19 突然の王命 魔獣討伐パーティを組む
二、三日過ぎて俺は王様に呼ばれた。
騎士団の寮でソラと生活する許可を取り、ソラも慣れてきたところだった。
「団長。王様は俺に何の用ですか、聞いていますか?」
城へ続く回廊で、騎士団団長と並んで歩いていた。煌びやかな建物と装飾品が目に入ってきて、何となく身構えてしまう。緊張をほぐすために、団長に話しかけた。
「ん――。聞いてはいないけど、たぶん魔獣関係じゃないかな? 俺も呼ばれているし、魔獣や魔物が増えてきている。何かいい対策があればいいが……」
魔獣と魔物。いくら駆除してもキリがない。何とかならないか皆、悩んでいる。小動物系の魔物くらいだったら一般人でも倒してきたけれど、熊以上の大きな魔獣の駆除は無理だ。お城の騎士団は戦いの訓練をしているが、街に暮らす人々は非戦闘員だ。太刀打ちできない。
これから魔獣の奇襲が増えたら、お城の騎士団だけじゃあ間に合わなくなる……。
「着いたぞ。姿勢を正せ」
団長に言われて俺は姿勢を正した。
謁見の間の大きな扉が、扉を守る騎士の手によって開かれた。
「行くぞ」
団長が先に謁見の間に入り、俺は後に続いた。また臣下達が、玉座へ続く赤い絨毯に沿って並んでいた。俺は異世界人なので、王様に忠誠は誓ってなかった。だけど騎士団に、お世話になっている以上は忠誠を誓うそぶりはしなくてはならない。
王様の見下ろす玉座の前で、団長と共にひざまついた。
「騎士団団長 アラルド・ハインツ、騎士 アマノ・カケル……参上しました」
団長が低く良く通る声で言った。
「うむ。先日の魔獣討伐ではご苦労だった。顔を上げよ」
王様の言葉で俺達は顔を上げた。チラと玉座の方を見ると、王様の横にアリシア姫様が立っていた。
「あ、愛里」
並ぶ臣下達の先頭に、愛里と賢者ドクトリングがいた。
「このところ皆が知っている通り、国は魔獣や魔物の被害が増えてきている。魔物ばかりではなく、トロルのような大型の魔獣も出現している」
ざわざわと臣下達はお互いに話し始めた。もう大きな街ばかりではなく、人が住んでいる小さな村までも襲っていた。次はどこの街や村が襲われるか皆が恐怖していた。
「知らせを聞き、騎士団が魔獣と討伐していた」
俺達騎士団が駆け付けた時は、もう町や村が焼かれていた。けが人など多くの人が犠牲になった。
「そこでだ!」
王様の声に、ざわめきが大きくなった。王様は続けて話をした。
「我がアリシア姫、騎士 カケル・アマノ、聖女アイリ・アマノにパーティーを組んで討伐の旅に向かって欲しい」
おお――! と歓声が響き、どよめいた。
俺達がパーティーを組んで討伐の旅に?
「この三人は強力な魔力、戦力を持っている。仲間を増やして各地を巡って魔獣を討伐して欲しい」
アリシア姫を見ると、俺に気がついて微笑んでくれた。どうやら姫は、初めて聞いたわけじゃなさそうだ。愛里も事前に聞いていたのか?
