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第2話、ダンジョン村のダンジョン


 宿に戻り、荷物を確認する。ダンジョンに乗り込むにあたって、必要なものとそうでないものに分ける。

 余計な荷物を持ち込まない。ほんの少しの重量の差が、とっさの回避や、長距離の移動に影響する。


 とはいえ、ダンジョン内で休憩することもあれば、携帯食や水筒といった準備は不可欠。ダンジョンの大きさにもよるが、割と消耗品が荷物になる。それらは自分の命に関わることだから、手は抜けない。


 ダンジョン村にある冒険者ギルド。そこでこの村から行けるダンジョンの情報は確認している。


 洞窟型、階層は七階層。地下へと潜っていくタイプで、上の方ではスライムやワーム、レアなところではスケルトンが出るらしい。

 火の魔法が使えないなら、松明は持っていけ、というのは、初心者向けの注意。物理攻撃が効きにくいスライムは、松明など火を押しつけて燃やすのが、一番手軽なのだ。


 下の階層にいけば、グレートボア――大蛇が出るという。初心者には危険なやつで、中堅レベル以上でなければ逃げろと言われるモンスターだ。


「よし、行くか!」


 気合いを入れるのを込みで、そう口にして部屋を出る。独り言が多くなるのは、一人旅故、許してもらいたい。


 宿を出て、いざダンジョンへ。村の中央通りには、ダンジョン帰りの冒険者がいて、それらとすれ違う。顔つきを見れば、成果があったのか、あるいは運がなかったかわかるというものだ。


 村を出てすぐにあるダンジョンの入り口。へぇ……、本当に洞窟みたいだ。ぽっかり開いた穴が地下へと下り道へ通じている。

 入り口脇に冒険者が数人いて、一人の戦士が俺に気づいた。


「おいおい、あんた。見たことないけど、冒険者か?」

「そうだ」


 俺は首から下げている冒険者票をちらつかせる。

 ダンジョンに入れるのは、世界規模の組織である冒険者ギルドが発行する冒険者票を持つ者のみである。これがあれば余所者でも冒険者だから、ダンジョンに入ることができるのだ。

 ダンジョン資源を、冒険者以外に取られるのをよしとしないギルドが、そういうルールを作った。


 俺に声をかけてきた冒険者は目を見開く。


「え、あ――ゴールドランク!?」


 ざわっ、と他の冒険者まで反応するので、俺は、さっと冒険者票を懐にしまった。


「入るぞ。……あ、ここ俺初めてだけど、注意事項とかある?」


 右手に両刃の剣。左手には小型盾(バックラー)。胴には金属の胸当て。頭部保護の兜は紐でひっかけていて、腰には今は短剣状にしている予備武装。ポーチの中はわからないだろうが、ポーション類や携帯小道具の救急キットと、食料を入れたサブポーチなどなど。


「いや……ない、です、はい」


 目ざとく俺のランクを見て、冒険者は萎縮してしまった。冒険者にはランクがあるが、ゴールドともなると、それなりの腕利きであることを証明するものだ。それに、もともと俺、体が大きいから、立っているだけでビビらてしまうこともある。


「お一人で行かれるのですか?」

「うん。何か問題?」

「あ、いえ、ありません! お気をつけて!」


 ――おい、マジか。一人で……。

 ――さすがゴールドランクともなると違うなぁ。

 ――どこの人だろう。


 ざわつく冒険者たちの声が聞こえたが、まあ俺には関係ない。気を取り直して、ダンジョン探索!


 兜を装着。伝説のウィロビーの足跡を追って、いざゆかん!



  ・  ・  ・



 洞窟のような内装を道なりに下る。湿った空気。いかにもスライムが好みそうな環境だ。少し生臭い。


 遠くからカサカサと羽ばたきのようなものが聞こえたが、コウモリかな? よほど厄介な種じゃなきゃ、モンスターリストには加えられないからな。他はネズミとか、ゴキとかそういうのも出現モンスターにはカウントされていなかったりする。


 冒険者ギルドで確認した浅い階層のマップは頭に入っている。実際に目で、地図との齟齬を確認しつつ、ズンズンと踏み込む。


 どろーん、と天井からスライムがしたたってきた。待ち伏せのつもりだろうが、それでいちいち驚くほど素人じゃないんでね!


 スライムは物理耐性が高く、殴ったり、武器で傷つけるのが難しいモンスターだ。動きは鈍臭くみえて、その物理防御の高さと待ち伏せ率の高さから、素人が舐めてかかってはいけないモンスターに類別されている。……まあ、モンスターなんて、どんな雑魚でも、舐めてはいけない。

 物理が強いといっても、俺は敢えて物理で行くぜ! 


 ブロードソードで強打! 普通だと、ベチンとかいって弾かれるか、半分も斬れないところで止まってしまうところだが、俺くらいのパワーになると!


 ズバッ!

 一刀両断。切れた半分は遠くへ飛んでいってしまった! うーん、今日も快調。これくらいの力であれば、大型魔獣の首も一撃で落とせる。


 その日のコンディションを確認する意味でも、スライムは物理でボコる。まあ、面倒くさくなったら、さっさと燃やすけど。


 さあさあ、どんどん行こう。

 一階層、二階層と出てくるモンスターをなぎ倒し、三階層。洞窟なのに、谷が出現。細長い道を進めばいいが、落ちると五階層まで直行だっけ。なお浮遊なり飛行魔法が使えないと、落下したら死ぬ。


 お世辞にも広いとは言えない谷の道。普段とは違う場所でもお構いなく、モンスターは襲ってくる。ワームが突然、足元から出ると、避けようとして谷に落下――とか割とよくあるので注意。


 このダンジョンのワームは、一メットから大きくても二メット程度という、割と小型な種が確認されている。

 細めに見えて、体がブヨブヨしているから、中途半端な力だと跳ね返されるし、半端な大きさだからかぶり付かれても、即死ということがない。ただ苦しみが続く厄介なタイプではある。

 まあ、俺の敵では――


「わああぁーっ!」


 前方で悲鳴が聞こえた。ドタドタと足音がして、先行していた冒険者が数人、通路から出てきた。飛び出してきたという感じだ。

 そしてその後から通路をこじ開けながら、超巨大ワームがバァンと現れた。


「おいおい……! 嘘だろっ!」


 こちとら狭い谷の通路の上。逃げる冒険者たちもその細い道を必死に逃げ、超巨大ワームが道いっぱいに広がって、猛スピードで追いかけてくるのだ。

 ……これ、避けるスペースなくね?


 巨大な口を開けて、追いすがるワーム。びっしりと牙のような歯が並び、涎が飛び散っている。どれだけお腹を空かせてるの。というか、こんなデカいのがいるなんて、聞いてないぞ!

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