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第3話、ワームの特性


 道いっぱいに広がっている超巨大ワーム。避けるなら、元来た道を引き返すか、道の両サイドどちらかに飛ぶ。……そしてそのまま五階層へ落下死。

 さあて、どうしたものか。


 超巨大ワームから逃げる冒険者がこちらに来てしまう。逃げるならさっさと動かないとだが……。手がまったくないわけじゃないんだよな。


 俺は腰に提げている予備武装を手に取る。こいつはセブンス・エポンという魔法武器。通常形態はナイフだが、七つの形態に変わる可変武器である。


「魔法弓!」


 弓形態に変形。矢は俺の魔力。弓に力を吸わせて、魔法を収束。

 そうとは知らず超巨大ワームは、冒険者を追いかけつつ、そのまま俺の方へグングン迫る。地面を引き剥がす勢いで這い、牙のような歯を剥き出して向かってくる。


 おうおう、怖い怖い。そのデカい口は、大の大人をも一口で余裕で収まるな。丸呑みされたら、体内で溶かされてしまうんだろうなぁ。


 逃げる冒険者を避けなくても撃てるくらいに大きいのは、こちらも気分的に楽。ただし、これでもくねくねと動いているので、ピンポイントの狙い撃ちは割と難しそう。


 精神集中。しん、と一瞬音が消える。――そこだ!


 矢を放つ。魔力の塊、魔法を矢として飛ばしたそれは、右へ左へくねらせながら進む超巨大ワームが中央に寄った瞬間に、その口の中に飛び込んだ。


「ぶっ飛べ!」


 エクスプロージョン! 超巨大ワームの中で魔法を解放。体内から爆発するっ!


 ギィェエエエェェー!


 耳障りな絶叫。胴体が真ん中から持ち上がり、否、千切れ飛んだ。前半分が吹き飛び、谷へと落ちていく。そして後ろ半分が、頭を失いながらもなおも蠢動を続けていたが、やがてバランスがとれず、下の階層へ落ちていった。


 ふぅ……。危ない危ない。あんがとよ、セブンスエポン。俺は弓からナイフ形態に戻して魔法武器を腰に下げる。


「あれ、冒険者は……?」


 見当たらない。ワームに食べられてはいないはずだが、まさか落ちたか? 振り返れば、いつの間にか、俺の後ろに駆け抜けていた。集中している間に、すれ違ったかな。


「助かったぁ~」


 などと、膝をついて安堵している者もいれば、そのまま走り去る者もいる。……まあいいか。別に知り合いでもないし。


 超巨大ワームは倒したが、通路から落ちて下の階層だから、モンスターの素材がどうこうと揉めることもあるまい。

 俺は先に進むことにした。ワームが出るとは聞いていたが、あんな馬鹿デカいのもいるんだなぁ。



   ・  ・  ・



「なあ、あれ、誰だ? 見たことないが」

「さあ。ダンジョンにいるってことは、冒険者なんだろうけど――」


 超巨大ワームから逃げて助かった冒険者らは顔を見合わせる。


「いったい何をやったんだ? あの化け物が一発で吹っ飛んだぞ?」

「魔法……っぽいんだけど、弓を構えていたよな?」

「魔法弓っていうやつじゃない? 魔法を弓で撃ち出すっていう」

「あれが? へぇ……実物を見たことがないから、よくわからないんだが」


 魔法弓は、店売りしているような武器ではない。そもそも魔法を弓で撃ち出すなんて、意味がわからない。

 距離に限界はあるが、魔法は射程で言えば飛び道具に近い。つまり、わざわざ弓で撃ち出さなくても、射程は重複する。


 もちろん、細かなことを言えばメリットがあるのかもしれない。だが、冒険者の間でも超レアもので、好き好んで使っている者がほとんどいないのであれば、武器の特性自体わからないというのが自然であった。


「あんなデカいワームが一撃だったんだ。実は凄い武器だった……?」

「普通に戦って、あの巨大ワームを魔法で倒すのに、何人の魔術師が必要だ?」

「弓だってそうだ。十や二十を矢を当てたって通用しないだろう……」


 改めて、あの見知らぬ冒険者がやったことに、驚かされる。


「本当、誰だったんだ? ギルドに聞いてみるか」

「新人……じゃあないよな。たぶん流れ者だろうけど」

「! ギルドと言えば、下の階層の異常を通報するほうが先じゃないか!?」

「あっ……」


 冒険者たちは思い出した。目の前で起きたことにビックリして失念していた。


「というか、あの人、先に行っちゃったよ!」


 呼び戻したほうが――若い冒険者が言えば、年かさの冒険者は首を振った。


「いや、今はギルドに報告するのが先だ」

「でも……!」

「あの男、只者ではあるまい。そういう冒険者は危ないと見れば引き返せる。大丈夫だ。周りがどうこう言わなくても、自分で判断できる」


 冒険者たちは、現場でそう判断すると、すみやかにダンジョンからの撤収を開始した。



  ・  ・  ・



「なんとまあ……」


 俺は三度、セブンスエポンを弓に変え、通路いっぱいに迫る超巨大ワームに、エクスプロージョンの魔法弾を、その口腔に撃ち込んだ。

 あのデカいワーム、一体だけじゃなかったのか。そうなると、このダンジョンには、あのワームのサイズは、割と珍しくないのかもしれないな。


 正面から向かってきたワームを爆殺! 同じ手は通用しませんよっと。

 俺は弓を下ろすが……、こう通路いっぱいにワームの死骸があるのって、ちょっと通れないんじゃないか。


「うん……?」


 地面が揺れている。ダンジョンの壁や床ってのは、基本的に表面は削れても大崩れするというのは、トラップ以外ではありえない。

 ではこの揺れはトラップかというと、そうでもない。唯一、地面や床に干渉できるのが、ワーム系モンスターの特徴でもある。


 つまり――


「こう!」


 俺は後ろへ飛び退く。今しがた立っていた場所の床が崩れ、超巨大ワームが飛び出し、そのまま天井に突っ込み、そこを掘り進めた。長い長い胴体ですこと!


 セブンスエポン、大剣モード!

 壁のように立ち塞がる超巨大ワームの胴体を、一刀・両断っ! ふんぬっ!


 魔力をまとわせた大剣の一撃が、極太のワームの体を切り捨てる。うねっていない分、切られた頭側はそのまま天井を突き破って進んだが、後ろ半分はズルリと落ちていった。

 残るはぽっかり空いた大穴。


「これはラッキー。下の階層に行けるわ」


 ダンジョンの床や壁を無効化するワーム様々だ。最下層を目指している俺は、その穴を滑って次の階層へ飛び込んだ。

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