「騎士 カケル」
「はい」
王様に名を呼ばれたので返事をした。
「やってくれないか?」
王様の言葉に俺はちょっとイラついた。こんな臣下達がズラリと並ぶ前で『イヤです』とは言えないだろう。まして今は騎士団に身を置いている。
母が嫌がっていた理由が何となくわかった。
「承りました」
頭を深く下げた。そろそろしゃがんでいる姿勢から、立っていいかな……疲れてきた。
「一行とは別に騎士団は城にとどまり、城や街を守る。魔獣の被害のある街や村の近い方が、向かうことになるだろう」
王様は玉座に座り、皆に話しかけている。威厳がある声だ。
「騎士 カケルの活躍には、期待している」
「はっ!」
王に返事をすると、団長が立ち上がった。俺もそれにならって立ち上がった。下がるぞ、という団長の小さな呼びかけが聞こえたので後について謁見の間から下がった。
パーティーを組んで討伐の旅かぁ……。アリシア姫様の魔法の威力は凄いのがわかっているし、愛里の癒しの聖魔法も強力だし大丈夫だとは思うけど三人じゃ心細いな。
「そういえば、この国には冒険ギルドとかあるんですか?」
俺は謁見の間を出て、廊下を歩きながら団長に聞いた。
「ああ。あるな。仲間を増やしたければ、騎士団から騎士を選んでも良いし、ギルドから雇ってもいい。費用は国が出すだろう」
それなら遠慮なくできるな。
「なかなか大変な旅になりそうだが、カケルならやれる。無理はするな。頑張れよ!」
「いてっ!」
団長に背中をバン! と叩かれた。痛かった。
さて……。旅の準備もあるし、パーティーのメンバーも増やしたいし色々やる事あるな。
アリシア姫様と愛里と、話をした方がいいな。
「お兄ちゃん!」
「カケル殿」
ちょうどアリシア姫様と愛里が謁見の間から出てきて、俺の方に駆け寄ってきたのが見えた。
「愛里、アリシア姫。よろしくな」
俺は二人に話しかけた。二人が一緒なら心強い。姫様の強力な攻撃魔法と愛里の聖魔法(回復魔法)。俺は騎士……魔法をまとわせることが出来る、魔法騎士、というのかな? あともう一人か二人ほどパーティーに欲しい。
ソラは連れて行きたい。
「こちらこそ、よろしくお願いいたしますわ。カケル殿」
姫が優雅にお辞儀をした。
「お兄ちゃんと、アリシア姫様と一緒なら頑張れそう。よろしくね」
ニコニコと微笑んでいた。愛里は聖女と確定したみたいだ。……だよな。最近の討伐に行って傷ついた、たくさんの人達を治していたし。
「三人じゃ心細いから、あと二人ほどパーティーに入れたいけど心当たりありますか? アリシア姫」
この国に詳しい人がいいし、姫様と愛里をなるべく大変な野宿させたくないのでお世話できる人がいいなと、アリシア姫に聞いてみた。
「それでしたら……。私の護衛兼お世話係の者はどうでしょう? 腕も立ちますし、何かあった時に城の者と連絡できますわ」
「あ、いいですね! 紹介していただけますか?」
姫様の護衛兼お世話係で、腕も立つならいい。屈強な戦士か?
「側に控えているはず……。サラサ、来て」
「はい」
スッと後ろから足音も立てずに現れたので驚いた。サラサと呼ばれて現れたのは近衛服を着た、茶色い髪の毛に茶色の髪の毛のキリリとした年上の女性だった。
「サラサ・オブライエンと申します」
胸に手を当ててお辞儀をした。騎士の礼だ。髪の毛を高い位置で一つにまとめている。
「サラサは私が幼い時から護衛をしてくれてるから、腕は確かよ」
アリシア姫がサラサさんを紹介すると、愛里は微笑んだ。
「心強いです。よろしくお願いしますね、サラサさん!」
そう言って両手を握った。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします。聖女 愛里様」
突然手を握ったのも関わらず、愛里に動じることもなく笑顔で返した。
「勇者の子、カケル殿。そなたは近いうちに勇者と呼ばれるだろう。よろしく頼みます」
近いうちに勇者と呼ばれる? 俺はなぜ? と思いながら、差し出された手を握った。
「よろしくお願いします」
「さて。旅の準備があるわね。出発は準備ができ次第ね」
「ええ」
アリシア姫と愛里が微笑みあっている。俺はそれを、写真に撮りたいなと思いながら眺めていた。携帯は使えないのが残念だ。
「あとは、街や地理に詳しい人物を探したい。街のギルドに行ってみたいな」
サラサさんは貴族っぽいし、あんまり街の事を知らなさそう。……とはいえ俺と愛里は異世界人で、まだこの国は詳しいわけじゃないし。森の中とかやみくもに行っても迷うだけ。冒険に慣れた、地理に詳しい人物がパーティーに欲しい。
「そうですね……。私が一緒に行きます」
サラサさんが名乗り出てくれた。
「助かります」
俺がギルドに一人で行っても小説などでよくある、見かけない顔の者は絡まれてボコボコにされてしまうかもしれない。サラサさんは見ただけでも腕が立ちそうだし、門前払いはされないだろう。
いや。俺も見ただけで、腕が立つように見える騎士になってみせるけど!
「では、明日……はどうでしょうか?」
サラサさんが俺に聞いてきた。特に用事はないので大丈夫だろう。
「大丈夫です」
頷き、サラサさんは姫の方に振り返った。
「私は大丈夫だから、お願いね? カケル殿、サラサ」
愛里と姫は仲良く話をしている。気が合うようだ。
「はい。承知しました」
サラサさんは姫にお辞儀をした。
俺は頷いた。
いい人が探せるといいが……。




