表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

逃げてしまえばよかった!

作者: ずぅしぃ
掲載日:2026/01/25

初めて投稿します。

右も左も分かりません。

BLの意図はありません。

最低限のマナーを持ってお楽しみください。

「逃げてしまえばよかった!」

お前はそうやって、弾けたように笑った。


いつからだろうか。いつもと同じような朝を迎え、憂鬱な気持ちを抱きながら名残惜しくベットを離れる。そのまま顔を洗って、コーヒーを入れる。適当に焼いたトーストを齧り、ぼんやりとした頭で窓の外を見やった。生憎今日は曇りのようだ。いっそのこと晴れてくれれば気持ちも楽なのに。そんな時、スマホが短くなった。流れるように着信源を見ると、会社が爆発…なんてことは無く、見慣れた友人のアイコン。「今からドライブ行かん?(*^^*)」相変わらず騒がしい奴だ。腹立つ顔文字と共に、なんとものんきなお誘いだ。今から?仕事でそれどころでは無い。残念ながらこっちはそんなお気楽じゃないんだと、内心毒づきながら返信を考える。「お前暇なのな」「暇ってなんだよヽ(`Д´)ノ」「その顔文字どうにかならんのか」「可愛いでしょ(*^^*)」「とりあえず、今日は無理。仕事あるから。」「あー、それなんだけどさ…」

急に歯切れが悪くなった文面に、手が止まる。

「今日、世界終わるんだって」

は?脳の処理が追いつかない。何を言ってるんだこいつは。ついに頭がおかしくなったのか。

「何言ってんの?」「本当だよ」「お前ついに頭おかしくなったん」「違うよ!!本当に、世界が終わるんだ」

こいつはつまらない嘘を言うようなやつじゃない。だから余計に分からなくなった。明日世界が終わる?

「今日の夕方、でかい隕石がここに堕ちてくる」

「みんな死ぬ。だから、今日くらい全部投げ出して遊びに行こうぜ」

もしもそれが本当なら。今日、隕石が堕ちて地球が終わるなら。

「いいよ」

最後くらい、投げ出していいと思った。


送られてきた集合場所に行くと、さっきまで話してたあいつが待っていた。清々しい顔で、俺を見ると笑った。

「本当に来た」

「お前が誘っといてよく言う」

「はは!よっしゃ、じゃあ行こうぜ」

車に乗り込むと、俺とあいつは出発した。意気揚々と鼻歌を歌うのを見て、ひとつ質問を投げかける。

「どこ行くつもり?」

「海。とりあえず北!」

「北ぁ?」

「運転疲れたらお前もしろよ」

「はいはい。」

気温はそんなに高くない。けれど寒すぎないで、ちょうどいいくらいだ。高速に乗るのに合わせて開けていた窓を閉めた。平日だから車は少ない。あいつはずっと上機嫌で、おもむろにつけたラジオは午前8時を知らせた。


「お前、俺の事疑わなかったん?」

「え?」

「もっと疑われるかと思ってた。それか無視されるか。」

どれくらい走っただろうか。そろそろ限界だとあいつが言うから立ち寄ったサービスエリア。買ってきたコーヒー片手に、あいつがそんな事を聞いてきた。

「…別に、疑ってない訳じゃない。けど、お前がつまんねぇ嘘つかねぇの知ってるから。」

「…あっそ。次お前が運転な。」

「ん。」


「あ"ー疲れた…どっかで飯…」

「何食いたいよ?あ、俺次運転だから重いの無しで、あと生物以外で、早くて美味いやつ」

「お前が決めた方が早いだろそれ…」

「高速降りんのもあれだし次のサービスエリアにしよーぜ!」

「り」


「お前何にすんの」

「んー…なんか、米…?」

「アバウトすぎだろ」

「おにぎり屋さんの米って美味いんだぞ!」

「あーね。」

「そーゆーお前は何にするんだよ」

「ラーメン」

「重っっ」


「スヤスヤ寝やがってよー」

「ん"…?あ"ぁ、わり…」

「寝起き悪っっ」

「…ん…」

「あー寝た!こいつまた寝やがった!!ラーメンなんか食うからだよまったく…」


「そういや会社は?仕事あるって言ってなかった?」

「普通にサボり」

「うわ!なまはげに殺されるぞ」

「殺されはしないだろ…いやするのか?」

「知らねー」


「渋滞だりー」

「これ何キロ続いてんだ…?」

「予想3キロ!」

「残念5キロ」

「えっ惜しい」


「あともうちょい」

「目的地ってここなん?」

「もう少し行ったら海」

「よっしゃーじゃあ交代無しで」

「くっそ嵌められた」


運転を変わりながら5時間。俺たちは目的地までようやくたどり着いた。太平洋が見える海岸。砂浜は人ひとりいない。気がついたら雲はどこかへ行き、1番明るい流れ星が見えた。明日全ての命は消えてなくなるというのに、生命の源は今も爛々と輝いている。世界は何一つ変わることなく動いている。あの燃え盛る火の玉で全てが終わることも知らずに、人は日常を生きている。

「最後の夕焼けだ」

ふとあいつが呟いた。

「…なぁ、どうして俺を誘った?」

「なんとなく。お前となら、最後まで笑って過ごせると思った。」

みんなで肩を寄せあって泣くより、お前と一緒に話してる時の方がいい。そう言いながらあいつは笑った。けど、俺たちはもう無理だよ。少なくとも俺は、全てから逃げてありありと実感したんだ。

「…俺は、死にたくなかった。まだお前と馬鹿をして、今日みたいに笑いたかった。」

あいつの顔がぐにゃりと歪む。泣きそうな、それでも笑おうとする惨めな顔。

「楽しかったよ。多分お前が誘ってくれなきゃ、俺は今日のことを知ってても逃げられなかった。このことにも気づけなかった。」

「……おまえってさぁ、本当に…」

「なんだよ」

「なんでも!!楽しかったよ、俺も。」

「はは!」

気が付いたら頬は濡れていて、それでも俺らは笑うことを止めなかった。流れ星は勢いを殺すことなく空を駆けている。どんどん空が燃えていく。眠るはずだった世界が起きていく。この流れ星で世界が終わるなら、綺麗すぎる。


「こんなに楽しいなら、もっと早くから逃げてしまえばよかった!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