愛里 (愛里視点)
カケルとお城前で別れた後の、愛里と姫様 それぞれの視点からになります。
~愛里 視点~
「あんなにたくさんの魔物や魔獣達を前に、戦ってくれてありがとう御座います!」
お城の中庭まであふれ出ていたケガ人が目の中に入ってきて、私はその場にいる騎士達やケガをした人にお礼を言った。
「聖女様だ……!」「愛里様が来てくれた!」
「おい! ケガが酷い奴から看てもらえ!」
皆が私に声をかけてくれた。
「ありがとう御座います!」
ケガをしている人がいると知って、思わずお兄ちゃんの制止も聞かず走ってお城の救護室まで来てしまった。あとでお兄ちゃんに叱られると思うけど仕方が無い。
「ケガの酷い方から順番に治しますので、よろしくお願いします!」
わあ! と歓声が上がった。
今、私に出来る事は聖・魔法を使って皆を治すこと。もちろんお兄ちゃんや仲間の為に、魔力は残しておくことを忘れない。
「あ、愛里様! この者が一番ひどいケガをしています! 治療をお願いします!」
「はい!」
呼ばれて行くと、一番ひどいケガ人はあちこちに深い傷を負っていた。
「……すぐに治療します!」
私は将来、医師か看護師になるつもりで勉強してきた。こちらに来てからはドクトリング様の指導のもと、聖・魔法を使った回復魔法や治療の基本的なことから本格的な治療方法を教わっていた。だから大丈夫と、一度深呼吸してからケガ人の側に行った。
「せ、聖女様……」
あちこち深い傷を負った騎士は、縋るように私に視線を向けてきた。ゼイゼイ……と虫の息だった。
「今、聖・魔法で治療しますね」
呼吸も荒く、脈も弱々しい。早く治療しなければ危ない。私はそれを口に出さず、笑顔で話しかける。
「まずは傷口を綺麗にしますね。清浄!」
戦闘で色々と汚れているので、まずは全体を綺麗にする。手からキラキラと光があふれて、横たわっている深い傷を負った騎士の体全体に降り注いだ。
「おおー!」
救護室にいた皆が驚きの声を上げる。
「聖・魔法 回復……!」
このままでは命が危ない騎士の、全回復を強く願った。手のひらだけじゃなく私の全身から、ポウ……と光が溢れる。その光は横たわっている騎士の体を包んで発光した。
「あた、たかい……」
ゼイ、ゼイ……と苦しそうに息をしていた騎士は、目をつぶり微笑んだ。私は騎士を見ながら聖・魔法の魔力を調整しながら治療した。
「き、奇跡だ! あんなにひどい傷が塞がっている!」
付き添っていた騎士が、全回復した傷を見て驚いて言った。
「ありがとう御座います……! 妻やまだ生まれたばかりの子供にまた会える……!」
深い傷を負った騎士は全回復し、涙を流しながら私にお礼を言ってくれた。
「良かった。奥様やお子さんへお会いにいって下さいね。でも無理をしないで下さい」
ありがとうと涙ながらに言った。もう大丈夫だろう。
わぁぁああ!
その場にいた皆が喜んだ。でもまだひどいケガ人がいる。
「いっぺんに、清浄&聖・魔法をかけます」
お兄ちゃんや皆も気になるし、他の場所のけが人も回復させたい。皆が「え?」というような表情をしていた。説明を省いてケガ人全員に聖・魔法をかけた。
「聖・魔法 全回復!」
私は片手を上げて聖・魔法を唱えた。
「まぶしい……でも、暖かい光だ」
皆、不思議そうに上から降る光を手のひらに受け止めていた。深いケガを負って横たわっている物には全身に。
「ええっ!? ケガが……治っている!?」
この場所にいる者の傷が跡形もなく治ってしまっていた。
「全員に聖・魔法が降りそそいだと思うけど、治ってない傷があったら私の所へ来てください」
ふう……と息をついて、片手を降ろした。
「き、奇跡だ……!!」
「聖女様、ありがとう!」
救護室から中庭に溢れている軽いケガ人まで、すべての傷が治っていた。皆、涙を流しながら感謝を伝えていた。
「愛里様は凄いな」
そばで護衛していたジョーさんが話しかけてきた。私は皆の体に、どこも異常がないのを確認してから救護室から出て次の場所へ向かった。
「俺が見てもあの酷い傷を、目を逸らさず治療したのは偉かったな」
ポンポンと頭を撫でてきた。お父さんとお兄ちゃんの他に私の頭を撫でる人は初めてだったけれど、嫌じゃなかった。
「ありがとうございます……。でも、怖かったです」
「怖い?」
ジョーさんは怖い? と聞き返した。私は本当のことを言ってしまった。言ってから軽蔑されないか心臓がドキドキした。
「私の治療は間違いないか。さらにひどくならないかと……怖かったです」
聖女なのに。呆れるだろうか?
「そうか。でもそれは当たり前の感情だな。どんなに剣の稽古をして実戦を重ねても、怖いものは怖い。それを相手へ気取らせないようにするのも実力のうちだ」
「!」
ジョーさんは撫でて乱れた私の髪の毛を直してくれた。
「さっきの聖女様の態度はケガ人に安心感を与えた。あれでいい」
「今は正直に言っていい。俺や仲間達には遠慮しないで欲しい」
な? と言い、ウィンクした。私はその仕草をする人がいなかったのでフッ! と笑った。ジョーさんにその仕草は似合っていた。
「ありがとう、ジョーさん。緊張がとけた!」
緊張して強張っていた体の力が抜けた。
「そうか、良かった」
二人で移動しながら話していた。
「さっ! 次のけが人を治してカケル殿の所に戻ろう!」
「はいっ!」
私とジョーさんはケガ人のいる場所へ走って向かった。




