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トリカブト  作者: 軽田おこめ
第2章 存在が消える髪飾り
24/25

第22幕 ほろ酔い気分の情報源

ここまで読んでいただきありがとうございます!

ストックがなくなってきたので次回から土曜日の週1投稿にしたいと思います!もし面白いと思っていただけたら気長にお付き合いいただけると幸いです!(お星様も黒く塗ってもらえると作者が喜びます!)

 

 

  さて、無事お転婆な姫様にケーキを与えることに成功したのだから自分は仕事をしよう。”存在が消える髪飾り”を所持した令嬢の名前は分かっているのだ。いつもより情報収集が楽そうだ。

 シエルはボーイからワインを受け取り、辺りを観察する。ねらい目はほろ酔い気味で機嫌の良さそうな者。今までの経験上、結局それが一番勝率が高かった。シエルが目をつけたのは少し離れたところで小さく笑っている中年男性2人組。どちらもほんのり顔が赤く、着ているスーツや身につけているものから貴族ではなく外交官か何かだろうと思った。これはいい。マリー=レゾニックが貴族の娘だとしたら、敵を増やしたくない貴族からより外交官や商人の方がいい情報は入手できるだろうと思っていたから。シエルはゆっくり彼らに近づき丁度話が途切れたタイミングを見計らって「こんにちは」と声をかけた。


「すみません。ちょっと失礼。今お時間よろしいですか?」


「えぇ、構いませんよ」


  上機嫌そうな男たちにシエルは心の中でガッツポーズをする。これはいける。シエルは笑顔を浮かべたまま「…実は」 と続ける。


「人を探しているのです。私がお仕えしているお嬢様のご友人なのですが、なかなか見つからなくて…。マリー=レゾニック様という方なのですがご存知ないですか?」


「マリー=レゾニック…??」


 一人の長身の男が考えるように名前を復唱するともう一人の眼鏡をかけた男が「あぁ、」と呟いた。


「レゾニック家のお嬢さんだろ?ほら、よく噂聞くだろう」


  眼鏡の男がそう言うと長身の男も思い出したように 「あぁ、あのレゾニック家のか!」と言った。途端に彼は苦虫を噛み潰したような顔をした。そして当たりをキョロキョロと見渡してからシエルに耳打ちをする。


「悪いことは言わない、あの家とは関わらないほうがいいよ」


「……と、言いますと?」


  これはいい話が聞けるーー。シエルは心の中でほくそ笑む。

 男2人は顔を見合せてから眼鏡の男が「内緒にして欲しいんだけど…」と言ってから続ける。


「レゾニック家の当主は代々冷徹な人間でねぇ。その家に産まれた娘は人質として敵国に送られるし、その家に嫁いでくる嫁さんも使えなくなったらすぐに切り捨てる。利用できるものはなんでも利用して、利用できないものはすぐ捨てる。そんな家だよ。あんたが仕えてるお嬢さんももしかしたら巻き添いくらうかもしれないぞ?それにマリー公爵令嬢がどんなお方なのかもよく分からない。あの当主の大事な嫡子だ。同じような残忍な性格をしているかもしれない」


  レゾニック家の評判が悪いことは知っていた。しかしそれはあくまで当主や先代の評判であり、マリー自身の評判ではない。彼女自身がどんな人物なのかを知りたいのだがどうやらそれを彼らから引き出すのは不可能そうだ。ここは何も知らない振りをした方が利口だと思ったシエルは「へぇ、そうですか……」と言って続ける。


「ヤブなことをお聞きしますがマリーお嬢様以外に公子様はいらっしゃらないのですか?私が仕えているお嬢様のためにもマリーお嬢様について、もう少し知っておきたくて...」


 ならばマリー=レゾニックの身内を探ろうと質問する。もしこのパーティーに出席していたとしたらそこからも何か情報を得られるかもしれない。眼鏡の男は「そうだなぁ、」と呟いて答える。


「側室との子は沢山いるらしいが、正室との子はマリー公爵令嬢だけらしい。マリー公爵は難産で産まれたようで、どうやら子を作れない体になってしまったそうだ。その後割とすぐに亡くなったよ」


