アリシア姫 (アリシア姫視点)
~アリシア姫 視点~
「お城に大勢の魔物や魔獣達が襲ってきているのに、お兄様は何をなさっているの!? それにお父様とお母様はどちらにいらっしゃるのかしら? ご無事だと良いのだけれど……」
早足で、でも優雅に私は急いでいた。
「……お城の中を護衛している騎士の数が少ないです。姫様」
サラサはお城の護衛騎士達の数が少ないと、私の後ろから話しかけてきた。魔物や魔獣達の制圧に行ったとはいえ、確かにお城の中を守る騎士が少なすぎる。
「何も無ければいいけど……」
私はキュッと唇を噛んだ。お城前には魔物や魔獣達、姿を見せない兄。
怖気ついて部屋に閉じこもるような、そんな兄じゃない。どちらかといえば目の前の魔物を、躊躇なく切り刻んでいく性格をしている。その兄がなぜ姿を見せないのか。
私とサラサは玉座の間へ急いだ。
廊下を急ぐ途中から、騎士が倒れているのが見えてサラサが抱き起こしてどうしたのか聞いた。
「大丈夫ですか!? なにがあったのです!?」
私も倒れている騎士に近寄った。騎士は見た所、傷は浅く数カ所殴られた痕があった。
騎士は抱き起こしたサラサではなく、私に話しかけてきた。
「ひ、姫様……。アデル殿下が……、陛下と皇后様を拘束し、お部屋へ軟禁なさりました……」
騎士は傷を痛がりながら私に伝えてくれた。
「なんですって!?」
「アデル殿下が!?」
まさかと思いながら、傷ついた騎士が嘘をつくはずがない。そんな、お兄様……!
「どこの部屋へ、陛下は軟禁されている?」
サラサは騎士に陛下の居場所を聞いた。私は杖を空中から取り出して、愛里様ほどではないが回復魔法を傷ついた騎士にかけた。
ポゥ……と光が杖に灯り、騎士に降り注いた。
「あ……! アリシア殿下、ありがとう御座います!」
どうやらうまく回復魔法が効いたようだ。
「陛下のお部屋で御座います……! どうかお気をつけて下さい!」
騎士は廊下の壁に寄りかかって休んだ。傷は回復したけど、まだつらそうだ。
「貴方はここで休んでいなさい」
私は騎士を残して、先を急いだ。
父と母の部屋。親子といえ、気軽に入れる場所ではない。部屋に着くと、護衛が必ずいるはずなのに見当たらない。
「お父様、お母様!? いらっしゃいますか!」
厚い扉をドンドンと叩いて様子をうかがう。……返事はない。
「姫様、中へ入りましょう!」
サラサが剣を抜いて扉をそっと開く。
「んん、ん――!」
「ん――!」
窓際近くに父と母は口に布、胴体と後ろ手に縄で縛られていた。
「お父様! お母様!」
私は父と母の元へ駆け出した。サラサが、部屋の中にあやしい者が潜んでいないか調べている。
「なんてひどいことを! 今、縄を外します!」
私は口を塞がれていた布を取ってさし上げた。サラサが、部屋にあやしい者がいないことを確認してこちらへ来た。そして父と母が縛られていた縄をナイフで切ってくれた。
「ああ! アリシア! よく無事で!」
「お前が無事で良かった……」
父と母は、いつもと変わらない豪華な服装で縛られていた。夜とかではなく、日中に誰かに縛られたということだ。
「お父様、お母様。いったいどなたに、こんなひどい目に?」
私が二人に聞いてみると、顔を曇らせた。……違うと、いいなと思った。でも。
「アデル、だ。あの魔物や魔獣達を呼び出したのも、アデルだ!」
父が私の顔を真っすぐに見て教えてくれた。目の前が真っ暗になって、倒れそうになった。やっぱり、お兄様だった?
「姫様! しっかりなさってください!」
サラサに支えられて、私は倒れずに済んだ。今は、倒れている場合ではない。
「お兄様はどちらへ行きましたか、ご存じでしょうか?」
ふらりと立ち上がった父と母は、お互いの手を取って繋いだ。
「お前達がこの部屋へ入ってくる、ほんの数分前に出て行った。勇者を倒すと、馬鹿な事を言っていた」
父は、はぁ……と疲労の影を濃くして私に話してくれた。
「アリシア。どうかアデルを、とめて」
母は悲惨な顔をして私に願った。お兄様をとめる。それは……。
「生死は問わない」
父はこの国の王として、私に命令した。兄妹で戦う?
「アリシアが出来ないのならば、サラサ・オブライエン。お前が代わりにやれ。許可をする」
父は私に迷いがあるのに気がつき、サラサに命令した。
「畏まりました」
サラサは王である父に、ひざまづいた。お兄様は、それだけのことをした。父と母に。この国を危険にさらしている。裁判を受けるまでもない、重罪を犯した。
「お兄様だけでは、あのたくさんの魔物や魔獣達を呼び出せるとは思いません! 他の誰が……「魔法使いのオンブルだ」」
お兄様だけでは、あのたくさんの魔物や魔獣を呼び出せない。疑問に思った私は、まさかの人物の名を聞いた。魔法使いとしては厳しく、私は感情さえ無くすほどつらい修行だったけれど……。一から魔法を教えてくれた師。
「なぜ……!?」
ガッシャン!
叫んで、飾ってあった花瓶をテーブルの上から叩き落としてしまった。花瓶は床に落ちて割れてしまった。私は淑女とかけ離れた行動をしてしまった。
「落ち着きなさい、アリシア!」
父が私を宥めた。
「無理よ……。お兄様は私が捕らえます!」
私は、お城から城門前にいる勇者へ向かって行っただろうお兄様の後を追った。
「姫様! 私も参ります!」
私とサラサは両親の部屋から出た。心配そうに見守る父と母。
「オンブル師匠、お兄様!」
私はグッと涙をこらえて、サラサと走った。




