37 愛里(視点) 聖女の役割①
~愛里 視点~
私とジョーさんは、臨時の救護所を教えてもらった。中庭から入って、救護室と中庭まであふれたケガをした人を聖・魔法で治したので次の場所へ行く。
「残りの魔力は大丈夫か?」
ジョーさんは私の魔力の残りを心配してくれた。魔力が切れると命にかかわるのは、ここの世界でも同じだった。ファンタジー小説が好きだったから同じ設定で助かっている。
「ほんの少しだけ減ったぐらいなので、大丈夫です!」
「そうか。無理するなよ」
聖女だからなのか、魔力量が驚くほど多くて良かった。まだまだ聖・魔法を使えそうだ。
「あ! 聖女様!」
私がお世話になっていた教会にたどり着き、扉を守っていた騎士さんの許可をとって扉を開けると、大勢の人が集まっていた。先ほどの救護室にいた人たちは、戦ってケガをした騎士達がほとんどだったが、こちらにはお城で働いている人が避難して集まってきた人たちだった。
「来てくださったのですね!」
「聖女様!」
わっ! と人が集まってきた。心細かったのだろう。中には泣いている人もいた。
「騎士さん達が、魔物達をお城の前で戦って止めて下さってました。ケガをした方は私が治療しましたので、ご安心なさってください。勇者パーティーが闇の者と戦います。皆さまは、お城から避難してください!」
私は万が一、お城に魔物や魔獣達が侵攻してきた場合と、お城そのものが崩れた時を想定して皆に避難をお願いした。
「おおおお……! 勇者様のパーティーが、闇の者と戦っていると!」
「アリシア姫様も!」
「助かるぞ、俺達!!」
わぁぁぁぁぁ! と声援が上がった。皆、嬉しそうに笑っている。
「あんた……以前、騎士をしていたジョーンズ様だろ? 無実の罪でやめさせられた……」
一人のおばさんがジョーさんを見て言った。無実の罪?
「あんたほど優しい騎士さんはいなかったよ。それなのに……」
おばさんはジョーさんの背中をそっと触れた。
「ありがとう。その言葉、嬉しいですよ」
ジョーさんがお礼を述べると周りの人も覚えていたのか、うんうんと頷いていた。
その時。
バリバリバリバリ! ビシッ――! バァ――――ンッ! という物凄い爆発音が聞こえてきた。
「きゃあぁ――!」
遅れて、ドン! と振動がここに響いた。
「今すぐに、避難してください!」
このままお城の中にいると危ない。お兄ちゃんが負けるはずはないけれど、建物までは守れない。私はジョーさんと、皆をお城の中にある教会から避難させた。
「う、ワン!」
「え? ソラちゃん?」
皆と避難して外に出たら、お兄ちゃんと仲良しのソラちゃんがしっぽを振っていた。
「どうしてここに? お兄ちゃんから何か頼まれたの?」
私がソラちゃんに聞くと「ワン! ワワン!」と返事をした。ソラちゃんは伏せの体勢になって、首をクイッと背中側に向けた。
「えっと……? もしかして背中に乗せろってこと?」
「ワン!」
正解したらしい。
「え?」
ドスン! と地響きしたのでそちらを見ると、乗ってきたドラゴンまでいた。
「きゃあ! ド、ドラゴンよ! 逃げて!」
女の人が怖がって叫んだ。皆、怯えている。でもこのドラゴンは、私達を乗せて来てくれたコ。
「大丈夫! この子は勇者をお城まで乗せてきた、良いコです!」
私が言うと聖女様がそう言うなら……と分かってくれた。
「あ、あなたも。皆を、助けてくれるの?」
恐る恐る聞いてみた。するとドラゴンは、大きな体を動かして伏せをした。
「ありがとう。皆をお願いね!」
私が言うとギュル! とドラゴンは鳴いた。返事をしたのかしら?
「お城から離れた場所に、【お城を見渡せる丘】がある! そこを目指してくれ!」
ジョーさんは避難場所を決めて、皆に行くように促した。
「はい!」
皆は慌てる様子もなく落ち着いてソラちゃんの背中や、大人の人がドラゴンに乗って避難を始めた。
「良かった。聖女である君が避難を誘導したから皆、安心して落ち着いて避難できた」
ジョーさんが私を褒めてくれた。そうなのね……。聖女はそんな役割もあるのだと気がついた。皆の心を落ち着かせるのも、役割の一つなのね。
「よし。皆、避難したな」
それぞれ何回かに分けて避難できた。皆、協力していたので早く避難できたのだろう。
「俺達は、カケルの所へ合流しよう!」
「はい!」
皆が避難し終ったのを確認して、お兄ちゃんの所へ戻ろうとした。
「あっ!? 痛い!」
突然、私の髪の毛を誰かに掴まれた。そしてグイと引かれた。痛いっ!
「ちょうどいい所にいたな、聖女アイリ!」
私の髪の毛を掴んだのは、アデル王子だった。
「アデル王子!? 愛里様を離してください!」
驚いたジョーさんがアデル王子に言った。なぜアデル王子がここに?
髪の毛を掴まれながらアデル王子の方へ向いてみて見ると、返り血と思われる赤い血が服についていた。
「王が……。私を次の王に相応しくないと言った。おかしい、だろう?」
わなわなと震えていた。
「まさか、王様を……!?」
返り血を見て口に出た。アデル王子は表情を無くした顔で私を見た。
「殺してしまっては、次の王へ指名できないからな」
そう話したアデル王子にゾッとした。
「聖女と婚姻を結べば、王になれる! 聖女アイリ。俺と結婚するんだ!」
グイッと髪の毛を引っ張られた。
「痛い……っ!」
アデル王子の手を離そうとしたけれど、届かなかった。痛みを堪えて、私はアデル王子を睨んだ。
「この国で一番、偉い女性になる。贅沢できるし、何でも買っていいぞ? 宝石やドレス、なんでも手に入る……!」
はははは! と笑いながら私の髪の毛を掴んだまま離さない。ジョーさんは遠巻きに私を助ける機会を狙っていた。
「お断り、します!!」
私はアリシア姫様に危険な者から守る、魔法を習っていた。
『静電気を利用した、電撃よ』
服を手で強くこすって一か所に集め、魔力を合わせて放出する危険な魔法だ。加減すれば問題ない。
ビリビリビリビリ!
「うぎゃあ! ああああ――っ!」
ドサッ! アデル王子は静電気……電撃にしびれて床に倒れた。
「あ、ちょっとやりすぎたかしら!?」
白目を剥き、泡を吹いて倒れている。
「このくらいで、いいです。聖女様に失礼をしたのですから!」
ジョーさんはとても怒って、気絶しているアデル王子に吐き捨てるように言った。そしてどこからか探してきた縄で、アデル王子を縛った。
「危険のない様な所へ転がしておきましょう」
ジョーさんは、アデル王子を担いでどこかに置いてきた。
「さあ、俺達はカケル殿の所へ行きましょう!」
「ええ!」
私とジョーさんはお兄ちゃんの所へ、急いで向かった。