「……へぇ、では跡継ぎは庶子が?」


「いや、どうだろうね。今の当主は正室の子でないと跡継ぎにとは考えていないと仰っていたらしい。正室は強い能力を持ったヴァンダーしかなれないそうで、跡継ぎもヴァンダーでないといけないと決まっているんだ。現段階の側室は家柄がいい娘ってだけでヴァンダーではない。庶子はあくまで使える駒としか思っていないだろうね。もし庶子にヴァンダーが産まれればその子が当主になる可能性はゼロではないだろうけど、どうだろうね。まあ大方、次の正室を迎えて、産まれた子が当主になると思うよ」


  そんな大層な話をこうもペラペラと。もしここにレゾニック家と密接な関係である者がいたらこの男の命は危ういだろう。


「(ま、いっか)」


 シエルには関係ない事だ。それより面白い話が聞けて万々歳だ。役に立つかどうかは分からないがこの調子でもっと引き出していこう。この男たちの口の軽さには感謝である。シエルは内心ニヤリと笑って続ける。


「それではマリーお嬢様は?正室の子だとしたら、大切に育てられそうなものですがあまりいい噂は聞かないですよね……」


「そうだな。マリー公爵令嬢はヴァンダーではないらしいし、庶子よりも酷い扱いを受けているんじゃないかな。庶子は子供の頃から養子に出されたり婚約させられたり雑に扱われているから、その家によってはレゾニック家にいるより幸せになっている子も多いらしい。しかしマリー公爵令嬢は言わば”一番質のいい駒”だ。そう簡単には手放さないだろう。1番いいタイミングでいいように使うさ」


 男達は可哀想だ、とうわ言のように呟きながらワインをすする。


「(………可哀想なのに何もしないんだぁ)」


  それもそうか、と思った。赤の他人のために助けてあげる義理は彼らにはないだろう。だからといって彼らが口癖のように呟く”可哀想”という言葉は偽善なのではないかと思った。そんなことを目の前の男が考えているとはつゆ知らず、長身の男が「そういえば」と言った。


「レゾニック家のお嬢さん、今日出席してるんだってな?」


「はい。そう聞いてますが…」


  男は不思議そうな顔をして「そんな話聞いてないな」と言った。


「そんな有名な家の娘が出席してたらもっと騒ぎになってるところなのにな?」


「そういえば最近はお嬢さんに全く会わないなぁ。小さい頃に数回見ただけか?よくパーティーには出席してるらしいけど印象ないよな」


「なんて言うか……”影が薄い”んだよなぁ」

 

  なるほど、これが”存在の消える髪飾り”の力ということらしい。今回の情報もガセネタではないようだ。尤もシュシュからの情報で間違っていたことはないのだが。シエルは「へぇ、」と呟いて続ける。


「今日も出席されてるでしょうから、どこかですれ違ってるかもしれませんね。今日も見てないのですか?」


「そうだなぁ、見てないなぁ。すれ違ってたら流石に気づくと思うけど、うろ覚えだしなぁ」


「でもそう言われると不思議だよな。パーティー会場がいくら広いからってそんなに会わないことあるか?」


「確かになぁ…」


  男二人がんー、と唸っている様子をしりめにシエルはワインを1口すする。


「まるで透明人間のようですね」


  タイミングを見計らってポロッと呟くと、男達はバッとシエルを見て大きく笑った。


「そうだな!まさにそんな感じかもしれないな!」


「そう言われたら納得するな。それくらい気付けないもんなぁ」


  何が面白いのか。「ワッハハ!」と陽気に笑う2人に「そうですか…」と呟く。


「ありがとうございました。とても助かりました。それではパーティーを楽しんで」


  もうこの男達から引き出せる情報はない。それに情報としては十分だ。そう思ったシエルはさっさと会話を切り上げて退散することにした。すっかり陽気になった男達は「そちらこそ、見つかるといいな!」と笑いながら言った。

 さて、シャルロットのところに戻ろう。相手は透明人間レベルで存在感のない相手らしい。この難敵をどう攻略するか作戦会議をしなければ。


「(………はぁ、やっぱりルカは人使いが荒いなぁ)」


  今回も大変な任務になりそうだ。張り付いた笑みの裏側でひっそりとため息をついた。


 

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