38 ②
ゴォオオオオ! と何でも燃え尽くす、マグマのような熱い塊が迫ってくる。アカツキの憎悪が形になって襲って来るようだった。
俺は勇者の剣を強く握り、片手を剣身に添えて真っすぐ自分の前に立てて構えた。
「 “守りの盾” !」
魔力を巡らせると、精霊たちが力を貸してくれた。
勇者の剣から淡い光がクルクルと渦を巻いて、全身を覆った。霧状の水のカーテンが何重にも周りを覆い、その上を大きな熱い円状の膜が張った。
「くっ!」
バシ――――ンッ! バリバリバリバリ!
足の裏が地面にめり込むような衝撃が来た。精霊たちの力で、衝撃や熱さは軽減されている。それでもチリチリと、剣を握っている手に熱さを感じた。
円状の精霊の結界は壊されず、アカツキの放った闇の魔力の塊はそれから二つに分かれて周辺を破壊して通り過ぎて行った。
力を抜くと精霊の結界はフッ……と無くなった。ヒリヒリしている指を見ると、軽く火傷をしていた。結界が無ければ、この軽いやけどでは済まなかっただろう。ゾッとした。
「えっ!?」
後ろを振り向くと、俺がいた円状の結界の地面だけが綺麗に残っているだけだった。城門前から続く森は、ほとんど焦土となってしまった。魔物や魔獣達までも跡形なく焼かれた。
「はぁはぁ……。ちっ! 堪えたか……」
アカツキは同じ闇のもの、魔物や魔獣達が自分の力で消滅させたことを、気にも留めてなかった。
凄い力だ……。これがお城の方に向かっていたらと、冷汗が流れた。
「アカツキ! どうしてそんなに憎んでいる? この国や、俺さえも!」
まるで破壊を楽しんでいるようなアカツキ。同じ故郷の者とは思えない。
「うるさい! お前なんかにわかるものか!」
「うわっ!」
両方の手に持った片手剣をアカツキは、左右に力を込めて振った。左側と右側に地面をえぐる程の衝撃波を放った。俺は左側の衝撃波をかわして、右側の衝撃波を剣で受け流した。
ガッ! バシュッ! ガタ――ン! バタバタ……。
右に逸れた衝撃波が木々をなぎ倒していった。
「俺はこの世界に無理やり召喚されて、奴隷商人にいきなり掴まって奴隷にされて生きてきた! 食事もろくにさせてもらえず、鞭で叩かれて働かされてきた!」
アカツキが、憎しみこもった声で俺に話しかけてきた。召喚後に奴隷? そんな……!
「魔法使いオンブルに買われてからは、力を与えてやるから魔物や魔獣を操ってこの国を混乱させろと……」
魔法使いオンブルがアカツキに、力を与えていたのか……!
「力を貰えたのはいいが、体全身に激痛が襲った! 俺に言う事を聞かせるために!! なあ!? 魔法使いオンブル!!」
アカツキの体の周りが黒く渦巻いていく!
「命令されて俺達を襲った?」
そうなのか? アカツキは命令に逆らえなくて町や村、お城や俺達を襲った?
「それは違うな……! 皆、憎くて襲ったのさ!」
「アカツキ……!」
闇の魔力が増えて、アカツキの周辺が嵐のように激しい風が吹き上げた。激しい風に髪の毛や服がバタバタと動いた。
「ふん! 魔王の器にふさわしかったからな……。勇者が代替わりしたのは、誤算だったが! 邪魔な勇者を、やれ! アカツキ!」
魔法使いオンブルは俺に向かって、蛇の形の攻撃魔法を唱えた。
「やめなさい! 魔法使いオンブル!」
大きな炎の魔法がオンブルを攻撃して、詠唱がとまった。
「カケル様! 魔法使いオンブルは、私が動きをとめます!」
アリシア姫様が魔法使いオンブルに向かって、炎の攻撃魔法を撃った。オンブルは油断していたらしく腕に直撃していた。
「ぐぅうううう……」
魔法使いオンブルは腕をかばって唸り声をあげている。
「アリシア姫! サラサさん!」
サラサさんの姿も見えて安心した。二人とも無事で良かった!
「お兄ちゃん!」
「愛里! ジョーさん!」
愛里とジョーさんも無事に戻って来てくれた。皆、揃ってホッとした。
「姫! アデル王子を拘束して、安全な場所に閉じ込めてきました!」
ジョーさんがアリシア姫様に大きな声で伝えた。姫は一瞬だけホッとした顔をして、それから厳しい顔に戻った。
「良くやってくれました。後ほど陛下の御前に」
姫がジョーさんに王族らしく伝えた。アデル王子……拘束されたか。きちんと役目を全うしていればこんなことにならなかったのに、なぜ。
「ちっ……。アデル王子奴め!」
魔法使いオンブルはアデル王子をなじった。元はといえばこいつが元凶だ。
「許せませんわ……!」
アリシア姫様はオンブルを睨んだ。
「師に歯向かうのか……!? アリシア姫!」
魔法使いオンブルとアリシア姫の、魔法での戦闘が始まった。
「パーティー限定肉体強化魔法!」
アリシア姫様は俺達、パーティー限定の肉体強化魔法をかけてくれた!
「守りの風――!」
今度は愛里が俺達に防護魔法をかけてくれた。助かる! 精霊達と愛里は相性がいいみたいで、俺には倍増効果になった。
「ありがとう! アリシア姫と愛里!」
二人はこちらを見て微笑んだ。
「それが気に食わない……。仲良しごっこ、慣れあい、助け合い、か!? 美しすぎて……笑うわ!」
アカツキは憎悪を隠そうとせず、俺に言った。アカツキから闇の魔力から出ている暴風は、二人の魔法で軽減された。……が、油断できない。
「俺が、それを……こ わ し て やる!!」
すごいスピードで俺に切りかかってきた。
「俺様が! この世界を、壊してやる!!」
アカツキの目は血走ってて、本気でこの世界を滅ぼそうとしているのを感じた。
俺が、とめなければ……!
アカツキからあふれ出す、巨大な闇の力を全身で受けて決意した。
読んでいただきましてありがとう御座います!
完結まで予約投稿しています。気に入っていただけたら、励みになりますので評価等お願いします。
よろしくお願いします。




