20 街の冒険者ギルドへ
「じゃ。愛里、アリシア姫。パーティーの仲間になってくれる人を探してくるよ!」
王族しか入れない貴賓室で、俺は二人に気軽に言った。すると、サラサさんや部屋にいた護衛さん達がムッとした表情をした。え、俺? なんかした?
「アリシア殿下、行ってまいりますね」
サラサさんはアリシア殿下に、丁寧に騎士の礼をした。
アリシア殿下って言わなければならないのか。気安く呼ぶのはまずかったか。
「アリシア殿下。ご無礼をしました。……では行ってまいります」
俺は言い直して騎士の礼をした。部屋にいた護衛さん達の表情が元に戻った。良かった。アリシア殿下は皆に好かれているから、気をつけないとな。
「お二人とも気を付けて。良い方を見つけてください」
殿下の表情が気になったが、サラサさんと城下街のギルドへと向かった。ソラはお留守番だ。
以前、魔獣の襲撃があったことを思い出して嫌な気持ちになる。だけど街は、そんなことが無かったのかというくらい活気に満ちていた。
サラサさんは俺達より年上で綺麗な女性だ。ちょっとドキドキしてしまう。
「あ、そうだ。先に言っておかなければ!」
俺は先ほどのアリシア殿下の表情が気になっていた。
サラサさんは俺の突然の大声に、ちょっと驚いたみたいだったがすぐに表情を戻した。
「何でしょうか?」
市場通りを歩いているときに、俺から話しかけてみた。
「貴族とか王族とか……。俺のいた元の世界では、そういう制度が無くて礼儀作法とか分からないんだ。アリシア殿下に普通に話しかけたのは、無礼だったみたいだな。すまなかった」
俺は、ニッ! と照れ笑いをしてサラサさんに謝った。
「臣下の前では示しがつかないですから。……だけど殿下には、同じような年頃の友人が必要ですわ。殿下も望んでいます。周りに臣下がいなければ、友人として側にいて欲しいと私は思っています」
ピンと伸びた姿勢。鍛えているだろうこの人は、誰よりもアリシア殿下を敬愛していた。
「これから討伐の旅では、殿下には背負っている重い肩書を少しでも軽くして欲しいと願います」
サラサさんは、優しい人と思った。
世間話をしている間に街のギルドに着いたようだ。
「失礼しま――す……」
ギルドの扉を開けて中に入った。こんにちは でもないし、たのもう! じゃ道場破りだし、とりあえず『失礼します』と言ってみた。
「あぁ?」
漫画やファンタジー小説に出てくるような、強面のお兄さん達にお約束のように睨まれた。
ここでビビってはいけない。最初が肝心だ。俺は平気そうな顔で、つかつかとギルドの一番奥のカウンターに向かった。
中は木の造りの普通の建物だったが、そこそこ賑わっていて幾つかある木のテーブルセットには、冒険者たちが何か交渉している。
壁にはランクごとに色々な依頼書が貼られていて、冒険者たちは熱心に見ていた。俺はそれらを、歩きながら見ていた。
「いらっしゃいませ! 何か、御用ですか?」
赤茶の髪の毛に、茶色い瞳の可愛い受付の女の子だった。元気よく対応している。
「パーティーに一人、地理に詳しい物を参加させたい。出来れば口の堅い者で、真面目な人がいいのだが……」
こちらの要件を伝えた。受付の女の子はにっこり笑って俺に聞いて来た。
「ギルドカードはお持ちでしょうか?」
ギルドカード! 良く聞く単語に俺は楽しくなった。
「いや、持ってない。俺は初めてなんだ」
「それならば、登録手続きをしてからになります。そちらの方はギルドカードをお持ちですか?」
にっこりと受付の女の子はサラサさんに微笑んだ。
「私も初めてです。登録をお願いします」
サラサさんも初めてだった。あ……。後で愛里やアリシア殿下も登録した方がいいのかな……? 姫様が冒険者ギルドに登録? ……う――ん。後でサラサさんに聞いてみよう。
「ではそちらの魔法石に、手を置いてください」
カウンターの棚の上に、大きな水晶みたいな石が置いてあった。俺はその石に手を置いた。
ピカッと光って、手と顔の間にカードらしきものが現れた。
「……凄い」
それは浮かんでいて、指で掴んでみると光は消えた。
「……カケル様ですね。それがギルドカードになります。この国の身分証明書と別に、同じく身分証明者、ギルドでのランクや、どのパーティーに所属しているか、また犯罪歴などもわかりますのでお持ちください」
へえ、色々便利だな。犯罪歴までわかるって徹底してる。
俺はギルドの登録が終わって横に下がった。次はサラサさんの番だ。
サラサさんは俺と同じく石に手を置いた。
「……サラサ様ですね。登録が完了しました。まずリーダーを決めて、パーティー名をお考えになってからお探しになった方が、よろしいかと……」
最もだ。俺はサラサさんと顔を見合わせた。
「テーブルがありますので、そちらを利用なさって下さい。隣には食堂もありますので、そちらもよろしかったらどうぞ!」
受付の女の子はサラサさんに笑顔で教えてくれた。
「私はギルド受付のリンル といいます。よろしく!」
元気な女の子だ。
「よろしく!」
「よろしくお願いいたします」
俺たちはリンルさんに挨拶をした。




