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第34話、盛り上がる水の都発見の報


 都市遺跡に戻ったことでタリサは、今回はここまでにして一度ギルドに戻ろうと提案した。

 転移罠などがあって、想定外の探索をさせられたマップホルダーの面々に反対意見はなかった。


「ということで、あたしらは撤収するけど、ウィロビーも一緒に帰るかい?」

「そうだな……。そうする」


 一人探索はお手のものとはいえ、今回はちょっと準備不足感がある。あの地下遺跡の女性のこともあるし、ギルドで関連しそうなものの情報を集めたほうがいい気がする。


 俺とマップホルダーの面々は都市遺跡から撤収。遺跡に入る前のクリスタルタートルの集団の間もすり抜け、例の空洞に戻る。


 帰りに俺が滝の裏で見つけた遺体を見たいとタリサがいうので見てもらった。彼女が証言してくれるとギルドへの説明にも説得力が出る。

 そして何故そう呼ばれているのかわからないウィロビー屋敷を抜けて、ベリエの町へと戻った。


 ギルドに戻り、ダンジョン探索の報告をしたんだけど……まあ長い長い。タリサがいてくれて助かったけど、俺も説明に付き合わされて、まあほとほとに疲れた。

 ようやく報告から解放されたら、その日は夜になっていた。


「ウィロビー。世話になったね!」


 タリサが言えば、マップホルダーの仲間たちも口々に感謝してきた。


「というわけで、打ち上げだ。あんたも付き合いな!」

「酒だー!」


 おおう、俺は宿――にある酒場に直行させられ、旅の仲間たちと生還の祝いをした。あれだけ寝たいと思っていたのに、酒を飲んだら気分がよくなって皆とわいわい飲んじまった。

 生きているって実感が、五臓六腑に染み渡る。くぅぅ、俺は帰ってきたぞーっ!



  ・  ・  ・



 ……からの二日酔い。ここまで飲んだのはいつ以来か。思い出せないが、誰かと飲むと加減が難しいもんだ。


 さて、めぼしいウィロビー情報もなく、次の町へ行ってもよいが、先日の都市遺跡のことで何か新しい情報が出ているかもしれないので、ギルドで情報を集めるとしよう。やはり、気になるといえば気になるからなぁ。


 昼前に行ったら、なんかギルドフロアがガラガラな印象。

 掲示板脇の連絡事項板を見てみれば――


『水の聖地マナンティアル発見か!?』


 というタイトルで、例のダンジョンが伝説の水の都かもしれないとデカデカと書いてあった。俺と、冒険者パーティー『マップホルダー』が第一発見者ということで記されていた。


 歴史上、偉大な発見かもしれないとか何とか。連絡事項というよりは物語のような書き方をされていて、これを書いた人も興奮していたんだろうな。


「あ、ウィロビーさん」


 受付嬢が特に面識はなかったのに名前で呼んでくれた。昨日の説明の時にでも見かけられたかもしれないが、すっかり俺のことはこのギルドでも知られているようだった。


 彼女曰く、仮称マナンティアル・ダンジョンの探索系依頼が多く出され、つい先ほどまでにその手の依頼がほとんど受注されたらしい。……耳の早い人間が実に多いこと。


「マナンティアルの話を聞いた専門家が調査依頼や護衛依頼をぼちぼち出してくると思いますから、しばらくはそちらの依頼が大人気になるでしょうね」

「……そうか。そうだよねぇ」


 クエストにも旬があるからなぁ。話題性の高い依頼は、依頼料や報酬も高くなる傾向にあるから人気なのも頷ける。よくは知らないが、マナンティアルには莫大な財宝が眠っているという話らしいし、それ目当てで向かう奴も多いだろうな。


「ダンジョン関係のめぼしい依頼は今は残っていないですが、ウィロビーさんもまた向かわれるんですか?」

「うーん、どうしょうかね……?」


 あのダンジョン、割と低ランク帯の冒険者にはきついと思うんだよな。一応、水位のギミックとかモンスターの話はしているけど……。


「時期尚早だったんじゃないかな」

「はい?」


 キョトンとする受付嬢。いやね、ギルドとしては需要と供給の面で稼ぎ時なんだろうけど――


「冒険者って、人の話を聞かない奴が多いからさ。……たぶん、事故が多発するんだろうな、って思っただけ」

「事故、ですか……?」

「ぜったい、どこかのアホが水位操作やらかして、他の探索パーティーを水没させたりして全滅とかさ……」


 特に中央の地下穴なんて、あそこ水が流れてきたら逃げられないような気がする。……今まで水没した形跡はなかったから、大丈夫かもしれないけど、そこのところの確証はない。

 それでなくても、都市遺跡でも水位の上下で下にいた者全滅は普通にあると思うし、マーマン大発生でこれまた酷いことになりそう。


「ちょっと、失礼します……!」


 受付嬢が青い顔をして奥に引っ込んだ。別のギルド嬢がやってくる。他に冒険者がほとんどいないから手透きだったのだろう。


「ギルマスの部屋へ行ったみたいですけど、何かあったんですか?」

「さあ? 俺にもわからん」


 ちょっと、マナンティアルダンジョンに人が群がっているのは危ないかもって話をしただけなんだけどね。……って話をしたら、その受付嬢も青い顔をしていた。


「それは、まずいですね。ギルドマスターは伝説の水の都の発見と聞いて、凄くテンション高かったですし……一攫千金だって冒険者の方々に探索依頼を奨励させていたくらいですから」


 あー、それでベリエの町の冒険者の大半が、そっちへ向かったと。ここで大事故があったら、この町の冒険者が壊滅なんて洒落にならないことにもなりかねないわけね。


「もしかしたら、水の聖女が眠っているかもしれない、って話もありますし……」

「水の聖女?」

「ほら、マップホルダーが遺跡で発見した女性のことです。もちろん、推測ですけど」


 へえ、あの女性、水の聖女かもしれないって。……水の聖女って何だ? これも水の都伝説に関係があるワードなんだろうな。


「とりあえず、割と重要そうだけど手が回っていない依頼いくつか見繕ってくれる?」

「はい?」

「この町の冒険者がダンジョン探索に行っちゃったから、それ以外で早く解決したほうがいい依頼とか結構残ってるでしょ。そのいくつか俺がやっておくよ」

「よろしいのですか……? マナンティアルの方には――」

「今俺が行っても何かできるわけじゃないしな」


 予想される事故が起こっていたとして、気の毒な話だが俺にその全員を救う術はないしな。こちとら平均以上、器用貧乏な冒険者で、いたら全てが解決するような特化型じゃない。


 そもそもの話、同業者が呼びかけたところで、はいそうですか、って頷く冒険者も多くない。引くように言って手柄を独り占めしようとしているのだろう、と疑われるのがオチだ。

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