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第13話、冒険者ギルドで情報集め


 冒険者ギルドは、至る所にある。それは国を超え、登録さえしていれば、割と自由に出入りしたり、ギルドのクエストに限るが仕事も受けられる。

 旅の冒険者には、両替だったり宿や武具屋の紹介してくれたり、通常業務として、クエストの斡旋、討伐モンスターの素材の買い取りなど、色々と面倒をみてくれる。


 ……もちろん、緊急事態には、ほぼ強制で参加しなければならない義務も発生するけどな。武器の携帯が許されている職業だから、仕方ないね。


 そしてどこへ行っても、冒険者ギルドの構造というのは、変わり映えしない。ロビーがあって、クエストボードがあって、カウンターには受付嬢。買い取り専用のカウンターとか、武具や道具の出張所があったりするが、大体そんな感じ。


 後は規模の大小、広さかな。王都とか大都市のギルドは大きく、また豪華な雰囲気。田舎だと、こじんまりしている。


 で、このベリエの町のギルドは、いたって普通。大きくもなく、小さくもない。割とよくある規模の建物だった。

 朝一は、依頼を探す冒険者でごった返すので、ちょっと遅めのご入場。それでもちょっとカウンターに並んだ。……ここの受付嬢さんたち、声がよく通るなぁ。


「おはようございます!」

「……おはようございます」


 元気なご挨拶。俺がちょっと間をとれなかったら、受付嬢の方から口を開いた。


「本日はどのようなご用件でしょうか?」


 俺がクエストの紙を持っていなかったから、依頼の受注ではないとわかったんだろうね。俺は冒険者票を出して、ご報告。


「ゴブリンの出現報告をしたいんだがね。ちょっとでかい洞窟が込みだから、巣になっていないといいだが」

「ゴールドランク……」


 ポツリと受付嬢さんは呟いたが、すぐに真顔になった。


「はい、詳細を伺いますので、こちらへどうぞ」


 ということで、談話室の方に移動。他の冒険者が並ぶ場所で、長話は悪いからね。結構、冒険者って気が短い人多いし。


「はじめまして、お話を伺います」


 男性スタッフが応対した。地図や書類、筆記用具諸々。ふくよかな体型だが、身なりはしっかりしていている事務型のギルド職員である。俺は、事のあらましと場所、そして地下の大空洞について説明する。

 ギルド職員は、パラパラと本を見て、そして言った。


「記録にはありませんね。新発見の空洞だ……。もしかしたらダンジョンの可能性もありそうです。これは早速、調査が必要ですね」


 記録にない空洞だった。つまり、どこまで大きく、何があるのかわからない場所ということだ。ゴブリンがいるだろう場所でこれは、あまりよろしくないなぁ。


「それで……ええ、とウィロビーさん」


 ゴールドランク冒険者票を提示した後なので、俺の名前やランクはもちろん、ギルド間の魔法転送で、俺の戦歴なども把握しているギルドスタッフである。


「第一発見者であるわけですが、このダンジョンの調査ですが、如何いたしますか? 調査となりますとパーティーで挑むものなので、ギルドとしてはお一人での受注は認められませんが……」


 欲しいのは、確度の高い情報だ。一人の証言よりも複数の証言。地形や空洞の大きさ、出現するモンスターや鉱物、植物などダンジョン資源の有無など、調べることは山ほどある。


「もちろん、ウィロビーさんには先行する権利はありますし、ギルドで探索の得意な冒険者を紹介し、臨時パーティーを組んでいただいても構いませんが」

「とりあえず、ゴブリンの危険度を確認して排除することを前提に動いてもらえれば、俺でなくてもかまわないですよ」

「ええ、もちろん、ダンジョンでない場所であれば、ゴブリン討伐は優先事項です。ですが、ダンジョンだった場合は――」


 ゴブリンが湧くから、数減らしはできるが、完全に排除はできない。それはわかっている。


「ダンジョンだったら、仕方ないですね」

「ご理解いただきありがとうございます。いえ、ゴールドランク冒険者には、お節介でしたね。失礼しました」


 わざわざ説明するまでもなく、上級冒険者なら知っているでしょう、ということだ。

 ギルドには報告したし、調査パーティーを出してもらうことになったので、俺は俺で、のんびり、後から行くことにしよう。

 それはそれとして、情報収集。


「――ウィロビー屋敷って知ってます? 現地ではそう呼ばれているみたいなんだけど」

「いえ……私は知らないですね。――地下で繋がっている屋敷がそうなのですか? うーん、ちょっとお時間いただけますか? 調べてきます」


 そう言い残してスタッフは席を立った。俺は談話室に一人、例の地下空洞のことを思い起こし時間を潰した。

 やがて戻ってきたスタッフは、眉を下げた。


「お待たせしました。同僚にも確認したのですが、ウィロビー屋敷ではなく、キャラマーク家が所有していた屋敷ではないかと思われます」

「キャラマーク? 誰です?」

「元貴族のようです。男爵家に連なる家なのですが、数年前に身内が反逆罪に問われまして、一族郎党、皆殺しにあったとか……」


 ……反逆罪。いったい何をしたのか。スパイ行為でもしていたのか。それとも反乱を企てたとか。身内、おそらく兄弟姉妹の誰かのやらかしの連帯責任というやつだろう。

 それで、キャラマークの家の者たちは、突然あの屋敷を去ったのか。逮捕されたのか、あるいは逃走したのか……。


 調べればわかるかもしれないが、それ以上知ってもな。俺にどうこうできる問題でもないし、反逆罪絡みの家族の安否を調べるとか、お上に知られたら、俺まであらぬ疑いをかけられそうだ。

 触らぬ神に祟りなし、だな。これは。


「しかし、そうなると、何であの子は、ウィロビーの屋敷だったって言ったんだろうか……」


 俺はその時は名乗ってなかったし、ウィロビーの話もしていない。だから、彼女が『ウィロビー』という単語を出したことに裏はないと思うのだが。


「もしかしたら、キャラマーク家が所有する前は、ウィロビーという人の持ち物だったのかもしれませんね」


 スタッフは思いついたように言った。


「記録は残っていないので断言はできませんが」

「なるほどね、そういう考え方もあるか……」


 もっともらしい話かもしれない。

 ともあれ、冒険者ギルドでの用件は終わり、俺はギルドで紹介された宿に宿泊した。明日は例の屋敷と地下空洞を探索しようと思い、この日は眠りについた。

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