい。
地面に叩きつけられて、アスファルトがひび割れ
悲鳴。パニック。スマホを構えるやつ。逃げるやつ。固まるやつ。
俺は——なぜか、ポケットの中の石ころを握っていた。
「いや、これでどうしろってんだよ……!」
影はゆっくりと顔を上げた。目が光る。
完全に“人間の敵です”って顔してる。
そのとき、またウィンドウが出た。
『ログインボーナスの使用を確認:石ころ ×1』
「使用……?」
ダメ元で、投げた。
コツン。
当たった。
そして——
“ズドンッ!!”
ありえない衝撃音と一緒に、影の体が吹き飛んだ。
「……え?」
静まり返る交差点。
黒い影は、ピクリとも動かない。
ウィンドウが、やけに楽しそうに光る。
『クリティカルヒット!』
「いや聞いてないって!」
石ころ一個で、化け物が倒れるとか、どんなバランスだよ。
でも、これで分かった。
この世界はもう、普通じゃない。
そして——
俺のログインボーナスは、たぶん“外れじゃない”
第二話「石ころはチートでした」
交差点は、まだ静まり返っていた。
さっきまで騒いでた人たちも、今は誰も声を出さない。
ただ一斉に、俺と——倒れた“あれ”を見ている。
「……俺、やばくね?」
小声でつぶやく。
いやほんとに。いろんな意味で。
警察とか来たらどうする?
説明できる? 無理だろ。
そのとき、またウィンドウが出た。
『討伐報酬を受け取りますか?』
「え、なにそれ」
反射的に“はい”を選ぶ。
『報酬:小さな光の欠片 ×1』
今度は石ころじゃなかった。
手のひらに、ほんのり温かい光の粒が浮かぶ。
ビー玉より小さいくらいのそれは、ゆっくりと俺の中に溶け込んだ。
「うおっ!?」
一瞬だけ、体が軽くなった気がした。
『ステータスが微増しました』
「ステータスって何!?」
ツッコミが追いつかない。
そのとき、遠くからサイレンの音が聞こえてきた。
赤色灯が近づいてくる。
「……やばい、逃げよ」
俺は人混みに紛れて、その場を離れた。
家に帰って、ドアを閉めた瞬間。
「はあああああ……」
一気に力が抜けた。
ベッドに倒れ込む。
「なんなんだよ、今日……」
スマホを見る。SNSは大騒ぎだった。
『謎の怪物出現』
『高校生っぽい人が一撃で倒した?』
『CGじゃないの?』
「バレてるくね……?」
いや、“っぽい”だからセーフか?
顔までは映ってないっぽい。たぶん。
安心したのも束の間、またあのウィンドウ。
『本日のミッションを確認しますか?』
「ミッションまであるのかよ……」
半分やけで開く。
『ミッション:モンスターを1体討伐せよ
報酬:ログインボーナス強化』
「……強化?」
ログインボーナスが、さらに良くなるってことか?
でも——
「もうモンスターとか出てくんなよ……」
そう思った瞬間。
ドンッ、と遠くで何かが崩れる音がした。
嫌な予感しかしない。
窓を開けると、夜の街の向こう。
また、空が歪んでいた。
「……マジかよ」
スマホが震える。
通知:『未確認生物、各地に出現中』
「……行くしかない、のか?」
正直、めちゃくちゃ怖い。
でも——
あのときの“感触”が、頭から離れない。
石ころ一つで、あれを倒した感覚。
それに、ちょっとだけ思ってしまった。
「……俺、強くなれるんじゃね?」
自分でもびっくりするくらい、単純な理由だった。
でも、それでいい気がした。
俺はポケットに手を入れる。
もちろん、もう石ころはない。
だから——
「明日のログインボーナス、頼むぞ」
そうつぶやいて、夜の街へ走り出した。
第3話「ログインボーナスの正体」
夜の街は、さっきまでの日常とは別物だった。
遠くで何かが壊れる音。
悲鳴。サイレン。
「ほんとに出てんのかよ……」
角を曲がった瞬間、それはいた。
今度は昼のやつより小さい。
犬くらいのサイズ。でも、目が赤く光ってる時点でアウト。
「……来るか」
じり、と距離を詰めてくる。
俺は何も持ってない。
石ころもない。武器もない。
「詰んだ?」
そう思った、そのとき。
『特別ボーナスを支給します』
ウィンドウが弾ける。
『石ころ ×3』
「増えとる!?」
手の中に、さっきより少し重い石が現れる。
「……いけるか?」
一匹が飛びかかってきた。
俺は、とっさに投げる。
コツン。
次の瞬間。
“ドゴンッ!!”
