41 ハッピーエンド
部屋から出てアリシア姫を探した。何となく中庭にいる様な気がして、足を向けた。
何人か廊下ですれ違ったけど、壁際に逸れて頭を下げられた。変だなと思ったけれど今はアリシア姫を探すのが先だ。
姫が部屋を出てからそんなに遅れてないのに、姿が見えない。もしかして移動魔法を使ったのか? そんな時、声が聞こえてきた。
「ソラちゃん、あなたはいいコね」
わん! わん! というソラの鳴き声と、楽しそうなアリシア姫の声が聞こえた。
そっと近づいて行くと、笑っているけど寂しそうなアリシア姫が見えた。ソラを撫でているけれど、違うことを考えているようだった。
「アリシア姫」
俺が声をかけると姫はビクッ! と震えた。そおっ……と俺の方へ振り向いた。
「カケル様……」
「どうして部屋から出て行ったの?」
ソラを撫でながら姫様に言った。シュンとして下を向いてしまった。
「何か失礼な事をしてしまったかな?」
礼儀作法とか貴族のサラサさんに教えてもらっているけど、まだまだだし。
「いいえ! 失礼なことなど、ありません」
アリシア姫はちょっと涙目で、違うと言った。
「ソラ、お散歩しておいで」
そう言うと、ソラはお散歩に行った。姫の事が気になる。
「立ち話するのもあれだし、あそこのベンチに座りませんか?」
お城は広く、中庭に花が咲き乱れている場所がある。そこにベンチがあった。誰もいないし、ちょうどいい。
「はい」
姫は静かに俺の後をついてきた。
俺は花なんて詳しくないけど、花の良い香りがした。綺麗だったけれど、姫が座る場所に俺のハンカチを敷いて座ってもらった。
「ありがとう御座います……」
何だか元気がない。俺は何を言っていいか悩んだ。
「あのっ……「カケル様」」
被ってしまった。俺は姫様からどうぞと勧めた。
「……帰られるのですね」
寂しそうに姫は言った。俺は横に座っている姫を見た。
「愛里様とも、せっかく仲良くなれましたのに……」
そう言い、また下を向いてしまった。――そういえば言い忘れてたことがあった。
「あ、の……」
言い忘れてたことを説明するのに、考えてた。すると姫が……。
「寂しいです」
横に座ったアリシア姫がこちらを向いてそう言った。ちょっと涙目の姫は、長いまつ毛まで見えていて、整った顔が近くていい香りがして俺は混乱していた。
「帰ってしまったら、もう会えなくなるのは悲しいです……」
姫の青い瞳が潤んで、今にも涙が流れそうだった。
「ちょっと待って」
「え?」
俺は頭の中を整理して姫に説明した。
「……アカツキを倒したときに、やつの中から落ちた大きな【魔獣石】を拾ったんだ」
これ……と、袋の口を少し開いて、大きな手のひらサイズの【魔獣石】を姫様に見せた。
「こんな! こんな、大きな魔獣石を見たことありませんわ!」
「触ってはダメですよ」と姫に注意する。
「俺と愛里が帰るためには、魔獣石をたくさん集めないといけない。それが、この大きな魔獣石一つで、十分すぎるくらいの力を持ってることがわかったんだ」
魔封じの袋の中に入れているおかげで、闇の魔力の影響が封じられている。
「はい……」
姫様は俺の説明を大人しく聞いていた。
「一度だけではなく。何度も行き来できる力の魔力が凝縮されているわけで、俺と愛里の力も加えれば、永久に行ったり来たりできるんだ」
俺はにっこりと笑った。
「つまり。いつでも会えるんだ」
ドン!
「もう! 分かったなら、早く知らせてください! カケル様」
アリシア姫は俺の胸に勢いよく飛び込んできた。
「アリシア姫……」
アリシア姫は泣いていた。いつも戦いの場でも、ぐっと涙を堪えていたアリシア姫。泣かせてしまった。
「ごめん」
俺はアリシア姫が泣き止むまで抱きしめていた。
愛里と一緒に、帰る日になった。お城の皆が見送ってくれることになった。
「学生なので、ちゃんと勉強します! 時々、遊びに来ますので連絡しますね!」
愛里は明るく皆に伝えた。元の世界に帰っても連絡ができるように、大きな通信用の水晶の結晶を貰った。これなら部屋に飾っておいても、怪しげなものに見えないだろう。
「うむうむ。しっかり勉強しなされ。寂しくなるので、一日一回は連絡するんじゃよ?」
「そうじゃな。儂の所にもお願いしよう!」と、ドクトリング様とホウトリング様は愛里に言った。
「それ、多すぎです!」
サラサさんが二人に注意した。皆に笑いが起こった。
「俺も連絡する! いつでも呼んでくれ」
これからこの国は、平和に向けて皆で頑張らないといけない。俺は、その手助けができたらと考えている。皆に伝えた。
お城の外で皆が並んでいる中、アリシア姫が一歩出て俺の前に立った。
「私も、これからこの国のために頑張りますわ。カケル様もお元気で……」
姫様はぎこちなく俺に笑みを見せた。まるで永遠の別れみたいだ。いたたまれず、俺は姫様の手を取った。
「アリシア姫」
「は、はい」
急に手を取られて驚いたアリシア姫。その他の人と、お城の人達は俺とアリシア姫に注目した。
俺はアリシア姫の手を握ったまま、ひざまついた。
「今は何も知らないけれど……。アリシア姫と一緒に、この国を良くしていきたい。君が背負った大切なものを、俺も一緒に背負っていきたい」
うまく言葉を考えられなかったけれど、本音を言えた。
「えっ!? それって……プロポーズ!?」
愛里が両手で口を押えて言った。
「もっと大人になってから、それは改めて言いたい。いいかな? アリシア姫」
周りでは、きゃぁぁ――! と黄色い声が聞こえた。姫は頬を染めていた。ジッと見ていると、コクンと頷いて。
「はい」と返事をしてくれた。
わぁああああああああ――――! と歓声が上がった。
「おめでとうございます――!」
「勇者様と姫様が! 素敵!」など聞こえてきて、歓迎されているようで良かった。
「取りあえず、一度戻ってみる。待ってて」
「はい」
俺は立ち上がって姫の両手を握った。お互いを見て、微笑んだ。
「では、私とお兄ちゃんは一度帰ります!」
愛里が皆に手を振って挨拶した。
「気をつけてな――!」
ドクトリング様、ホウトリング様。陛下や臣下の者達、騎士さん達。ソラや精霊達も見送ってくれた。
皆から少し離れて愛里とお城の前に立った。
「愛里、行くぞ」
「うん。いつでもいいよ。お兄ちゃん」
【魔獣石】の上に、二人の手を合わせて魔力を高めた。すると足元に金色の魔法陣が現れて光始めた。
眩しい光は二人を包んで、そして消えた。
「カケル! 愛里!」
懐かしい声が聞こえた。俺と愛里は元の世界、自分たちの家へと戻ってきた。
「お帰りなさい!」
「お帰り」
父と母の変わらない声。
「「ただいま!」」
俺と愛里は父と母に再び会えた。帰ってきた。




