半額弁当と、一通の遺書(2)
テーブルの上には空になった弁当容器と、飲み干したビールの空き缶。
半分ほど中身の残った発泡酒の缶を揺らしながら、私は「んー……」と大きく伸びをした。
いつからだろう。人生に希望なんて持たなくなったのは。
母に勧められるまま地元の高校へ行き、名前も思い出せない担任に「お前は文系だから」と言われて選んだ大学を卒業した。
それなりに楽しかったはずの四年間。けれど、今も連絡を取り合う友人は、幼馴染の結衣くらいのものだ。
私は、他人と深く関わることをどこかで恐れている。
心を許して、誰かを自分の中に入れてしまえば、それを失った時に耐えられなくなる。そんな予感があった。
結衣に電話して、今日の「警察の訪問」を話そうかとスマホを手に取ったが、結局、画面を点けないままテーブルに戻した。
……こんな時に誰かに甘えられる性格なら、こんなに孤独な夜を過ごしてはいなかっただろう。
ふと、壁の時計に目をやる。
23時59分。
あと一分で、今日が終わる。
明日になれば、あの警察の言葉も、知らない男の名前も、全部リセットされていればいいのに。
日付が変わる。そのわずかな静寂の中で、カバンから覗く「遺書」の封筒が、白く浮かび上がって見えた。
まるで、私に開けられるのをじっと待っているかのように。
「…………どうせ、寝られないし」
私は逃げるように発泡酒を煽り、震える手でその封筒へと指をかけた。
カチッ。
時計の針が、0時を告げた。




