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家族全員異世界へ転移したが、その世界で父(魔王)母(勇者)だった…らしい~妹は聖女クラスの魔力持ち!?俺はどうなんですかね?遠い目~   作者: 青佐厘音


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29 勇者の証


  勇者=母と一緒に、この世界へ来たから俺は勇者とならなかった?

 

『この世界に現れるのは、勇者はただ一人。昔からそうなのじゃ』


 父と母がもとの世界へ帰ったから、俺が勇者になった?

 「おぬしたちの父君と母君が元の世界に帰った時点で、次の世代へと能力が移った」

「え……」

 能力が次の世代へ。俺の力は母が帰ったから現れた?

 「父さんや母さんの力が、……無くなったということですか?」

俺は間違ってくれと思いながら、ホウトリング様に聞いた。


 「結論から言うと、そうじゃな」

ホウトリング様はひげを触りながら答えてくれた。

 「こちらの世界に来ることは、難しくなった?」

俺はこぶしを強く握り、質問した。

「魔力量、何かしらの能力があってこそ、召喚術に耐えられる。それが少なくなると、無理じゃな」

ホウトリング様は目をつぶり、俺の質問に答えた。


 「お兄ちゃん」

愛里が俺の袖をギュっと掴んだ。俺を見上げて唇を噛んだ。

 「大丈夫だ。俺達で何とかしよう。出来るはずだ」

俺は愛里の頭を撫でた。

 「ここの世界の皆がきっと手を貸してくれる。その時はお願いします」

俺はここにいる仲間へ頭を下げた。皆、力のある人達ばかりだ。


 「もちろんよ。巻き込んだのはこちら側ですもの。力を貸すわ」

アリシア姫様が申し訳なさそうに言ってくれた。胸に手をあてて、にっこりと笑った。

「私も何か力になれば……」

 「俺もだ。力を貸すぞ」

サラサさんとジョーさんも胸に手をあてて、俺達に力を貸すと言ってくれた。

 「ありがとう!」

「ありがとう御座います」

 俺達兄妹は、皆に礼を返した。


 「ワシも力を貸そう。勇者の(あかし)を取ってくるがいい」

ホウトリング様は立ち上がり、俺に大きな(ベル)を渡してきた。呼び鈴のような形だが持つところが透明になっていて、水晶なのだろうか? ベルの所は大きさの割に軽くて銀色で、俺の知らない金属が使われているみたいだ。 

「この家を出て南方に進むと、洞窟がある。その中に入り、(あかし)を取ってくるのじゃ」


 勇者の証……。

 「洞窟の中は魔物がいる。気を付けて進むのじゃ」

ホウトリング様はひげを触りながら言った。ドクトリング様と同じ仕草だなと、ぼんやり考えていた。……魔物がいる? それってあぶない洞窟なのでは?

 「お兄ちゃん、気をつけてね?」

「ああ」

用心して行くことにした。


 ホウトリング様の家を出て、南へ。

「カケル殿、一人でいかなければならない」

そう言われて一人で向かった。けれどソラが俺のあとについて来ていた。

「その白い犬は、連れて行ってもかまわんじゃろ」とホウトリング様が言ったので、良かった。


 森の中は愛里のおかげで浄化されたので、魔物の姿は見えなかった。気のせいか、空気まで綺麗になったような?

「ソラ、ついて来てくれてありがとな?」

「わふん!」

ふわふわしっぽを、ブンブン振り回して返事をしてくれた。


 しばらく道なりに歩いて行くと、岩山に木の扉で塞がれた洞窟らしきものが見えてきた。近づいて行くと木の扉は取っ手が無く、どう開いたらいいか悩んだ。

 「ん? これは扉じゃなくて……」

そっと扉を手のひらで触ってみた。

 「わっ!」

 まばゆい光が俺の手と扉からあふれ出し、魔法陣のようなものが扉に浮き出てきた。透明で青く光る魔法陣は、浮き出ていて不思議で俺は魅入っていた。


 フッ! 光っていた魔法陣は跡形もなく消えて無くなった。と、同時に扉も消えて洞窟の中が見えた。

 「入れそうだ」

 俺とソラは洞窟の中に入ろうとした。

  「キャン!」

 「ソラ!? 大丈夫か!」

 結界だろうか? 入ろうとしたソラだけが、見えない壁のようなもので行く道を阻まれた。ビリリと電流なものがソラの体に走り、吹き飛ばされた。

 「くぅぅぅん……。ワン!」

 プルプルと頭を振り、大丈夫と言っているように返事があった。


 「ソラ。どうやら俺一人で行かなきゃならないようだ。ごめんよ……。そこで待っててくれるかな?」

 強力な結界らしい。魔力の多いソラが、入ろうとしたけど入れなかった。

 「大丈夫。終わるまで待っててくれるか? ソラ」

 「くうん……。わふん!」

 待っててくれると嬉しい。

 

 「じゃあ、行ってくる」

 俺は一人で洞窟の中へと進んだ。


 

 薄暗い洞窟の中へ一人で進んで行く。心細いが俺しか入れないのだから仕方が無い。ごつごつとした飾り気のない岩肌が続いている。

 「あれ? 明かりが無い……」

都会で育った俺は、夜でも外は街頭などで明るい。洞窟の奥へ進んで行くとだんだん暗くなってきた。洞窟の中なのだから明かりなど無いと今更気がついた。


 「こういう時は、便利カバン。中にあったはず」

ゴソゴソとカバンの中を探す。

「あった」

 俺は便利カバンの中から、ランタンを取り出した。ホウトリング様にもらったものだ。

ポッとランタンの明かりをつけると、洞窟内が明るくなった。ここは入り口近くなので一本道だが、進めば広い場所に出るかもしれない。ランタンの明かりで足元が見えやすいのは心強い。俺は左手にランタンを持って奥へ進んだ。



