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第24話

 まず目についたのは、粗野な印象の外見の男たち。明らかに、この村の人間ではないし、近隣からやってきた農民にも見えない。

 人数は、10人……いや15人はいた。それぞれが革製の鎧や籠手をつけ、短刀や剣などの武器を身の周りに置いている。

 傭兵か、野盗。そんな印象の集団だった。

 今は休憩中なのか、数人づつで固まり、火の回りで食事をとったり、談笑したりしている。

(よし、情報収集してみるか)

 俺=フーは、真面目な顔つきで会話している一団に近づいてみる。

「…で、火は四方から点けるのか?」

「いや、三方だ。村の正面だけは空けておけ。逃げ出してきた連中は、そこで仕留める」

 いきなり飛び込んできた物騒な言葉に、どきりとした。

 火? 仕留める? なんの話だよ!?

「もったいねえな」

「貧しい村だ。奪うべきものなど、あるまい」

「田舎でも、若い女くらいはいるさ。うちの連中に、少しばかり楽しむ余裕を分けてもらえねえか?」

「証拠は、残せん。謝礼は出すのだ、事が終わったら娼館にでも連れて行ってやれ」

「へいへい」

 会話しているのは、禿頭の中年男と、フードを被った男。話の流れから察するに、中年男がこのごろつきたちのまとめ役で、フードの男が村を襲うよう依頼した、ってところか?

 だが、何のためだ?

「くれぐれも、いらぬ欲を出して、目的を見失うなよ。とるべきはあの兄妹の命だ。火にまかれて死ぬならよし、そうでないなら、正面から逃げてきたところを、我々が討つ。貴様らは手を出すなよ」

「“烈槍”と“猛虎”の相手なんざ、俺たちや、御免被るね。依頼の通り、夜中の火点けと、その後の落穂拾いはやってやるが、それ以外はそっちで勝手にやってくれ」

 中年男は、うんざりとしたような顔でひらひらと手を振る。

 と、フードの男の隣に座っていた別の男が、じっとこちらを見ながらつぶやいた。

「強い精霊が来ているぞ」

 冷たい印象の、痩せた男だ。目が赤い。その赤い視線が、俺=フーをひたり、ととらえる。

 こいつ、精霊使いか……!?

「精霊だと?」

 フード男のいぶかし気な言葉に、痩せた男がうなづく。

「第三位階相当の、風の精霊だ」

 男の言葉に、再びどきりとする。

 こちらから一方的に観察しているつもりだったが、向こうからも見られていたなんて。

「ま、まさか精霊使いか?」

 中年男がやや狼狽えた様子を見せると、フード男が鼻で笑う。

「こんな辺境に、第三位階と契約できる精霊使いなど、そうはいないさ」

「……かもな」

 痩せた男は、油断なくこちらを観察している。

(よし、フーよ、手でも振ってやって敵意がないのをアピールするんだ!)

 心で念じると、その通りにフーが手を振り、愛嬌を振りまく。だが痩せた男は動じず、じっと見つめてくる。

そろそろ潮時かな。

(フー。村と反対の方へ向かって飛んで、森の中を抜けて帰ってくるんだ)

 俺の指示に、フーはうなずき、飛び立つ。

 これで、村とは無関係の精霊だと、勘違いしてくれるかもしれない。


 だが、いずれにせよ、情報を整理しないと。俺は、フーとの意識を共有を遮断した。


「……さて、どうしたものか」

 ベッドの上で胡坐をかきながら、俺は考える。


 まず、分かっている事実をまとめよう。

 15名の人間が、村を襲おうとしていること。

 彼らは、夜に、三方から火をつけ、村を皆殺しにするつもりであること。

 目的は、アダンとベルの兄妹。二人を殺したいフード男の一味が、中年男の一党に襲撃を依頼したらしいこと。

 一味の中に、赤い目の精霊使いがいること。


 窓から差し込む西日は、赤く染まっている。既に時刻は夕暮れ、相手は夜に襲ってくるつもりのようだから、残された時間は少ない。


 敵が来るのが分かっているなら、逃げるか? しかし、逃げるにしても、村のみんなをどうやって、どこに逃がせばいい?

 戦うとしても、あんな連中相手に村のみんなで太刀打ちできるのか? 俺一人で、村のみんなを守りながら、15人の武装した連中を相手にできるのか?


 焦りで、頭が沸騰しそうだ。大きく深呼吸して、気持ちを落ち着かせる。

 トラブルに遭遇したら、そのトラブルを分解して、できることを探す。いつも通りのことをしよう。


 多数の武装した敵、一人で相手するのが難しいなら、戦うことのできる仲間を探すしかない。


 ……俺は、一つだけ、思いついた。

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