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第23話、塔の中には――?


 両足を前に出したら、浮遊魔法が働くんじゃないかと思ったが、そんなこともなく、まあ、派手に激突しましたよ。


 ただそこから落ちなかったのは、下に足場になるでっぱりがあって、足がそちらに向いたらちゃんと浮遊が働いたから。

 ……浮遊魔法って縦には対応しているけど、横には影響していないのな。やってみてわかった個人的新発見。


「ウォロビぃー! 大丈夫かーい!」


 タリサが声を張り上げた。俺は振り返り、胸をさすりつつ左手を振った。二階層分、落ちたかな。飛び出した時の足場を見上げる格好になる。

 打ちつけたからまあほどほどに痛い。だがこれくらいなら肋骨が折れたとか、内臓をやったとかはないのでとりあえずひと安心。


 さて、とりあえず塔に侵入するとしよう。ここが何階か知らないが、入り口はあるのでお邪魔します。


 石の塔の中は黒かった。汚れは多少あるが、元々内装が黒だったんだろう。小部屋という感じで殺風景だった。

 壁際にテーブルのような台があるが、これも壁や天井と同じ材質でできていた。罠はなさそうだ。


 奥に扉の大きさの穴があるので、そちらの様子を見る。螺旋階段があった。ここを通って塔を上り下りするのだろう。

 部屋が多そうだが、これってかつてここに人が住んでいた塔だったのだろうか。順番に見て回れば似たような構造の部屋ばかりで、特に物があったり生き物がいるということもなかった。


「これは外れの塔を引いたかな……?」


 この都市遺跡に十数はある塔の、まだほんの一部しか見ていない。まだまだ探索は始まったばかりだ。



   ・  ・  ・



 塔の中の小部屋を確認しながら、一度登れるところまで登った。階段が途絶え、おそらく最上階となる部屋はちょっとした展望台のようであった。

 試しに都市入り口の方に目を向ければ、マップホルダーのコンロイとヒーラーのジャーニーがいて、こちらを見ていたので手を振る。


 他のメンバーはどこかと聞こうと思ったが、ちょっと見回したら都市の外壁の通路を歩いているのが見えた。


 一方向だけでなく、別視点から見れば意外と新たな道が見つかるかもしれない。手持ち無沙汰ならその間に動け、ということなのだろう。あるいはギルドに報告するための地図作成かもしれない。


 上には何もなかったので今度は下へ降りる。螺旋の中ほどは空洞なので、飛び降りたら階段を使わず一番下まで行けるだろう。……まあ、その時はほぼ落下死確定だけどな。


 長い長い長い階段を下りていくと、あまり調子に乗っていると膝にきそうだ。これ登る時にかなりしんどくなるなぁ。まあ下るっていうのはそういうことだよな。

 かなり下りたら、下のほうで水が張っているのが見えた。そこが外の水の高さなのだろう。窓や部屋の入り口から水が入ってきているわけだ。


 残念ながら潜らないと最下層には行けそうにないな。……なんかキラキラした巨大な宝玉のようなものが見える。……何だろうな、これ?


 潜らないと行けないから、ちょっと保留。罠……とは思えないが、何か仕掛けかもしれないから用心すべきだよな。

 それはそれとして、水の高さ的に正規のルートではないが塔を出入りできそうなので、水に浮く船などがあれば大ジャンプしなくても行き来できそうだ。


「これなら、マップホルダーのメンバーも塔の探索ができるな」


 問題は船なんだよな。遠泳できるなら泳ぐという手もあるけど、装備が限定されるから最終手段だよな。


「お!」

「おっ……」


 俺は思いがけず声が出た。そのマップホルダーの軽戦士、ヴィッターラントが水の上を歩いていたのだ。えっ、魔法?


「歩いてきたのか!?」

「うむ。このブーツ、水上歩行が可能でな」


 ヴィッターラントは、少々気恥ずかしそうな顔になった。堅物な印象を持った男であるが意外とシャイなのかもしれない。


「外壁裏に下へと下りる階段があるのがあっただろう? そこまで言って、あとは水上を歩いてきた」

「ほぅ……」


 水上歩行できるブーツとは魔法道具なのだろう。冒険者は時々こういうレアな装備を持っていたりする。

 探索系冒険者パーティーの一員らしい探索の幅を広げるアイテムだ。


「羨ましい。それがあれば滝の裏へ行く時歩いていけたのに……!」

「いや、高所であんな命懸けのジャンプをしなくて済んだのに、じゃないのか?」


 ヴィッターラントにツッコまれ、それもそうかと思った。二人して笑ったところでここまでの報告をしておく。


「――上には特にめぼしいものはない、と」

「居住区画のようでもあった。特に宝箱もなければ、机とか椅子らしきものがあったくらいか」

「この塔は外れか」

「他はどうなっているかはわからないけどね。後は――」


 俺は水の底を指さした。


「この光っているドデカイ宝玉のようなもの」

「宝玉……というには作り物めいているな」


 ヴィッターラントは水の上を歩き、その上へと移動する。俺は確認する。


「そのブーツは水上しか効果ないんだよな?」

「水の中は対応していない。……しかし気になるな。泳いで取りに行ってみるか?」


 ヴィッターラントは提案した。そうだなぁ、ここでこうして眺めていても埒が明かないしな。


「よし、じゃあ俺が潜ってよく見てみる。罠ではなさそうなら引き上げるが、万が一何かあったら援護を頼む」

「わかった」


 請け負うヴィッターラント。俺は軽鎧や防具を外し、服を脱ぐ。沈むのは簡単だが、装備が重くて浮かび上がれないは洒落にならない。もちろん着衣水泳の訓練はしているが、服まで水浸しにすると乾かす手段がないと風邪を引く。


 パンイチ再び! いざ!

 階段にそって水に入り、息を大きく吸って中央の穴で最下層とおぼしき宝玉のある位置まで沈下する。四、五メットほどで到着。


 周りを素早く観察。生き物はいない。罠を臭わせるケーブルや怪しいものもない。では宝玉に手を伸ばす。近づいたらわかるが、意外と大きい。片手で掴める大きさじゃない。両手で抱えて――、と!?


 触った途端、宝玉が輝き出した。ん!! 何かやばい触り方をしたか!?

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