第十七話:夜の招きと、再会の地図
冷えた体を温めるために、お風呂に入ろうか……。
そう思って立ち上がった瞬間、カバンの中でスマホが短く震え、メッセージの受信を知らせた。
取り出して画面を覗き込む。
「……凪か」
そこには、彼女らしい簡潔な言葉が並んでいた。
『いま、みんなで集まってるの。栞もおいでよ』
メッセージの下には、一軒の店の地図が添えられている。民宿からはそれほど遠くない。ここからなら、歩いてでも行けそうな距離だった。
「どうしようか……」
迷う私の指先を急かすように、続けて二通目のメッセージが入る。
『拓海と瑞穂も、栞に会いたがってるよ』
懐かしい名前。あの日、あの学校の教室で、確かに一緒に過ごした仲間たち。
漣君があの日からずっと私を想っていてくれたのなら、彼らもまた、私を「あの頃の栞」として待ってくれているのだろうか。
「……行って、みようかな」
私は手早く身支度を整えると、受付にいたおばちゃんに声をかけた。
「おばちゃん、少し出かけてきます。」
「あら、出かけるのかい? 気をつけて行ってきな。夜道は暗いからね」
おばちゃんの温かな送り出しに背中を押され、私は夜の岬町へと踏み出した。
手の中のスマホに表示された地図は、まるで過去と現在を繋ぐ道標のように、暗闇の中で静かに光を放っていた。




