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第19話、冒険者たちと邂逅


 ゴブリンの巣穴、その中にいたゴブリン、ホブゴブリンは全滅した。

 冒険者の死体を四人確認。ゴブリンが異種族でも女と見れば襲う種族だとわかっているから、ギルドも男パーティーを送ったのだろうが、その結果、全員死亡であった。


 ブロンズランクの冒険者。……一番下が鉄――アイアンランクだから、素人ではなく、より上位を目指している気鋭の冒険者といったところかな。ゴブリン程度と、ちょっと油断してしまったのかもしれない。

 人間、慣れてきたところに思わぬ落とし穴に落ちるものだからな。


 冒険者票を回収。これも、ギルドに報告して後は任せる形になるな。やりきれんなぁ。俺が昨日、来ていれば……金色の狼の処理でそっちの方が終息せず、まだ面倒になっていたかもしれない。ギルドから指名依頼がきたんだ、しょうがないよ。


 ゴブリンの巣穴から出てきたところで、別の冒険者パーティーと遭遇した。


「あんたは誰だい? 冒険者か?」


 女性戦士――リーダーとおぼしき彼女が問うてきた。赤毛でショートカット。いかにも姐さんな雰囲気。他に五人。重戦士と魔術師、ヒーラーと軽戦士が二人いて、巣穴の入り口を包囲するように立っていた。


「俺は冒険者だ。ウィロビーという」


 冒険者票を見せる。軽戦士の一人が口笛を吹いた。リーダーらしき女性は口を開く。


「あんたが、ここを知らせたウォロビーだね。ゴールドランクの」

「まあ、そうだな」


 たぶん、その情報は間違っていないよ。


「ここで何をしていた? ゴブリンの巣のようだけど」


 洞窟前のゴブリンの死体を一瞥しながらの言葉。


「そう、巣穴だった。とりあえず、中の制圧は済んだよ」

「あんたが一人で?」

「……まあ、そうなるな」


 そう答えたら、重戦士が言った。


「グリンガルのパーティーが、ゴブリン退治に出ていたはずだが……」


 あぁ、あのブロンズランクの。俺は革袋に回収していたブロンズの冒険者票を取り出した。


「中に四人」

「……」


 俺が彼らの冒険者票を持っているという意味を、この六人は理解した。


「何人で来たかわからないが、確認できたのは四人だけだった。なんだったら確認してくれ」

「いや、四人で間違いないよ」


 女性リーダーは腕を組んで苦い表情を浮かべた。グリンガルという冒険者パーティーは四人組。……あぁ全滅か。


「残念だ」

「まったくだね。時間になっても連絡がないから、もしかしてと思ったら、案の定さ」

「でもさあ、タリサ」


 魔術師が、女性リーダーを見た。


「このおっさん……ゴールドランクさんの話の通りなら、ゴブリンは全滅でしょ? なら、ダンジョン探索に戻ってもいいんじゃない?」


 どうやら探索の途中で、ゴブリン掃討パーティーの様子を見に来たようだ。掃討パーティーが失敗したら、その役割を引き継ぐ予定だったのだろう。


「一応、確認したらな。ウォロビー、悪いがあんたを疑うわけじゃないんだが、仕事だからね」

「構わないよ。俺も何か見落としているかもしれないし」


 それに、冒険者は自分の目で見たものを信じるべきで、人の話を鵜呑みにして、確認を疎かにしてはいけない。


 ということで、俺はゴブリンの巣穴に逆戻り。冒険者たちを道案内することになった。ゴブリンが残っているということもなく、巣穴の敵は殲滅されたのが確認された。

 これといって戦利品になりそうなものもない。荷物を増やすほどもないということで、ゴブリンらの武器は一カ所に集めて破壊。


 臭い臭い巣穴から出た後、いい時間ということで、食事タイム。昼飯に招待された。



  ・  ・  ・



「悪いね、タリサ。俺まで」

「いいさ。四人分、余っているからね」


 リーダーのタリサはそう皮肉げに言った。


「グリンガルの分を用意していたのか?」

「あいつらが、ゴブリン退治に二日もかからないなんて、舐めたことを言っていたからね。注意したけど、聞く耳を持たなかったから、仕方なく予備を多くもってきたんだよ」


 彼女が、重戦士を見ると彼は大げさに肩をすくめた。


「追加の荷物運び、ご苦労さん」


 俺が労うと、いやいや、と照れたように重戦士は手を振った。タリサは俺に言う。


「そういうわけだから、荷物を減らして軽くしてやってくれ」

「喜んで」


 そういうことなら、遠慮なくご馳走になろう。まあ、こういう探索中に食べられるものには限界があるけど。

 空洞が広いこともあって、彼らは火を起こし、携帯用の鍋でお湯を沸かした。……ちゃんと料理するんだ、とちょっと俺は感心する。


 何かの干し肉を湯で煮込み、柔らかくする。一応、そのまま食べられるようになっているのだが、固くて、噛んで飲み込むまでにそれなりに時間がかかる。まあ、顎は鍛えられるが、ものによっては顎が痛くなるくらい固い。


 それをマシにするために食べる前に煮込んで柔らかくするのが普通の食べ方。なお、煮込んでいる間にダシがとれる。

 さらに調味料をあれこれ加えてスープが出来上がる。調理をしているのはバンダナを巻いたいる軽戦士。とても手際がよく、たぶんグルメなんだろうな。


 そんなグルメ君が料理を作っている間に、俺はタリサと互いの探索の情報交換をした。こういうのは必ずしも共有するとは限らないんだけど、初めての場所だから助け合いの精神というやつだ。それでも情報を占有したがる者もいるし、中には敢えて嘘をいう者もいる。


 どこまで喋り、何を言わずにいるか――それは人それぞれだが、俺には特に隠す情報ないからなぁ。

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