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第9話、ゴブリンを追え!


 ウィロビー屋敷は、ゴブリン臭が酷かった。住処にして、それなりの時間が経過しているのだろうな。

 その割に室内が傷んできているのは、手入れとかとは無縁なんだろうな、ゴブリンは。


 出会い頭に一体を仕留め、屋敷内を進む。耳をすまし、気配を探り、近くにいる敵の存在を確かめる。

 そして――出会い頭にドォーン!


 廊下に出てきたゴブリンの顔面にニーキック。そのまま壁に激突で顔面陥没、後頭部の骨を砕けて死亡。

 よし、次!


 廊下を進み、連れ去られた少女を探して、屋敷内を捜索。そこらでドタドタと足音がしているのは、ゴブリンどもが俺がまだ屋敷の外にいると思って探しているからだろう。


 次、二体。曲がり角を出てきたところを、しゃがんで左手のバックラーを突き出している俺と激突。さらに後ろの奴も駆けてきて、さらにごっつんこ。二体まとめて痛みにのたうつところにバックラーでのシールドバッシュで壁にぶつけ、ブロードソードで串刺し!


 本来、ブロードソードは突きではなく、重量を利用した斬撃で叩く武器ではあるが、ゴブリン程度なら、力で貫くこともできなくはない。というか、俺はできる。


 ゴブリンを探して移動。弓を持って外を警戒しているのを見つけると、セブンスエポンで鞭形態。ていっ、と伸ばした魔法鞭で、その首根っこに巻き付くと、絞首刑さながら力いっぱい引き寄せる。


 小柄なゴブリンの体が飛んできたところへ、左手のバックラーでその後頭部をぶっ叩いてトドメ。鞭で引き寄せた時に、首の骨を折っていればおしまいだったが、それで生きていた時のために、追い打ちね。

 ……あの少女はどこだ?


 ゴブリンにとっては、未成年でも人間を運ぶのは、相当なものだ。二体で運ぼうとしていたが、そう考えると二階や三階に連れて行くとも思えない。

 しかし一階を一通り見て回ったが、ゴブリン以外にいなかった。


「うーん、二階、かなぁ……?」


 下にいなくて、屋敷の外でもなければ、上しかないもんな。俺は階段を登り、二階へ。ゴブリンが声をあげて、自分の居場所を教えてくれるから、部屋などを除き、そこにいる一体ないし二体を倒して回る。

 そこに少女がいなくても、ゴブリンは一体残すだけでも厄介な害獣。見かけたら倒すのが、冒険者界隈の常識だ。


 そうやってゴキブリを駆除する如く、ゴブリン全部を倒していけば、あの少女も見つかると思って屋敷を回ったが……。


「いない」


 少女の姿がどこにもない! 三階も探したが、影も形もない。これは面倒なことになった。

 中庭に出て、あの少女が倒された場所を探す。そこからゴブリンが二体で運ぶ形跡を追う。それを辿れば、行き先を掴むことができる。


 崩れた壁から、屋敷に入ったのは間違いない。土を踏んだゴブリンの足跡が残っている。たた、湿り気を含んだ土で濡れていた足も、十歩もあるけば痕跡が見づらくなる。通路をこのまま真っ直ぐ。そして、この部屋に入ったが、ここからが問題。特に雨などで泥だらけで歩き回った後が乾いて、足跡や汚れが目立つが、目的の足跡は……。


「うん?」


 地下へ通じる階段があった。なるほど、地下か……。ゴブリンは暗くてじめじめした場所が好きと相場が決まっている。

 ぶっちゃけ、少女を抱えて下りるのは大変そうではあるが……。まあ、知ったことではあるまい。痕跡から、ここを通ったのは間違いないんだから。


 うわ、予想通りではあるが、真っ暗だ。ここにゴブリンが潜んでいるだろうことを考えると、素のままではまずいし、かといって明かりになるものを持ち込んでも、目立つだけでいいことはありはしない。


 ということで、目に暗視の魔法をかける。もっとも、俺の魔法はそこまで効果が強くないから、あれば少し便利程度なんだけどね。


 俺は見た目は戦士スタイルだけど、魔法も大体使える。ただし広く浅く、というか、特別得意なものはない。

 だから同業者や専門家たちからは『器用貧乏』なんてよく言われる。特化したら、その道のプロフェッショナルになれるのに――とは、よく聞くセリフだ。


 つまり、便利だけど、残念がられるというのが、俺の大まかな評価だな。


 閑話休題。探索を続ける。

 真っ暗だが、うっすら階段や室内の構造がわかるようになった。慎重に階段を下りきり、通路に沿って奥へ。


 倉庫か、ここは……?

 木箱の残骸が散らかっているが……。おっと、こんなところに穴が空いている。地下室に空いた穴。ゴブリンどもは、ここからこの屋敷に侵入したのか?


 少女の行方を追っている手前、このまま穴を行くしかない。……大柄の俺には、ちょいと狭いな、こいつは。屈まないと進めないのは、窮屈といわざるを得ない。

 こんなところでゴブリンなんかと出くわしたら面倒なことに――


『ギャ?』

「……」


 すぅ、と深呼吸。正面にゴブリンが一体、目と目が合っちまった。ここでは剣を振るうスペースはないし、突きが届く位置でもない。


「ファイアボール!」


 火の玉を喰らえ! 闇に慣れた目にはちと眩しい。火球は、真っ直ぐゴブリンに飛び、慌てたそいつの顔面を焼く!


『ギャッ!? ギャっ!?』


 炎を当てられると思わなかったらしいゴブリンは、周囲によく聞こえる悲鳴をあげて飛び跳ねた。異常を聞きつけて、他のゴブリンが殺到してくるだろうが、今はそれどころではない。すぐに穴の向こう側に出ないと、身動きできなくて詰んでしまう!


 急いで穴の向こう側に出た。ギャギャギャッ、とゴブリンが複数駆けつけてきた。おう、広いところに出てしまえばこっちのもんだ。

 セブンスエポン、ショートソード形態。ゴブリンにとって広い部屋でも、俺にはやや手狭なんでね。大振りして壁や床に当てても面白くないから、剣身の短い武器でいく。


 突くべし! 突くべし! 突くべし! ゴブリンの頭や胸、喉などを一突き。数で負けているから、一突き一殺。囲まれないうちに手早く仕留めて、次に向かう。その繰り返し。

 七体ほど倒したところで、ゴブリンが奥へと逃げ出した。そのまま道なりに追いかける。連れ去った少女はどこだ?


「やべ、何だこれ」


 広い地下空間に出た。鍾乳洞にしては、大きいか。何だかダンジョンみたいなところに出てしまったぞ。


「屋敷の地下が、こんな空洞と繋がっていたなんてなぁ」


 道なりにいけば、連れ去られた少女のもとまで辿り着けると思っていたが、この広さはちょっと想像できなかった。

 しかし見渡す範囲に、彼女の姿はない。ゴブリンたちはどこへ行った?

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