表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
家族全員異世界へ転移したが、その世界で父(魔王)母(勇者)だった…らしい~妹は聖女クラスの魔力持ち!?俺はどうなんですかね?遠い目~   作者: 青佐厘音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/46

28 魔物との戦闘と黒い沼の浄化


  とにかく夢中で剣を振った。次々と魔物が湧いてきてキリがなかった。

 「ウイングカッター!」 

アリシア姫様が風の魔法を広範囲に使うと、数は減った。

 「ありがとう! アリー!」

俺はアリシア姫様に愛称で礼を言った。姫様はポッと顔を赤くした。照れているようだ。


 「切っても、キリがない!」

いくら魔物になったとはいえ、気分のいいものではない。でもやらないと、こちらがやられる。俺は必死になって切り続けた。ソラも大きくなって戦っていた。強い。

 「サラサは左の魔物を倒してくれ! 俺は右側の魔物を倒す!」

「はい!」

 ジョーさんもサラサさんも、頑張って魔物を倒している。……俺にもっと、力があったなら! ()()()()()()()()


 『力が欲しいか』

「えっ?」

 

 突然、頭の中に声が響いた。なんだ? 動きをとめて、俺は辺りをキョロキョロと見た。

 「カケル! ボーっとするな!」

ザシュッ! 右から俺に襲ってきた魔物を、ジョーさんが倒してくれた。

 「すみません! ありがとう御座います!」

 危なかった。集中しなければ!


 

 しばらく夢中で魔物を倒していると、ほぼいなくなっていた。

「ふ――っ! ほとんど倒したか? 凄い数だったな」

 ジョーさんが額の汗を拭いながら言った。足元には凄い数の魔物が倒れていた。辺り一帯、魔物で埋め尽くされていた。

 「こんなに……、たくさんの魔物を、倒したのは初めてです……」

 ハァハァ……と息切れしながら、サラサさんは言った。


 「私は魔法を制御しながら使っていたので、まだ平気です」

姫様の魔法は強力なので、制御していたらしい。余裕はありそうなので、まだ魔物が出てきたら姫様にお願いしたい。

 「私は初めて魔物を倒しちゃった……」

愛里をかばいながら魔物を倒していたけど、そのうちに聖・魔法を使って魔物を消滅させていた。聖・魔法、すごい。

 

 「ふう……。とにかく出ていた魔物は倒したみたいだし、次また出てこないように浄化させよう。愛里、まだ聖・魔法は使えるか?」

 愛里の魔力の残りも気になるが、体調は大丈夫かと心配した。

 「うん。魔力もまだ大丈夫」

「無理はするなよ、愛里」

 コクンと愛里は頷いた。


 「……アイリ。黒い沼の、浄化をお願いします」

姫様がスッと黒い沼に近づいて、愛里に話しかけた。

 「はい……」

愛里も黒い沼に近づいて、ドロドロした何かよくないもののギリギリまで足を運んだ。

「気をつけろ」

ジョーさんが愛里に注意した。いつ魔物が黒い沼から出てくるかわからない。表面はボコボコしていて、黒いガスを噴き出している。あまりこの黒いガスを吸わない方がいいだろう。


 「……浄化」

何か歌のような詠唱が聞こえたけれど……。それは小さく、はっきりとは聞こえなかった。膝をついて、両手を組んで祈る愛里。周りに光が輝いて、森中に拡がって行く。

「綺麗……」 

 愛里の聖・魔法を見たサラサさんが囁いた。


 黒い沼に注がれた愛里の聖・魔法は、キラキラと光って沼を覆っていく。

「まあ!」「なんと!」

 姫様とジョーさんは大きな声を出した。俺も驚きの声を出す。

「黒い沼が、透明な綺麗な泉になった!?」

 

 先ほどまで黒くドロドロして黒いガスを出していた沼は、見違えるように綺麗な泉へと変わっていた。浄化されたようだ。

 「まさかこんなに綺麗な泉へと変わるなんて! アイリ、素晴らしいわ!」

姫様は愛里に抱きついて喜んだ。愛里も姫に喜んでもらって嬉しそうだ。

 「私にできるか心配だったけれど……。喜んでもらえて良かった」

 サラサさんも笑っている。

 

 「……前の魔王討伐の時は聖女様が不在で、こんなに綺麗に浄化は出来なかったんだ。勇者であった君たちの母君も少しの浄化は出来たが、悔しがってたよ。聖女様が居ればもっと浄化できたのに、と」

 母が? そうだったんだ。聖女様が居なかったんだ……。

 「あの。前の聖女様はどんな方か、分かりますか?」

 愛里がジョーさんに聞いた。ジョーさんはちょっと言いにくそうに教えてくれた。

「もう300年も……聖女様は現れていない」

 「えっ?」

300年も? 

 

  「おお……! 黒い沼を浄化してくれたのか! ありがたい!」

 俺達は聖女様が300年も現れてないことを話していたら、森の奥からお爺さんが急に歩いて近づいてきた。

 「ドクトリング様!?」

 その姿は賢者ドクトリング様にそっくりだったが、雰囲気が違った。いったいこのお爺さんは誰だ?