一匹が吹き飛び、壁にめり込んだ。
「やっぱ強い!」
残り二匹。
怖いけど、もう逃げる理由はなかった。
「来いよ!」
二発目。三発目。
連続で命中。
全部、同じように吹き飛んだ。
静寂。
「……終わり、か?」
『ミッション達成』
ウィンドウが、今までで一番強く光る。
『ログインボーナスが進化しました』
「進化……?」
次に表示された文字を見て、息が止まった。
『ログインボーナス:現実改変(小)』
「は?」
石ころじゃ、ない。
説明が続く。
『1日1回、任意の“些細な結果”を現実に発生させることができる』
「……つまり?」
石ころが強かった理由が、ようやく分かった。
あれは“たまたま当たった”んじゃない。
“当たる結果にした”んだ。
「……チートすぎだろ」
そのとき、空が大きく裂けた。
今までで一番、でかい。
そこから現れたのは——
昼のやつより、何倍も大きい“本物”。
「……ラスボス感すごいな」
足が震える。
でも、逃げたら終わる気がした。
ウィンドウが、静かに浮かぶ。
『本日のログインボーナスを使用しますか?』
俺は、少しだけ考えて——
「……やるしかねえだろ」
“はい”を選んだ。
最終話「ログアウトのない世界で」
巨大な影が、ゆっくりとこちらを見る。
圧だけで、体が動かなくなりそうだ。
「……落ち着け」
使えるのは、1日1回。
失敗したら、終わり。
“些細な結果”しか変えられない。
「些細、些細……」
石ころのときは——当たった。
それだけだ。
なら。
「……これでいい」
俺は、目の前の化け物を見据えて、呟いた。
「“あれが、たまたま転んで隙を見せる”」
それくらいなら、“些細”だろ。
一瞬の沈黙。
そして——
ドンッ!!
巨体が、バランスを崩した。
「今だ!」
近くにあった、適当な破片を掴む。
ただのコンクリートのかけら。
「当たれ!」
投げる。
コツン。
でも——
“ズガアアアアアッ!!”
とんでもない衝撃で、巨体が吹き飛んだ。
地面を削りながら、動かなくなる。
しばらくして。
完全に静かになった。
「……勝った、のか?」
『討伐完了』
ウィンドウが、最後に表示される。
『チュートリアル終了』
「チュートリアル!?」
思わず叫ぶ。
すると、続きが出た。
『この世界は、段階的に変化していきます
引き続き、生存をお楽しみください』
「お楽しみって……」
思わず笑ってしまった。
とんでもない状況のはずなのに。
でも、不思議と——
悪くない、と思った。
空の裂け目は、まだ消えていない。
たぶん、これからも色々起きる。
でも。
「ログアウトは、できないんだろ?」
ウィンドウは答えない。
ただ、次の日の表示だけが静かに出る。
『次回ログインボーナスまで:23:59:59』
「……毎日かよ」
ため息をついて、空を見上げる。
怖さもある。
でも、それ以上に。
「……まあ、やるしかないか」
少しだけ、ワクワクしていた。
ログインボーナスで生きる世界なんて、聞いたことない。
でも——
だからこそ、面白い。
俺は歩き出す。
終わりじゃない、始まりのほうへ。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
はじめて「小説家になろう」に投稿した作品なので、少しでも楽しんでもらえていたらめちゃくちゃ嬉しいです。
今回の話は「もしログインボーナスが現実にあったら?」という軽いノリから考えました。
石ころが実はチートだった、というギャップを楽しんでもらえていたら最高です。
短くサクッと読めるように、テンポ重視で書いてみましたがどうだったでしょうか?
もし少しでも「続きが気になる」「面白かった」と思っていただけたら、
ブックマークや評価、感想などいただけると今後の励みになります!
また別の作品や、もしかしたらこの話の続きも書くかもしれませんので、
そのときはぜひよろしくお願いします!
本当にありがとうございました!




