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第4話、最深部を歩けば


「うーん、これ。どう見ても、四階層とか、五階層って感じじゃないな」


 俺は、だだっ広い空間にいて、そこでひしめく超巨大ワームどもの群れに、一種の気持ち悪さをいだいた。

 十、二十、三十はいるかな。このダンジョンは奴らの巣穴か? そんな話は聞いていないんだが。


 俺がいる場所は、ちょっとした高台になっていて、蠢く巨大ワームを見下ろすことができる。天井は見えないというか、本来あるはずのダンジョンの床や壁、そして天井が、ワームどもに食い荒らされ、なくなってしまっているようだった。


 ただ、一定の範囲内に収まっているのが大半で、おそらくその範囲が奴らのテリトリーなのだろう。

 ただ、どうにも聞いていた話と違うんだよな。初見だからよくわからないけど、ひょっとしたら、このダンジョン、いま異常な状態なのかもしれない。


 もしそうだとすると、ダンジョン内がかなり荒らされているということで、最深部もなくなってしまっているかもしれないな……。


「ウィロビーの足跡を辿ってダンジョンに来たのに、これでは手掛かりも何もあったものではない」


 とはいえ。


「このまま、というわけにもいかんよなぁ……」


 そもそも、上の階層がどんどん喰われるようになくなっているようなので、帰ることもできないのでは……?

 これは絶体絶命かもしれない。普通なら――


「泣き言を言う暇があったら、やれるだけはやりましょ」


 よくよく見ればワームは、超巨大ではなく巨大サイズ。人間よりはかなり大きいが、俺が知るワームではもっと巨大なのがいた。洞窟通路いっぱいに広がって、削りながら突っ込んできたら、そりゃ誤認もするよな。


 だが、セブンスエポンで撃ち出したエクスプロージョンで、仕留められたのだから、高台から狙い撃ちにすれば、やれないことはない。


 問題は、エクスプロージョン級の魔法を撃ち出すのは、結構な魔力を使うから、そう連続して撃てないこと。俺は魔術師ではないからね。

 マジックポーションは携帯しているから補充をできるが、薬なので飲み過ぎは魔力酔いを引き起こす。つまり、連続では飲めない。

 どういうことかと言うと――


「持久戦になる」


 とりあえず、四発か五発撃ったら、ポーションで魔力回復。あと七発前後撃てたら、しばらく休憩。


「慌てず、的確に」


 セブンスエポン弓形態、今回は大活躍だな。


「今日はここで野宿かなぁ」


 俺は、狙いやすそうな奴に狙いをつけると魔力を弓に収束、そして放った。



  ・  ・  ・



「……おっといけない」


 ウトウトしちまった。魔力の消耗からの回復を待っている間、眠らないように気を張っていたんだけど……。


 下でウジャっていた巨大ワームは片付けた。俺の勘時計によれば一晩かかったと思う。魔力を回復させながら、ちまちまと一体ずつやっつけたが、魔力疲労が眠気にも繋がり、中々しんどかった。


 今は、他の階層などに流れたワームが、こっちにきて襲ってこないか警戒していたところ。集団から離れて行動していた奴もいたから、それが戻ってきたらと思って身構えていたが、それも落ち着いた。


 とりあえず、再度湧いてくる様子もないし、今のうちに最深部まで下りてしまおう。ワームどもに食い荒らされた壁や床なども、戻りつつあるしな。


 ……本当、ダンジョンの地形再生力って凄いよなぁ。ダンジョンを生き物の体に例えた学者がいたって話、満更間違っていないかもしれない。


 本来はもっと違う形をしていたんだろうけど、俺は奥を目指す。

 途中、ワームの密集地帯だった場所を通ったが、その死骸も徐々にダンジョンによって分解されているようだった。


 これもまたダンジョンの不思議の一つだな。生き物の死体は、外よりも遥かに消滅が早い。それでいて、分解までの時間はものによって変わる。肉や血は早めだが、硬い鱗だったり、骨や歯は多少時間がかかる。人間や亜人だったりすると、武器や防具といった装備品が、最後に残っていたりする。


「おっと、これは……」


 巨大ワームの腹の中に、岩などが残っていた。地面を掘り進めながら食べるから、こういう土砂や土の中に、たまに鉱物も混じっていたりする。


 案の定、クリスタルだったり、魔力を帯びた石――魔石などが混じっていた。魔石は魔法を使うための触媒や、魔道具の燃料になったりする。

 ギルドに持ち込むと他の品に比べてそこそこ高く売れるので、冒険者たちにはよい収入になる。


 うひひ、しかし惜しいなぁ。これだけの巨大ワームを吹っ飛ばしたから、魔石を全部回収できるなら、当面遊んで暮らせるだけのお金になったかもしれない。

 個人で持てる分は、たかが知れているから、持てるだけ回収したら、後は放置するしかないね。仕方ないね。


 そして、最深部、おそらくこのダンジョンの終着点に到着。

 ダンジョン特有の魔力の濃度が濃い場所だ。こういう魔力の吹き溜まりのような場所が、ダンジョンになったり、モンスターを生み出したりするらしい。


 中を観察するが、行き止まり。いかにも何かあったと思われる盛り上がりがあった。周りは小さな黒い石が散らばっている。……これ、ワームの腹の中にも似たような色の石があったような。


「アメシスト……じゃないな。魔石か?」


 俺はそれを観察する。専門家ではないので、これはギルドに提出すれば何かわかるのではないか。中々魔力が濃い。小さなものしか見当たらないのは、巨大ワームが喰ったからだろう。つまり食べ残し、食べカスということだ。


はてさて、他には特に目を引くものはなさそうだった。ここに最初にたどり着いたウィロビーは、何を見つけたんだろうか?

 俺の不明な記憶の欠片なり、見つかるといいんだが。


 ということで、室内を観察。壁だったり床だったり。


「――うん?」


 とある場所に立ち止まり、見回した時、ふっと懐かしい気持ちがこみ上げた。どこかで見たことがある景色。デジャヴのようなものを俺は感じた。うん、たぶん、前にここ来たことがあるわ。

 ……錯覚かもしれないけど。ダンジョンって、結構似たような地形もあるし、見たことがある気がしただけなのかかも。


 ふと、少女の幻影を見た。冒険者だったと思われるそれ、どこかで見た気もするが、はて。


 俺は最後にもう一度見回した後、最深部を後にした。

 ダンジョンの再生がゆっくり進んでいたが、上の階層と途切れていて、ここが繋がるまでどれくらいかかるだろうか?


 まあ、何となく上と繋がっているだろう穴があるので、何かに引っかけられたら、上に行けそうだ。


 セブンスエポン――鞭モード。ロープの代わりにも使えるマジック・ウィップだ。そうれ、届け!

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