表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
拝啓 深山栞様〜遺書から始まるラブストーリー〜  作者: autofocus


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/25

第五話:季節外れの転校生と、錆びた鍵

六月の終わり。

 梅雨の湿り気を帯びた風が教室を抜ける中、季節外れの転校生がやってきた。

「今日からこのクラスの仲間になる、瀬尾せお れん君です。お父さんは時計職人で、仕事の都合でこの岬町に来られました。みんな、仲良くするように」

 担任の成瀬先生の言葉に、凪が「はーい!」と真っ先に両手を挙げて愛想を振りまく。

 教壇に立つ彼は、うつむき加減に、消え入りそうな声で「……瀬尾漣です。よろしくお願いします」とだけ言った。


 私の席は教室の一番後ろの窓際。ちょうど隣が空席だった。

「じゃあ、深山さんの隣に座ってちょうだい」

 促されるまま、彼は私の隣に腰を下ろした。

「深山栞です。よろしくね」

 転校生を気遣って、精一杯の笑顔で声をかけた。けれど、彼は返事ひとつせず、ただじっと窓の外の海へ視線を投げていた。

 それが、私と彼の始まりだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……栞!? ちょっと、聞いてるの?」

 不意に現実の声が割り込み、凪が私の顔を覗き込んできた。

「あ……うん。聞いてるよ」

「もう、ぼーっとしちゃって。はい、連絡先交換しよ」

 凪は私の返事を待たず、もたついている私の手からスマホを奪い取ると、慣れた手つきで勝手に自分の連絡先を登録した。


瑞穂みずほとか拓海たくみのこと覚えてる? みんな栞ちゃんに会いたがるだろうな〜。私、これからバイトだから行かなきゃ。また連絡するね!」

 嵐のような騒がしさを残して、彼女は軽やかに手を振って去っていった。


 一人残されたベンチで、どっと重い疲れが押し寄せる。

 せっかく、何年もかけて心の奥底に閉じ込めてきたのに。

 ようやく、この町の潮の匂いも、彼の名前も忘れられそうだったのに。

 

 私は震える指先で、カバンの中にある銀色の腕時計に触れた。

 凪が言っていた、「あいつ、栞ちゃんのこと好きだったんじゃなかったっけ?」という言葉が、呪文のように頭の中で反芻はんすうされる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