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家族全員異世界へ転移したが、その世界で父(魔王)母(勇者)だった…らしい~妹は聖女クラスの魔力持ち!?俺はどうなんですかね?遠い目~   作者: 青佐厘音


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35 ドラゴンに乗ってお城へ


 グルルルルルル……。

漆黒のドラゴンは着地すると、おとなしく大きな体を地面に伏せた。まさか本当にここへ来てくれるとは思わなかった。それにこんなに大きなドラゴンが、俺達を背中に乗せようと伏せをしているなんて信じられない。


 「ほれ! ドラゴンが待ってるから、早く乗ってお城に行くのじゃ!」

「あっ! はい!」

 ホウトリング様に言われて俺達は、ドラゴンの背中によじ登った。姫様と愛里の手を取り、登るのを手伝った。

「気を付けて行くんじゃよ! お城を……、この国を守っておくれ。みんな」

 ホウトリング様は、申し訳ない様な表情をして俺達に言った。

 

 ゴツゴツしていたので登りやすかったけれど、最初にドラゴンへ乗った時のように人間が乗る場所なんてないので掴まっているしかないようだ。怖いな。

 それにしても、ホウトリング様の家がつぶれなくて良かった。


 「こ、これ……。ドラゴンに掴まったけれど落ちそう……」

愛里が怯えて俺に話しかけてきた。

 「落ちないように、皆で固まって掴まろう!」

自分に言い聞かせるように言った。怖いのは皆一緒だ。


 俺が一番前に、ドラゴンの首の付け根らしき場所にまたがった。次は姫様。俺の胴に腕をまわして抱きついてもらう。良い香りがする……。抱きついてもらうのは、落ちないためだ。けして(よこしま)な事は考えて、ない。

 次に愛里、サラサさん。最後はジョーさん。

 「じゃ、ドラゴンに飛ぶようにお願いしてみるから! しっかり掴まってて!」

 「は、はい!」

 俺が皆に振り返って、しっかり掴まるように話すと姫様からすぐに返事があった。ちょっと怖がっているようだ。


 真ん中に座っている愛里とサラサさんは前の人の腰に、落ちないよう掴まって背中に顔をつけていた。この二人はドラゴン乗車(?)の経験済みか。

 ジョーさんは俺に向かって手を振った。準備オッケーの合図らしい。

 「では……」

 俺はコホンと咳払いをしてドラゴンに伝える。

「ドラゴン、お城まで運んでくれ!」

 俺がドラゴンの顔辺りに向かって言うと、首を動かして「ギャ、アァァン――!」と鳴いた。


 「うあ!」

「きゃああ!」

グラリとドラゴンの体が動いて、伏せの状態から起き上がった。皆、落ちないように掴まっている。姫様は怖すぎるのか何も言わず、俺にギュッと抱きついていた。顔が、にやけそうになるときガクン! とドラゴンの体が沈んだ。

 「沈んだ……? じゃなくて……!」

 覚えがある。これは飛び上がる前の……。


 グンッ!! ドラゴンは空へジャンプした。

 「きゃああ――! また――っ!?」

 愛里が悲鳴を上げた。むりもない。俺もまだジェットコースター並みの揺れに慣れない。

 「たのんだぞ――!」

 ホウトリング様の声がだんだん離れていき、ドラゴンは空へ上昇していった。


 「カケル様……」

ギュウゥ……と、姫様の手が俺のお腹の前で交差した。よほど怖いらしい。そして上昇が緩むとドラゴンはバサバサッと羽ばたきを始めた。今度は横移動だ。お城に向かって進む。

 「もう大丈夫だよ、アリシア姫」

 俺は振り返って怖がっている姫様に声をかけた。姫様は背中に埋めて(うず)いた顔を上げて、俺に微笑んだ。

 「はい……」


 いつもはしっかりとした姫様だけど、初めて乗るドラゴンはかなり怖かったらしい。愛里もまだ慣れてないし、ドラゴンに乗るのは特殊なんだなと思った。

 ドラゴンは安定してかなり速い速度で飛んでくれた。

下をそっと覗いてみると、歩いて来た道が見える。もうすぐ着くだろう。揺れもなく順調飛行なので皆へ先に話をしておく。


 「着いてからじゃ状況は分からないけど、俺は主に攻撃をする」

一番後ろに座っているジョーさんまで、ちゃんと声が聞こえているようだ。皆、俺の言葉に頷いている。

 「アリシア姫は、魔法攻撃と補助魔法。愛里は補助と回復」

 「はい」と愛里。「わかりましたわ」と姫様。

アリシア姫と愛里は返事をして頷いた。


 「そしてサラサさんとジョーさんは、攻撃と二人の補助をお願いします」

皆顔を上げて俺の話を聞いている。

「了解です!」

「了解した!」

 サラサさんはコクンと頭を下げた。ジョーさんは手を上げて答えた。どんな状況でも皆の役割は変わらない。全力で戦うのみだ。


 「あっ! お城が見えてき……た」

しばらく進んでお城が遠くに見えてきた。近づくに連れて、お城や近辺の様子がおかしいことに気がついた。お城の近くの森が、所々で火の手が上がっていた。

 「えっ!? あの動いている、たくさんの影は魔物や魔獣なの!?」

 姫様は、俺のお腹から両肩に掴まって下を覗き見た。そしてたくさんの、数えきれない魔物や魔獣がお城に進んでいるのを見てしまった。


 「そんなっ! こんなたくさんの、魔物や魔獣がお城に攻め込んだら……!」

愛里が真っ青になって叫んだ。目を凝らして見て見ると、もうお城近くで騎士達と魔物や魔獣達が戦っていた。

 「まだ間に合う! 俺達も一緒に戦えば、食い止めることも出来るかもしれない!」

ジョーさんは力強く、俺達に力づけてくれた。そうだ、きっと間に合う!


