42 戴冠式と王配 END
元の世界へ帰って知ったこと。母が会社を立ち上げていた。
元々行動的な人だったけれど、それには驚いた。まだ詳しく聞いてないけど、俺と愛里は応援した。父が背中を押して実現したようだった。
「へえ! すごいね!」
小説家の父は変わらず、穏やかに微笑んでいた。
「カケル、聞いたわよ?」
一晩、久しぶりに自分の部屋のベッドでぐっすり眠った朝。母が俺に、朝ごはんを作ってくれたときに言われた。目玉焼きを口に入れていたので、もぐもぐと咀嚼した。
「なにを?」
「アリシア姫様の事!」
きっと愛里が、異世界であったことを色々話したのだろう。二人は姉妹のように仲がいい。
「うん」
誤魔化していても仕方が無い。ちゃんと言うつもりだった。
「俺は向こうの国で、力になるつもり」
ご飯が美味しい。俺は久しぶりの母の作ったご飯を味わっていた。厳しいことを言われるかな? と思ったけれどそれはなかった。
「そう。頑張んなさい! 向こうへ行き来できるなら、私も行きたいわ」
ふふふふ! と笑っていた。なんだろう。何か張り切っているような?
「お母さんはアリシア姫がお嫁さんになるの、嬉しいって」
愛里がキッチンから飲み物を持ってきて、リビングの椅子へ座って言った。
「えっ!? お嫁さん!? ぐっ、ゴホッ!」
突然言われて、喉へ詰まりそうになった。愛里の方へ見ると、飲み物をゴクゴクと飲んでいた。
「ごちそうさま!」
俺は急いで残りを食べて片付けて、リビングを後にした。
学校はちょうど、長い休みに入ったところだったから良かった。こちらの世界に戻ってきて魔法とか、力は使えなくなるのかなと思ったけれど、こちらでも使えてる。
父や母は、元の力 勇者と魔王の強力な魔法は使えなくなったけれど、少しは使えていると聞いた。俺達家族はこちらの世界では魔法を、緊急時以外では使わないように決めた。
その後……。
俺は剣をもっと極めたくなって、剣道やその他の道場に通った。高校と大学卒業後は、母の会社に就いて経営的なものを学んだ。
毎日異世界に行って、あちらで帝王学をアリシア姫と学んだ。ほぼアリシア姫は学習が終わっていたので、俺に付き合う形で一緒にいた。
そして数年が経ち……。アリシア姫の戴冠式が行われることになった。
「アリシア姫……じゃなかった。アリシア陛下が、私の義理姉になるなんて嬉しい!」
愛里は綺麗に正装をしたアリシアを見て、嬉しさを爆発させていた。
「私も嬉しいわ、愛里さん。よろしくお願いします」
数年経ち、ますます美しくなったアリシアは愛里に微笑んだ。愛里はこの国で聖女として働くことになった。
「そろそろお時間になります」
トントンと扉が叩かれた。控室にいる俺達を呼びに来たのは、ジョーさん改めジョーンズさん。今はアリシア陛下付きの護衛騎士となった。
「準備は出来てます。そちらの安全確保、お願いします」
扉の近くで護衛していたサラサさんが返事をした。サラサさんもアリシア陛下付きの護衛騎士になった。
「行こうか」
俺はアリシアの手を取って話しかけた。代々引き継がれた豪華な即位式の衣裳は、アリシアにとても似合っていた。
「ええ」
スッと椅子から立ち上がったアリシアは、気品があって美しかった。
「お兄ちゃん。アリシア陛下のこと、ジ――ッと見すぎ! ふふ!」
愛里に、からかわれて気がついた。確かに見惚れていた。
「お綺麗ですものね。カケル様も素敵ですよ」
サラサさんはそう言ってくれた。
愛里とサラサさんが、アリシア陛下の長いマントの裾を持った。ジョーンズさんが扉を開けてくれた。
大聖堂というのか? 広いこの場所には臣下達がそろっていた。
現陛下からアリシアに冠が乗せられた。荘厳で壮麗な儀式だった。
「この時より、アリシアに王冠を渡す。その身をこの国に捧げ、より良い平和な国にすると誓え」
「誓います」
パチパチパチパチ――! わああああああああ――――っ!
大聖堂中は拍手と歓声が上がった。
「そして勇者 カケル。そなたはこのアリシアの|王配《おうはい 女王の配偶者》となる。こちらへ」
わぁああああ――――!
呼ばれてアリシア陛下の隣に並ぶ。更に拍手と歓声が大きくなった。
「二人と仲間達、そして臣下や民。皆でより良い国にしていってくれ」
「「はい」」
いつまでも大聖堂に、拍手と大歓声が響いた。
俺達は即位を祝うパーティーの場にいた。
「お兄ちゃん。背が伸びて筋肉も前よりついて、カッコ良くなったよね~!」
愛里に言われて俺は「そうか?」と答える。筋トレや剣の練習をしっかりやったから自然についたけど。
「ああ。立派な青年になった」とジョーンズさん。
「アリシア陛下とお似合いですわ!」
サラサさんが褒めてくれた。
「ええ。素敵です」
「アリシア」
アリシアに言われて嬉しかった。
「もう! 仲が良いんだから!」
愛里は俺達の仲が良いのを嬉しそうにしている。
「これからもよろしく!」
「これからも、よろしくお願いします」
皆の笑顔を見ながら、この国を皆で守っていこうと誓った。
~END~