 「いや、違う……」

 俺が思わず言うと、お爺さんはニヤリと笑った。


 「さすがだな、勇者。皆もワシについて来い」

そう言い、くるりと森の奥に歩き出した。皆と顔を見合わせた。どうする? まさか罠じゃないよな?

 「ほほっ! 罠ではないぞ? ワシはドクトリングの双子の弟だ。兄から頼まれていたことがあってな……」

 姿かたちは賢者ドクトリングと瓜二つだ。俺はソラを見た。

 「わん!」

 大丈夫そう? 俺達はドクトリングにそっくりな、弟さんに警戒しながらついて行った。

 

 かなり高齢のお年寄りなのに深い森の中を迷わず歩いて行く。

「愛里様の浄化の力は凄いのぉ……。助かりましたよ」

 ドクトリングの弟さんは、うんうん、と頷きながら言った。しばらく弟さんについていくと立ちどまった。

「結界を解かねば……むん!」

どうやら結界が張ってあったらしい。深い森の奥に木でできた家が、結界を解いたためか見えてきた。


 「お茶でもご馳走しようかのぉ……。まあ適当に座りなさい」

ドクトリングの弟さんは俺達に座るように言ってくれた。家の中は薬草なのか紐でまとめた、たくさんの草があちこちにぶら下がっていた。

 「お久しぶりで御座います。お師匠様」

サラサさんが弟さんにひざまついて頭を下げた。

 「お師匠様?」

 俺がサラサさんを見るとにっこりと微笑んだ。

「薬草学を教えていただいた、お師匠様です」

そうなのか。え、薬草学?


 「こちらの賢者ドクトリング様の弟君、薬草学の師匠ホウトリング様です」

サラサさんが、弟さんを紹介してくれた。

 「本当に、賢者ドクトリングの弟君なのですか? 聞いたことがない」

ジョーさんは疑いの目で言った。むりもない。あんなに魔物がうじゃうじゃいる森の中から、飄々とのんびり歩いて近づいて来たのだから。

 「むぅ……仕方が無いのぅ……」

 そう言い、弟さんは胸元からサッカーボールくらいの丸い玉をひょいと出した。


 「えっ!? どこにしまってあった?」

俺が驚いていると弟さんは笑った。

 「まあ、細かいことは気にするな。……もしもし、兄者。ワシじゃよ」

 弟さんは水晶らしき玉に話しかけた。一点の曇りもない透明の玉。

『おお! ホウトリングか! 姫様一行は無事にお前の所へ着いたか?』

 近寄って皆で水晶を覗くと、ドクトリングの姿が見えた。

「ドクトリングおじいちゃん!」

 愛里が水晶に映ったドクトリングに話しかけた。おじいちゃん? 皆がぎょっとしている中、愛里は構わず話し続けた。


 「森の中にあった【黒い沼】の浄化が、出来ました!」

水晶に映ったドクトリングへ微笑みながら話しかけた。水晶に映るドクトリングは「そうか、そうか!」と笑い、愛里としばらく水晶を通して話をしていた。

 「……弟君なのは、間違いないな」

ジョーさんはゴホンと咳払いをした。

 「薬草学のホウトリング様。先ほどは失礼しました。お詫びいたします」

頭を下げてジョーさんは、ホウトリング様に謝罪した。

 「いや。君のような疑う人間も必要じゃぞ?」

頷き、ホウトリング様はジョーさんを許した。良かった。


『そうそう! ホウトリング、勇者の()()をしないとな』

「そうじゃった! 忘れるとこだったわ」

 勇者のアレ……? なんだろう?

「師匠、勇者のアレとは何でしょうか?」

皆が疑問を持った中、サラサさんが聞いてくれた。お年寄りが良く言う、言葉が出なくて アレ といってしまう現象だろうか。


 「勇者の儀式じゃ」

「「「「「えっ!?」」」」」

 皆が、あっけにとられていた。勇者の儀式? それは大事な事じゃないかな……。


 「兄者。もう話をして良いかのう?」

『よろしく頼む!』

 わりと軽いノリで言われた。大丈夫か?

 「カケル殿。なぜおぬしが、こちらの世界に来て勇者とならなかったのか教えてやろう」

テーブルへ置かれた水晶に、まだ賢者ドクトリングが映っている。本当にそっくりだ。

 「気を逸らさず、しっかりと聞くがいい」

 ホウトリング様に水晶へ気がそれているのがバレていた。真剣に聞こう。


 「はい。お願いします」

椅子に座りながら、頭を下げた。

 「まあ、薬草茶を飲みながら聞きたまえ」

 テーブルを囲みながら、ホウトリング様の話を皆で聞いた。


 「この世界にカケル殿が転移して来た時、勇者であるカナ様と一緒だったのは覚えているかのぉ?」

 「はい。家族の皆で、強制召喚されました」

 覚えている。いきなり家族の皆で召喚された。父と母は初めてじゃなかったけれど。それが無かったら、父と母の秘密は知らなかった。


 「この世界に現れるのは、勇者はただ一人。昔からそうなのじゃ」 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