 「お城と、魔物や魔獣達の間に降りよう! お城を背にして戦う!」

俺が皆に言った。

 「そうしましょう! 騎士の皆やお城の人達も頑張ってくれているわ! 戦いましょう!」

 サラサさんは俺の目を見て話しをした。俺は後ろに振り返ったまま頷いた。


 「ドラゴン! 俺達をお城の前に降ろしてくれ!」

ギャアァァン――! 答えるかのようにドラゴンは吼えた。


  

 「アリシア殿下! いらしてくれたのですね!」

「姫様と勇者様達が来てくれたぞ!」

 わあぁぁぁぁぁぁ――! とお城の騎士達は歓声を上げた。

俺達は騎士達にお城の中に退避するように伝えて、皆がいなくなったお城の前へドラゴンに乗ったまま降り立った。魔物や魔獣達は突然の大きなドラゴンの出現に恐れおののき、お城より後退していた。

 

 「ドラゴンの威嚇で、これより魔物や魔獣達の侵攻はとめられています! けが人や逃げ遅れた人の救出を、優先的にして下さい!」

 俺達はドラゴンから降りて出来る限りの大声を出し、ここまで戦ってお城を守ってくれた騎士さん達に伝えた。

 「カケル殿! 了解した!!」

大柄の騎士が俺に了解と返した。ケガをして動けなかった者や、逃げ遅れていた者を救出しに向かっていった。

 

 「私はケガをした人を治してきます!」

愛里はそう言い、お城の中へ走って行った。俺は慌てて愛里を呼んだ。

 「愛里! 一人じゃ危険だ!」

愛里は俺の制止も聞かずに行ってしまった。

 「俺が行く」

ジョーさんが走って愛里の後を追ってくれた。魔物や魔獣達の侵入はまだ阻止されていたとはいえ、危険がないとは言えない。助かる。


 「ねえ、そこのあなた! 兄さま……アデル王子はどこに? 見当たらないのだけれど?」

 姫様が撤退してきた近くの騎士に声をかけた。俺は姫様の言った、アデル王子を探してみたが見当たらなかった。魔物や魔獣達がお城に攻め込んでいるのに、指揮を執ってないのか!?

「そ、それがその……」

 騎士はモゾモゾと言いにくそうにしていた。

 「ケガとかしたのか?」

「サラサ•オブライエン上官!」

サラサさんはハッキリ言わない騎士を我慢できず、割り込んで質問をした。


 「はっ! オブライエン上官! いえ、ケガはされてないと。ただお姿が見えないだけで御座います!」

 ピシッと背筋を伸ばして騎士は答えた。俺達三人は顔を見合わせた。姿が見えない? 

こんな非常事態なのに!?


 「何かあったのかしら? ……(わたくし)、父と母の様子を見て参りますわ!」

「あっ! ちょっと!? 待って!」

愛里の時のように静止の声を上げるが、姫様も聞いてくれなかった。

 「愛里様も、アリシア殿下も仕方が無いですね……。私が姫様についていきます!」

サラサさんが俺に頭を下げて、姫様について行った。

 「気を付けて!」 

 サラサさんは振り返って俺に手を振った。


 「俺、一人になったな」

 魔物や魔獣達が警戒して侵攻は止まっているが、お城前で騎士達とにらみ合っている状態だ。ドラゴンの威圧もあって魔物や魔獣達が下手に攻撃できない。

 お城の周りに広がる森のあちこちで、火の手が上がっている。それは魔物や魔獣達が破壊した跡で、数えきれない魔物や魔獣達が俺に敵意をぶつけて来ていて震えそうだ。

 

 「ウ、ワァン!!」

「いや、ソラもいるな!?」

 森の主でもあるソラは、元の大きさになって全速力で駆けて来てくれた……らしい。ハッ! ハッ! と大きな姿に戻って、荒い息をしてるので走ってきたのがわかった。凄いな、ソラ。

左にドラゴン。右に魔獣のソラ。俺の隣に並んで、大勢の魔物や魔獣達を威嚇してくれている。

 「ソラ! ドラゴン! いてくれて、心強い」

俺はソラの体を撫でた。ふわふわなソラの毛並みで、くじけそうになる気持ちを落ち着かせてくれた。


 『久しぶりだな……』

「!?」

 不意に後ろから声をかけられて、全身に鳥肌が立つ。


 ソラが全身の毛を逆立てて、唸り声を立てて見る相手は……。ばっ! と振り返って声をかけてきた人物を探す。

 「お前は……!」 

 どす黒い、闇の魔力をまとった人物。黒いローブをなびかせて空中に浮いていた。

 

 「アカツキ!!」

以前より更に闇の濃さが増して、アカツキの全身にまとわりついて渦巻いていた。体の色んな所に傷跡が見えて、いったい何があったのか疑問を抱いた。

 

 「オレは……。とうとう……ふっ、はははははははは――っ!」

「!?」

アカツキはでかい声で笑い出した。理解不能で俺は困惑した。


「ついに【魔王】になったのさ! オレは誰よりも強い!!」


アカツキの言葉に、俺は眼の前が真っ暗闇になった。

 

 

 

 

 

 


 

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