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第5話

 その夜の村は、まるで祭りのような大騒ぎだった。

 村の中心の集会場らしき建物に、ほとんどの村人が集い、いろいろの料理や酒を並べて、歌い、騒いでいた。

 心配だった畑が、目に見えて復活したのだ。喜ぶのは当然だろう。

 そして俺は、その騒ぎの中心で、歓喜する村人たちから、かわるがわる酒を注がれて、潰されかけていた。

「いやあ、ヨウヘイ殿、ありがとう、本当にありがとう! さあ飲んでくれ!」

「これで今年の冬はきっと越せる! 精霊使いってのは、大したもんだ! ささ、もう一杯!」

「本当にねぇ! この村の救い主だよ、あんたは! おや、酒が減ってないね、はい器を空けて空けて……村自慢の、リンゴ酒だ! たんまり飲んでおくれ!」

 飲んだ端から、次々に注がれる酒。おいしいと思えたのは最初の一口、もう味とかわかんなくなってきたし、もう、無理。アルハラ、ダメ絶対……

 いい加減に辛くなって机に顔を突っ伏した時、ようやく助け舟がやってきた。

「ちょ、ちょっと、みんな! ヨウヘイお兄さんに、飲ませすぎ! だ、大丈夫ですか?」

 エレナが背中をさすってくれるのが心地よいが、意識がもはや朦朧としている。

「らいようぶひゃない……」

「こりゃぁ、ちょいとばかり飲ませすぎちまったな。しゃあない、儂が寝床まで運んでやるわい」

 グエル村長の声と同時に、体がひょいと抱えられる感触。

 なんだかふわふわとした気分のまま、俺はまたしても意識を失った。


 ……気が付けば、あたり一面が白い、あの部屋にいた。またしてもパイプ椅子に座り、目の前にはテレビが一台。そして不意に、テレビが付いた。

『やあ、洋平君! 飲み過ぎには注意だよ! 急性アルコール中毒は生死にかかわるからね!』

 テレビ画面には、あのニコニコマークこと、創造神。

 あれ、ひょっとして、俺、急アルで死んで、またここに来ちゃった!?

『HAHAHA! だったら大笑いなんだけどねー、まあそれは大丈夫。今君の体は固いベッドの上で爆睡中。今回は用事があってね、魂だけ来てもらったのさ!』

 ……ちょっと安心。

『さて、異世界生活を堪能しているかい? 堪能してるみたいだねー。今のところ順調でいい感じだよー!』

 順調……ということは、俺にやらせたいのは、精霊たちに力を取り戻させること、なのか?

『んー、まあ、そんな感じかなー、それだけじゃないっていうか、その先があるっていうかー』

 はぐらかすなぁ。スパッと結論言ってくれよ。

『ダメダメ! 試行錯誤、トライ&エラーを繰り返して、少しづつ進むのが醍醐味だよ? とりあえず攻略サイト見てー、最適解知ってー、タイパ重視で一本道とか、最近の若い子たちって、つまんなーい』

 テレビ画面の中を飛び回るニコニコマークが、若干むかつく。

『まあまあ、そのうちわかるから、心配ナイナイ! とはいえ、攻略上一つだけ伝えておきたいことがあるんだ、洋平君』

 不意に、ニコニコマークから笑みが消えた。U字で描かれていた口が、横一文字に変わっただけだが、マジな気配が見える。

『“精霊喰い”には気を付けなさい。今のままだと、死は不可避。挑むのなら、戦う手段を用意すること』

 創造神の、先ほどまでと異なる冷たい声音に、ぞくりと肌が粟立つ。

『きっと、君が思うよりも相手は強い。そこで負ければ、すべてが終わる。自信がないのなら、近づかないことだ』

 そこまで告げると、横一文字がまたU字に戻る。

『とはいえ、放っておいても時間が来れば、かち合うことになるんだけどねー!』

 うわか、時間制限あり系イベントかよ。

『序盤の山場、初見殺しの心折りポイント! まあ、戦う手段なんて、どんな時も、いたるところに、いくらでもある。それに気づけたら、楽勝だよー!』

 不意に、あの時のように部屋の中の光が強まってくる。

 ちょ、ちょっと待て、いろいろ聞きたいことが……

『今回も時間なんで、無理ー! じゃあ、二日酔いで大変だとは思うけど、よい朝を迎えてねー!』


 そして、世界が光で真っ白になり、俺は目覚めた。

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