 途中、大きなネズミの魔物が飛び出してきて襲ってきた。

用心して剣を抜いていたので咄嗟に対応できた。わらわらと出てきて襲ってきたが、弱い魔物だったので倒せた。

 「勇者の試練だとしたら、まだまだ序盤……だな」

何かのゲームか本で見た。勇者となる者が、試練を乗り越えて真の勇者となる物語。それは複雑なダンジョンだったり、モンスターがうじゃうじゃでてきたりして、かなり大変な試練だったはず。まさかこの勇者の証を取りに行くのも、真の勇者になるための試練なのだろうか。

 考え事をしてたら、物陰からまた魔物が襲ってきた。今度は大きな熊のような魔獣だ。より凶暴な魔獣だ。


 長い爪の攻撃をかわしてサラマンダーを呼んだ。

 「サラマンダー!」

 ボウッ! と剣に炎をまとわせて、大熊の魔獣の体を真っ二つに切った。

ドシン! と半分になった塊が地面に落ちて黒い煙になって消えた。

 「魔獣は倒した後、黒い煙になって消えるのがいい。そして……」

 俺は地面に落ちた【魔獣石】を拾った。


 魔獣から【魔獣石】が必ず取れるわけではない。法則は分からないけど、取れればラッキーくらい? だ。拾った【魔獣石】を袋に入れる。元の世界に戻れるにはまだまだ【魔獣石】は足りない。地道に貯めていくしかない。

 「どのくらいかかるんだろ?」

 愛里の前では言えない泣き言を、一人洞窟で愚痴った。


 またしばらく魔物や魔獣と戦いながら進んで行くと、広い空間に出た。

「ゲームだと、中ボスが出てきそうな広さだなぁ……」

 嫌な事を考えてしまった。ゲームをプレイしている側ならキャラクターを操作して倒すけれど、今はキャラクター側。痛い感覚もあれば下手をすれば大怪我や死ぬ可能性もある。俺はゾクリ……と全身に鳥肌が立った。


『我の眠りを覚ますのは誰じゃ……』

 「!?」


 まさか……。

「うわっ!」

 ゴゴゴゴゴゴ……と足元が揺れて、体のバランスが取れなくなる。広い空間の行き止まり。地面が割れて地中から何かがせり上がった来た。大きな岩の塊のようなものが俺の真正面に現れた。

 「ご、ゴーレム!?」

ギギギギ……と岩の塊が積み重なって人の形になっていく。岩の塊で出来た、ゴーレムといわれるものだった。 背丈は五メートルくらいの巨大なモノ。これを一人で倒せって!? 


『力を求めるもの、我を倒すがいい』

 ゴーレムは俺に襲ってきた! これが勇者の試練と言うものか!? こいつを倒さないと勇者の証を取れない。何とかして倒さなければ!

 ガアアアアアアアアアア――! 

「わっ!」

 すぐ体の横をゴーレムの硬い(こぶし)が振り落とされた。拳は地面にのめり込みひび割れていた。凄い、力なのを目のあたりにした。


 「くっ!」

目が覚めたばかりなのか少しフラフラしていた。完全に目が覚める前に倒さなければ。

 今度は前に拳が地面に突き刺さった。後ろにジャンプして避けたが、だんだん俺を追い詰めてきた。

 ガキン! ガッ! 剣をゴーレムの腕に切り刻んでみた。ダメだ。少し腕に傷を残せたけれど致命傷には全然だ。

 「どうすればいい……?」

 このままでは、俺が疲れてやられてしまう。だんだんゴーレムも動きが早くなってきた。


 息切れしてきて、動きが鈍くなってきた。このままではゴーレムを倒せないし、逆に俺がやられる。

 「くっそ――――っ!」

 悔しさに叫んだ。強くなったと勘違いして、甘く見ていた。魔物や魔獣を倒し、感謝されていた。だけど目の前にいる、ゴーレムには僅かな傷しかあたえてない。

 

 自分の無力さに顔を上げて叫んだ。

「俺は、強くなりたい!」

 それは力が強いだけじゃなく、精神的にも強くなりたいと願った。皆を守れるだけの強さ。力だけじゃなく、心の強さも。


 「え?」

 パチッと瞼を開けると洞窟の高い天井から、光が降ってきた。これは……?


 その光は降り注ぎ、俺を包んだ。……暖かい。洞窟の天井から降り注ぐ光を俺は見ていた。

 「ン!? 痛っ!」

ズキンズキン! と右手が痛くなった。ふと、右手を見てみると甲に光る模様が刻まれていた。

 「な、なんだこれ!?」

 あざ? なんて無かったし、何かの紋章にも見えた。しかも熱を持っていて痛い。何だこれ……? 


 ふと、影が迫っていた。ゴーレムだ。俺はキラキラ振ってきた光と右手に気を取られていた。

 「しまっ……!」

 眼前にゴーレムの拳が迫っていた。無意識に体が動き、その時間はスローモーションのように思えた。

 

 

 

  



  

 

 


 

 

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